「この映画は、とてもインド的な、インドに根付いている問題を描いています」アーミル・カーン『花嫁はどこへ?』【インタビュー】

2024年9月26日 / 08:00

 大安吉日のインド。育ちも性格も全く異なる2人の女性プール(ニターンシー・ゴーエル)とジャヤ(プラティバー・ランター)は、それぞれの花婿の家へ向かう途中で、同じ満員列車に乗り合わせる。だが2人とも赤いベールで顔が隠れていたため、夫たちの知らぬ間に入れ替わり、そのまま別の嫁ぎ先に連れて行かれてしまう…。2人の花嫁の思いがけない人生の行方をコミカルに描いた『花嫁はどこへ?』が10月4日から全国公開される。本作でプロデューサーを務めたインドの人気俳優アーミル・カーンに話を聞いた。

アーミル・カーン

-今回は俳優ではなくプロデューサーとしての役割でしたが、映画化に至った経緯からお願いします。

 ある脚本のコンペティションに審査員として参加していた時に、この脚本を読む機会を得て、とても気に入りました。そして、僕の元妻でこの映画の監督をしたキラン・ラオが、自分で書いた脚本に満足していなかったところに、僕がこの脚本の話をしたら、彼女もとても気に入ったので、映画化が決まりました。

-以前のインタビューで、「映画で一番重要なのは脚本だ」とおっしゃっていましたが、この脚本を見つけた時は“きっと、うまくいく”という予感はありましたか。

 はい。どうしてそう感じたかというと、とても大切な問題を扱っていながら、ライトな形でうまく処理されていて、ユーモアもあるように感じたからです。重要な問題についてユーモアで対処しているところに感銘を受けました。結婚した2組のカップルがいて、女性がベールをかぶっているせいで、男性の家にたどり着いた時に、初めて違う女性だったことに気付く。そんな不条理な状況を描いた物語がとても面白いと思いました。

-私のような日本人がこの映画を見て、インドの文化や風俗、あるいは女性が抱えている問題などを知ることができますが、映画を通してそうしたことを世界中に訴えかけたいという意識はあったのでしょうか。

 正直に言いますと、インド以外の世界の国々で、この映画がどう受け取られるかということはそれほど考えていませんでした。ただ、この問題はとてもユニバーサルで普遍的なテーマであるとは思います。女性の問題については、まだまだ世界中の社会の中で、家父長制が大きく存在していると思います。この映画は、さまざまな観客に家父長制について想起させ、考えさせるものを持っているという確信はありました。

-この映画は、フェミニズムというか、女性に関する描き方がとても印象的でしたが、カーンさんの中でインド社会における女性の姿を描くことは大きなテーマの一つなのでしょうか。

 時々、女性が良くない扱いをされていることに気付くことがあります。その時は、それを正すことを意識します。そして自分が何かを表現する時は、そうしたことが起こらないように働きかけることをしたいと思います。それは、人々に、そうしたことに対する感受性を喚起させることだと考えています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

Willfriends

page top