エンターテインメント・ウェブマガジン
彼女は生まれながらに呪われた子で、何年もかけてその運命を受け入れてきたのだと思います。ただ運命を受け入れてはいるけれど、このままでいいのだろうかという葛藤もある。彼女の場合は親の呪いが子どもの代まで続いているわけですが、形は違っても、家族にはそういうことは割とあるのかなと。このお話はもちろんフィクションですけど、マリアという役が、見ている皆さんと一番つながりやすいんじゃないかなと思って演じていたので、彼女が発する言葉に寄り添って聞いてもらえると共感できるものがあると思います。
共演のシーンが一番多かったのは高橋さんなんですけど、その場にいるだけで、高橋さんが作り上げてきた岸辺露伴というキャラクターに圧倒されました。やっぱり高橋さんだったからこそ5年も続けてこられたのでしょうし、相当な覚悟もあったと思います。今回ベネチアという場所で、私も初めてシリーズに参加させてもらいましたが、「あなたがどういう演技をしても、僕は受け入れますよ」という感じで、どっしりと構えてくださいました。2人のシーンの時は、初めは緊張しましたが、ナチュラルな演技をされる方なので、私も自信を持って、「私のマリアはこうです」と思いながら作り上げていった感じです。「ここを調整しよう」みたいなこともたまにありましたが、今回は感情的なシーンはあまりなかったので、距離感の部分では最初のシーンからマリアと露伴として入れたと思います。
イタリア語の講師の方に付いていただいて指導していただきました。せりふが少しずつ変わったり、こちらの発音の仕方がネイティブっぽいとかもあったので、ぎりぎりまで変わるかもしれないと思いながら覚えていました。せりふとしては最初に暗記をして、きちんと言えるようになってから発音や表情を決めていきました。イタリア語をイメージした時に、巻き舌が特徴的だと思うんですけど、イタリア語はおなかに力を入れないとしゃべれなくて、言語の持つ特徴みたいなものを感じました。発音が難しかったですけど、何とかできたのではないかと思っています。イタリア語の映画を見て勉強しながら耳になじませていったような感じでした。高橋さんはイタリア語のせりふが多かったので、それと比べたら全然大丈夫でした。
日本の田舎とちょっと似ているような気もしましたが、世界中から観光の方が来るので、そこに住んでる人の自信やプライドみたいなものをすごく感じました。歴史的なものも含めて京都みたいなところもあるかもしれません。毎日、目覚めると「ベネチアだ!」という感じの3週間でした。もちろん撮影もあるのでウキウキばかりしてもいられませんでしたが、その中でも飯豊まりえちゃんとお茶をしに行ったり、お散歩をしたりしました。石畳の道、教会、マリアが職場として働いている仮面の工房もそうですけど、朝日も夕日も取り巻くものが全て美しい。だから、ここに世界中からたくさんの方が観光に来たり、住んでいる方もここを離れたくないという気持ちになる場所なんだと思いました。
キャストの皆さんもそうですけど、スタッフさんも、いいものを作ろうとどんどんブラッシュアップして、満足度100パーセントのものができたと思います。このチームだからこそできるものがあるという手応えを感じています。ベネチアの持つ空気感やキャラクターの強みが全て合わさって、今まで見たことがないような映画が出来上がっていると思います。ベネチアを舞台にしてはいますが、描かれていることは人間が持つ欲望や恨みみたいなものなので、身近に感じられる題材だと思います。そしてその中でもマリアは、観客の方に寄り添っているキャラクターだと思うので、その辺りも注目しながら見てもらえるとうれしいです。
(取材・文・写真/田中雄二)
(C)2025『岸辺露伴は動かない 懺悔室』製作委員会(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
ドラマ2025年10月10日
-本作は「遺品整理」がテーマで、ドラマを見た視聴者も生や死について考えさせられる作品になると思います。この物語を通じて“死ぬこと”や“生きること”について、考えたことがあれば教えてください。 今回の作品に携わることで“死ぬときに何が残るの … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年10月10日
名匠・黒澤明と三船敏郎が初めてタッグを組んだ伝説の映画『醉いどれ天使』の2025年舞台版が11月7日に開幕する。本作は、戦後の混沌(こんとん)とした時代に生きる人々の葛藤を生き生きと描いた物語。映画が公開された1948年に、映画版とほぼ同 … 続きを読む
映画2025年10月9日
-実際に共演して、カトリーヌ・ドヌーヴさんの魅力をどんなところに感じましたか。 カトリーヌさんは、芝居らしい芝居をほとんどせず、リアクションも非常に小さい。それでも、その小さなリアクションの中で、訴えるものが非常に強く表現されていて、 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年10月9日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼お兄ちゃんの隠しもん 今から4 … 続きを読む
ドラマ2025年10月7日
-お2人は同一人物であり、全身整形により年齢を偽って容姿を変える役どころですが、役衣装やヘアスタイルの面でこだわったことはありますか。 水野 私は設定が55歳の役ですが、衣装合わせのときに監督がものすごい特殊メークで私の顔を老けさせようとし … 続きを読む