「3人の男性の夢、そしてその夢に対する執念をそのまま感じてほしい」『ボストン1947』カン・ジェギュ監督【インタビュー】

2024年8月29日 / 18:30

-この映画を日本で公開することについての感慨を。

 この映画は、3人の男たちが、スポーツを愛して、夢を見て、純粋に情熱を持ってマラソンに取り組んだことがそのまま伝わるといいと思ったのですが、もしかするとこの映画を見て、ある人は愛国主義的だと感じたり、国家主義的だと思うかもしれないという心配がありました。私はあくまでもこの3人の男性の夢、そしてその夢に対する執念をそのまま感じてほしいと思っていました。私がこれまで作ってきた映画は、『銀杏のベッド』(96)以外は全て日本で公開されているのですが、もしかするとこの映画は日本では公開することができないかもしれない、配給されないかもしれない、日本では見てもらえないかもしれないと思ったりしました。ただ、その考えは違っていて、私が憂慮していたようにはならず、日本の皆さんはこの映画を見て、居心地の悪さを感じることはなく、純前たるスポーツ精神が描かれたスポーツの映画だというふうに捉えてくださったようです。それは本当に幸いだったと思います。

-この映画のポイントは、3人の男たちの関係性にあると言ってもいいでしょうか。

 本作の監督の提案があった時に、オリンピックで優勝したソン・ギジョン、そして一緒にオリンピックに出たナム・スンニョン、そして彼らの弟子に当たるソ・ユンボクという3人の人物を1本の映画の中で見られるというのが大きな魅力だと思いました。というのも、3人の関係性から自己犠牲の精神を見ることができるからです。マラソンが大好きで、その夢に向かってただ単純に走り続けるというストーリーではなく、ある人は自分の後輩のためにとか、友人のためにとか、何かを犠牲にしたり、何かを人に譲ったりする。お互いに足りないところを力を合わせて補いながら、その夢を成し遂げようとする。同じ関心事を持ち、そして愛情を持って、犠牲を払ってでもそれを成し遂げようとする。その過程がとても素晴らしいと思いました。そうした考え方は、今を生きる人たちにも必要なものではないかと考えました。

 ペ・ソンウが演じたナム・スンニョンという人はベルリンオリンピックで3位に入り、このボストンマラソンでも12位に入ったというすごい人です。ただ、ソン・ギジョンやソ・ユンボクのように1位にはなれなかった。どんなことにおいても1位になれる人はたった1人です。ですから、このナム・スンニョンの姿は、1位になれない一般の大勢の人たちの姿を代弁してくれるのではないかと思いました。その意味でも、この映画では、ナム・スンニョンがとてもいい存在になっていると思います。

-最後に、この映画の見どころを。

 この映画のジャンルは何かと聞かれれば、やはりスポーツ映画だと言えると思います。ただ、単純なスポーツ映画ではなく、それ以外のさまざまな要素や状況が含まれていると思います。1947年という特別な時代背景を持っていますし、1人の選手の一代記ではなく、本当にさまざまな人物の性格や、それぞれの人物の暮らし、人生というものが投影されている作品になったと思っています。そういう面では、ほかのスポーツ映画とは差別化できるのかなと思います。また、マラソンの魅力をできるだけ見せるということに加えて、特別な時代的な状況があった。そこから生まれるジレンマもあった。そういった人間的な部分で昇華させていく必要があったので、人間ドラマ的な要素も併せ持っていると思います。それがこの作品の長所になっていると思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CONTENT ZIO Inc. & B.A. ENTERTAINMENT & BIG PICTURE All Rights Reserved

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

浜辺美波「池松壮亮さんから様々な刺激をいただいています」大河ドラマ初出演で豊臣秀吉の妻・寧々を好演【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年4月11日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄の秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの奇跡を描く物語は快調に進行中だ。本 … 続きを読む

佐野晶哉「祖母が泣いて喜んでくれました」 連続テレビ小説初出演への意気込み【連続テレビ小説「風、薫る」インタビュー】

ドラマ2026年4月11日

  -シマケンが「良き相談相手」となるりんとの関係について教えてください。  シマケンとりんの2人のシーンには、独特の空気感が漂っています。りんの家族や親友の槇村太一(林裕太)が一緒のシーンはテンポよく進むのに、りんと2人きりになると、お互 … 続きを読む

早乙女太一「“劇団朱雀”という新たなジャンルを作るような気持ちで」早乙女友貴「お祭りを楽しむような感覚で」豪華ゲストと共に3年ぶりの公演に挑む 劇団朱雀「OMIAKASHI」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年4月9日

-お話からは劇団朱雀が常に進化を続けている様子が窺えますが、大衆演劇の伝統を大切にしつつ新しい演目を作り上げていく上で、心掛けていることはなんでしょうか。 太一 僕が舞台を作る上で最も大切にしているのが、その点です。当初は、「これを変えてし … 続きを読む

岸井ゆきの「『死』をポジティブに捉えることで、人生を前向きに考えられる」患者の最期をみとる看護師役を通して芽生えた死生観「お別れホスピタル2」【インタビュー】

ドラマ2026年4月3日

-すごいですね。  それでも、「カット」がかかった途端、皆さんとても明るく振る舞っていらっしゃって。私だったら、役を引きずってしまい、すぐには切り替えられないと思います。きっと皆さん、亡くなった親族やご友人など、思い出す相手がいらっしゃって … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第12回「小谷城の再会」豊臣兄弟の運命を左右する出会い【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年4月2日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。3月29日に放送された第12回「小谷城の … 続きを読む

page top