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最初に監督とお会いした時は、髪も紫だし、サングラスをかけているのでめちゃめちゃ怖いおじいちゃんだと思ったんです(笑)。でも、本当に自由に演じさせてくださいました。まず僕が思う芝居をさせてから、監督の中で違うと思ったら何かおっしゃるんですけど、基本的には伸び伸びと、僕が作ってきたことをやらせてくださいました。演技指導というよりも、セッティングの間に「ここはこういう意図で書いているから」とお話してくださるという形でした。それを自分の中で消化して、ヒントにしてお芝居ができたという感じです。
僕は音楽的なことはよく分からないんですけど、フィーリングとしては、晋平さんの曲は1曲まるまるちゃんと聴いて作品になる曲だと感じました。最近の曲だと、出だしの何秒かが勝負だったりしますけど、晋平さんの曲は全部聞いてこそ、“中山晋平の曲だ”というのを感じました。
これからは意欲的に映像の方もやっていきたいと思うようになりました。お芝居の方は慣れているので、歌舞伎以外の舞台もどんどんやっていきたいと思っていましたが、映像の方は果たして僕で大丈夫なのかという気持ちがすごくありました。でも、この約2か月間の撮影を通して、本当に真っ白な状態で入っていって、いろんな人からいろんなことを学んで、納得して自分の引き出しにしていけるのが楽しかったので、これからも意欲的に映画やドラマにも挑戦したいと思いました。歌舞伎には瞬発力が必要です。映画も「用意スタート」からの瞬発力がすごく大事なんだというのを感じて、気持ちがポンって入る感覚というのは、歌舞伎でも歌舞伎以外でも、引き出しの一つとして生かせると思いました。
両親は、歌舞伎の時もそうですけど、あまり細かいことは言いません。母(三田寛子)は「映像は5倍も10倍も太って見えるから痩せなさい」と。父からは「自分も映像で育ててもらったから、意欲的にやっていくことはとてもいいことだと思う」と言われました。
中山晋平さんをご存じの方は、名曲の誕生秘話を楽しみながら、晋平さんの人生をご自分と重ね合わせてご覧になっていただけると思います。ただの伝記物ではなくて、エンターテインメントとして見られますし、すごくテンポがいい割にはしっかりと句読点が付いた作品になっていますので、楽しんでいただけると思います。僕と同世代で「東京音頭」や「シャボン玉」だけを知っている人や、晋平さんを知らない人たちにとっては、晋平さんのことを改めて深く知ることができる楽しさがあると思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
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