エンターテインメント・ウェブマガジン

授賞式の模様
藤原 どの作品も問題意識が明確で、ものすごく刺激を受けました。「自分たちの葛藤や感性を自分で映画にするんだ」という初期衝動みたいなものがダイレクトに届き、作り手の最もピュアな部分があふれ出た印象もあり、心をグッと動かされて。おかげで、改めて「コンペっていいな」と思いました。前回も出品した監督が、「去年、田辺・弁慶映画祭で賞を取れず、1人で泣いた」と話していたんですけど、そういう悔しさが生まれるのも、コンペならでは。そこまで熱くなれるのは、素晴らしいことだなと。
武田 この映画祭をきっかけにいろんなつながりが生まれ、これからも監督として作品を撮っていく方もいれば、新しい道を見つける方もいるかもしれません。ある意味、この映画祭の3日間で皆さんの人生が変わるかも…という責任を自覚しながら、審査をさせていただきました。
藤原 俳優賞の選出では、僕と武田さんの意見を尊重していただけたことも、ありがたかったですね。授賞式も素晴らしかったです。受賞した方々の喜びと、受賞を逃した方々の悔しさが一体となり、皆さんの映画人生において重要な時間を過ごしていることが感じられて。
武田 その分、責任も感じて、授賞式で名前を読み上げるときは、自分が出品側として発表を待つときの100倍くらい緊張しました。受賞を逃した皆さんの思いもたくさん受け取ったので、これからも皆さんの作品を見ていきたいですし、いつか皆さんとご一緒できるように、私も頑張っていくつもりです。
武田 一緒に特別審査員を務めた映画評論家の松崎健夫さんから、今回の応募作の中にアクション作品がなかったとお聞きして、より幅広い作品が集まるといいなと思いました。それも踏まえて、私自身の中に、アクション映画祭を開催したいという思いが芽生えてきました。海外に負けないように、日本のアクション映画界を盛り上げていきたいです。
藤原 僕は今回の経験を踏まえて、二つのことを誓いました。一つは、今後の「田辺・弁慶映画祭セレクション」(田辺・弁慶映画祭の受賞作を東京と大阪で上映するイベント。通称”弁セレ“)には絶対に通うということ。今までも、テアトル新宿で開催された弁セレには通っていたのですが、見逃した作品も多くて。でも、すべて見なければ駄目だなと。それくらい面白い作品ばかりでしたから。もう一つが、俳優仲間に「田辺・弁慶映画祭には絶対行った方がいい!」と触れ回ることです。そうやって、田辺・弁慶映画祭とインディーズ映画の発展に貢献できたらと。そして僕は一生、インディーズ映画に出演し続けていくつもりです。
藤原 僕の主演映画『あるいは、ユートピア』が、渋谷のユーロスペースで11月末まで公開中です。その後も全国の皆さんにお届けしたいと考えているので、ぜひ期待してお待ちください。
武田 年明けの1月8日からドラマ「ワカコ酒」Season8の放送と、映画『室町無頼』が1月17日に公開します。来年はフィリピンやインドの映画も公開を控えており、海外での撮影も予定しているので、国をまたいで映画に携わり、また日本に戻ってきたいと思っています。
(取材・文・写真/井上健一)
【第18回 田辺・弁慶映画祭受賞結果】
弁慶グランプリ:『噛む家族』馬渕ありさ監督
キネマイスター賞: 『よそ者の会』西崎羽美監督、『噛む家族』馬渕ありさ監督
観客賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督
俳優賞 : 山下諒・二田絢乃・さいとうなり(『温帯の君へ』アンサンブル演技)、宮森玲実(『わたしの頭はいつもうるさい』)
映画.com賞 :『天使たち』木村ナイマ監督
フィルミネーション賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督
わいず倶楽部賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督

田辺・弁慶映画祭事務局提供
映画2025年12月31日
筋肉系スターの最後の生き残り そう考えると、『エクスペンダブルズ』シリーズの現役の傭兵役というのは、ステイサムにとってはむしろ異色と言っていい。多彩な個性や国籍の寄せ集めチームという設定のおかげで、彼のナチュラルな魅力もしっかり際立ってい … 続きを読む
映画2025年12月30日
-どんな点が楽しかったのでしょうか。 舞台や実写作品の場合、役を演じていても、どこか自分が残っているんです。でも、アニメーションは外見が自分と全く異なるので、より強い没入感が味わえて。それがすごく楽しかったです。 -そういう意味では、主人 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年12月29日
映画『うちの弟どもがすみません』やドラマ『リベンジ・スパイ』など、数々の映画やドラマ、舞台で活躍する織山尚大の3年ぶりの主演舞台となる「エクウス」が1月29日から上演される。本作は、実際に起きた事件を基に描かれた、ピーター・シェーファーに … 続きを読む
映画2025年12月28日
【日本映画】 邦画界は、今年も『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』『チェンソーマン レゼ篇』『名探偵コナン 隻眼の残像』など、アニメーション作品が興行成績の上位を占めたが、実写映画でも大ヒット作が生まれた。歌舞伎を題材とした … 続きを読む
ドラマ2025年12月26日
▽家族を世話する母 ムン・ソリは、「クイーンメーカー」(23年)や「私たちの人生レース」(同)のように、女性の主体性や自分らしさを打ち出す役を担い、エンパワーメントの姿を体現してきた。だが「おつかれさま」では、“肩書きのない母”を真 … 続きを読む