岡山天音「日本を代表する監督の現場に立てたことが大きな収穫」巨匠・黒沢清監督作品に初出演『Cloud クラウド』【インタビュー】

2024年9月26日 / 12:00

 9月27日公開の『Cloud クラウド』は、ネット上でさまざまな商品の転売を繰り返す“転売ヤー”の主人公・吉井良介(菅田将暉)が、自らの行為が生んだ悪意の集団によって追い詰められていくサスペンスだ。吉井を追い詰める集団の1人、三宅を演じるのは、『キングダム』シリーズや『ある閉ざされた雪の山荘で』(24)など、数々の作品で多彩な役を演じる若手実力派俳優・岡山天音。『スパイの妻』(20)でヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞するなど、世界的に知られる黒沢清監督作品への出演は初となる。初めて経験した巨匠の現場を振り返ってもらった。

岡山天音(C)エンタメOVO

-黒沢監督の作品に初出演となりましたが、出演が決まった時のお気持ちは?

 黒沢組に呼んでいただけたことを光栄に思いました。黒沢組を経験せずにキャリアを終える可能性もあった中で、ご縁あって参加できることがうれしかったです。

-台本を読んだときの印象はいかがでしたか。

 台本を読み、黒沢監督は確固たる世界観や作家性を持った方だと改めて感じました。対象のものがくっきりと目の前に姿を表しそうで表さない…という言語化しづらい気味の悪さや、よくわからない嫌な感じの絶妙な温度感は、フィクションで描こうと思っても、普通はなかなか難しいと思うんです。でも、それが台本からもしっかり伝わってきて、これぞ黒沢作品だなと。率直にそれが面白かったです。“転売ヤー”という昨今、日常的に見聞きしながらも、実情がよくわからない存在を物語の中心に据えていることにも興味をそそられましたし、それを菅田くんが演じるという“掛け算”にもワクワクし、胸が躍りました。

-菅田将暉さんとの共演はいかがでしたか。

 うれしかったです。この仕事を始めた10代の頃から度々共演させていただいていますが、同業者として見ても、いろんなものを持っている人ですし、毎回いろんなことを気付かせてくれる存在なので。そういう方と、20代の最後にご一緒できることへの喜びもあって。しかも、何かを仕掛ける側のキャラクターを演じる印象の強い菅田くんを、自分が⼀⽅的に追い詰め続けるという関係はこれまでなかった気がして、それも新鮮でした。

-菅田さん扮(ふん)する吉井を追い詰める三宅という役を演じる上で、役作りなどはどのようにされましたか。転売ヤーについて調べたりもしたのでしょうか。

 台本を読んでイメージを膨らませる作業に時間を掛けましたが、転売ヤーについて詳しく調べるようなことはしませんでした。というのも、この作品では実在の転売ヤーを解像度高く表現に移し、その実情や人生観みたいなものを描いているわけではなく、実態がはっきりしない部分があると同時に、ある種のケレン味が含まれた黒沢流の描き方になっています。そういう意味で、描かれていないところまで役の整合性を合わせることで映画がより面白くなるのかというと、そうではないと思ったんです。

-なるほど。

 そういうところをすっ飛ばして、人がいきなりおかしな行動に出るところに面白さがあると思ったので、自分の中で真実味を追求し、こういう出自だから…と役を作るのはやぼかなと。それよりも、イメージを膨らませることに時間を割いた方が有効だろうと思って。

-そういうお芝居のアプローチの仕方は、作品によって変わるものなのでしょうか。

 作品によっては、描かれていない役の裏側を自分で埋めておくことが生きる場合もありますが、それは逆に、現場でその枠から外れたことができなくなることも意味します。だから、現場で生まれる行動の面白さやはみ出していくことが僕の役に与えられた役割だった場合は、今回のようなアプローチをすることもあります。

(C)2024「Cloud」製作委員会

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

Willfriends

page top