武田梨奈「アクション映画祭を開催したい」 藤原季節「インディーズ映画に一生出演していく」映画祭審査員を経験した2人の新たな決意【インタビュー】

2024年11月27日 / 18:00

授賞式の模様

-特別審査員として、コンペティション部門の8作品をご覧になった感想は?

藤原 どの作品も問題意識が明確で、ものすごく刺激を受けました。「自分たちの葛藤や感性を自分で映画にするんだ」という初期衝動みたいなものがダイレクトに届き、作り手の最もピュアな部分があふれ出た印象もあり、心をグッと動かされて。おかげで、改めて「コンペっていいな」と思いました。前回も出品した監督が、「去年、田辺・弁慶映画祭で賞を取れず、1人で泣いた」と話していたんですけど、そういう悔しさが生まれるのも、コンペならでは。そこまで熱くなれるのは、素晴らしいことだなと。

武田 この映画祭をきっかけにいろんなつながりが生まれ、これからも監督として作品を撮っていく方もいれば、新しい道を見つける方もいるかもしれません。ある意味、この映画祭の3日間で皆さんの人生が変わるかも…という責任を自覚しながら、審査をさせていただきました。

藤原 俳優賞の選出では、僕と武田さんの意見を尊重していただけたことも、ありがたかったですね。授賞式も素晴らしかったです。受賞した方々の喜びと、受賞を逃した方々の悔しさが一体となり、皆さんの映画人生において重要な時間を過ごしていることが感じられて。

武田 その分、責任も感じて、授賞式で名前を読み上げるときは、自分が出品側として発表を待つときの100倍くらい緊張しました。受賞を逃した皆さんの思いもたくさん受け取ったので、これからも皆さんの作品を見ていきたいですし、いつか皆さんとご一緒できるように、私も頑張っていくつもりです。

-第16回田辺・弁慶映画祭の特別審査員を務めた磯村勇斗さんは、それがきっかけとなり、しずおか映画祭を立ち上げました。お二人は今回の経験を経て、新たな意欲は芽生えましたか。

武田 一緒に特別審査員を務めた映画評論家の松崎健夫さんから、今回の応募作の中にアクション作品がなかったとお聞きして、より幅広い作品が集まるといいなと思いました。それも踏まえて、私自身の中に、アクション映画祭を開催したいという思いが芽生えてきました。海外に負けないように、日本のアクション映画界を盛り上げていきたいです。

藤原 僕は今回の経験を踏まえて、二つのことを誓いました。一つは、今後の「田辺・弁慶映画祭セレクション」(田辺・弁慶映画祭の受賞作を東京と大阪で上映するイベント。通称”弁セレ“)には絶対に通うということ。今までも、テアトル新宿で開催された弁セレには通っていたのですが、見逃した作品も多くて。でも、すべて見なければ駄目だなと。それくらい面白い作品ばかりでしたから。もう一つが、俳優仲間に「田辺・弁慶映画祭には絶対行った方がいい!」と触れ回ることです。そうやって、田辺・弁慶映画祭とインディーズ映画の発展に貢献できたらと。そして僕は一生、インディーズ映画に出演し続けていくつもりです。

-それでは最後に、お二人の今後の予定について教えてください。

藤原 僕の主演映画『あるいは、ユートピア』が、渋谷のユーロスペースで11月末まで公開中です。その後も全国の皆さんにお届けしたいと考えているので、ぜひ期待してお待ちください。

武田 年明けの1月8日からドラマ「ワカコ酒」Season8の放送と、映画『室町無頼』が1月17日に公開します。来年はフィリピンやインドの映画も公開を控えており、海外での撮影も予定しているので、国をまたいで映画に携わり、また日本に戻ってきたいと思っています。

(取材・文・写真/井上健一)

 

【第18回 田辺・弁慶映画祭受賞結果】

弁慶グランプリ:『噛む家族』馬渕ありさ監督

キネマイスター賞: 『よそ者の会』西崎羽美監督、『噛む家族』馬渕ありさ監督

観客賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督

俳優賞 : 山下諒・二田絢乃・さいとうなり(『温帯の君へ』アンサンブル演技)、宮森玲実(『わたしの頭はいつもうるさい』)

映画.com賞 :『天使たち』木村ナイマ監督

フィルミネーション賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督

わいず倶楽部賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督

田辺・弁慶映画祭事務局提供

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山時聡真、中島瑠菜「倉敷の景色や街並みや雰囲気が、僕たちの役を作ってくれたという気がします」『蔵のある街』【インタビュー】

映画2025年8月19日

-この映画の主役は倉敷という街とそこに暮らす人たちだと思いましたが、演じながらそういうことは感じましたか。 山時 僕たちのお芝居がどうこうというよりも、本当に倉敷の景色や街並みや雰囲気が、僕たちの役を作ってくれたという気がします。これは自分 … 続きを読む

ファーストサマーウイカ「それぞれの立場で“親と子”という普遍的なテーマについて、感じたり語り合ったりしていただけたらうれしいです」日曜劇場「19番目のカルテ」【インタビュー】

ドラマ2025年8月17日

-主演の松本潤さんとお芝居で対峙(たいじ)してみての印象を教えてください。  松本さんは、演じられている徳重先生と共通して、とても包容力のある方だと感じます。現場でもオフでも、相手を受け止めて認めた上で、的確かつ愛を持ってアプローチされるの … 続きを読む

橋本愛 演じる“おていさん”と蔦重の夫婦は「“阿吽の呼吸”に辿り着く」【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年8月16日

-そんな魅力的な蔦重を演じる横浜流星さんの座長ぶりはいかがでしょうか。  横浜さんは、蔦重さんをどう演じるか、常に誠実に真面目に考えていらっしゃいます。そういう空気がスタッフやキャストにも伝播し、しっかり取り組もうという空気感が現場全体に生 … 続きを読む

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

-ネプトゥーヌス国王役の三宅さんはいかがでしょうか。人魚という設定の上に、娘と接するときと、それ以外では雰囲気がだいぶ違いますが。 三宅 ネプトゥーヌス国王は、「屈強で、威厳があり、でも娘に甘い」。最初にその3つのファクターを大事に、と伺い … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

-リアム・ヘムズワースとラッセル・クロウを演出してみていかがでした。  2人とも自分が演じるキャラクターを見いだすための努力を惜しまず、そのキャラクターの中にある真実や誠実さを見つけてくれます。さらにそのキャラクターにエンタメ性や楽しさも持 … 続きを読む

Willfriends

page top