エンターテインメント・ウェブマガジン
寅子と桂場の恩師の穂高先生(小林薫)が、男性も女性も、みんなで法について考えることの大切さを説いていました。桂場はそれを「理想論だ」と言っていましたが、実はそこに一番こだわっているのが桂場です。そのために最高裁長官となった桂場は、時代が変化していく中で、古くなっていく法律の考え方や価値観を、いかに現代の解釈とすり合わせていくのか、取り組んでいます。その一方で、家庭裁判所の立場から変えていこうとしているのが寅子です。その中で、“司法の独立”の理想を追求する桂場は、寅子とぶつかる場面も出てきています。そういった意味も含め、これまでを振り返ってみると、桂場は寅子にとってときには味方で、ときには敵になる存在だったと思います。
僕は小道具を使って表現することが好きなので、現場でいろんな小道具を試しています。その中で、「これは誰も気付かないだろうな」と思ったものが、意外と視聴者の方に気付かれていたりするんです。そこまで見ている方がいるのかと驚くと同時に、怖さも感じました。つまり、画面に映る全てが表現につながるので、指の先まで何を表現すべきか意識しなければいけないんだなと。逆に、表現したくなければ、動かさないようにしなければいけない。そういう意味では、身体全体で役を表現することの怖さや大切さを、皆さんのSNSの反応から気付かせていただきました。
毎日撮影が進む中で、“電池切れ”することがないのが、本当にすごいと思っています。僕が大河ドラマ(「平清盛」12)のときに経験したことですが、“電池切れ”すると、役の方向性が迷子になり、どんなふうに修正したらいいのかさえ、考えられなくなってしまうんです。でも、沙莉ちゃんを見ていると、そういう迷いが一切感じられません。物語が進むと、役の年齢も環境も立場も変わってくる中で演じ分けなければなりませんが、沙莉ちゃんは迷いなくやられている。それが本当にすごいなと。
長く演じさせていただく中で、桂場は僕にとって大切なキャラクターになりました。僕は役に自分の理想を込めるところがあるので、法と向き合う人間はこうであってほしい、という僕自身の思いが、このドラマにも大きく影響している気がします。最後の最後まで、見どころ満載で、シリアスな物語を繊細に演じつつもコミカルな描写もあり、優しさにあふれた人間讃歌になったと思います。ぜひ最後まで見届けていただけたらうれしいです。
(取材・文/井上健一)
ドラマ2024年9月21日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。9月15日に放送された第三十五回「中宮の涙」では、長い間、懸案となっていた一条天皇(塩野瑛久)と中宮・彰子(見上愛)の溝がようやく埋まった。彰子の父・藤原道長(柄本佑)も、ほっと一安心といったと … 続きを読む
映画2024年9月20日
『あの人が消えた』(9月20日公開) 配達員の丸子夢久郎(高橋文哉)は、「次々と人が消える」とうわさされるいわくつきのマンションに毎日のように荷物を配達するうちに、怪しげな住人たち(北香那、坂井真紀、袴田吉彦、染谷将太…)の秘密を知ってし … 続きを読む
映画2024年9月19日
-水野監督の演出で印象に残ったことは。 コメディーはコメディーだと思ってやると笑えないということを教えていただきました。「コメディーの要素があるせりふを真面目に言ってみて。それが面白いんだよ」と。それはすごく勉強になりました。私はどうして … 続きを読む
ドラマ2024年9月18日
-クランクインから約1カ月が経ちますが、共演者の皆さんと、どのような雰囲気で撮影が進んでいますか。 杉咲花さん、池田エライザさん、清水尋也くん、土屋太鳳さんと同世代の仲間がたくさんいるので、いつも休憩時間に話しながら、楽しく笑いながら撮影 … 続きを読む
ドラマ2024年9月15日
NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。女性として日本で初めて法曹界に飛び込んだ主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)の物語は、まもなくクライマックスを迎える。数十年前の戦前から戦後の昭和を舞台にした物語は、私たちが生きる現代にも重なり、大き … 続きを読む