エンターテインメント・ウェブマガジン
近浦 僕にとっての映画は、第一義としてエンターテインメントです。90分〜120分の良質なエンターテインメントを作りたいという思いで、映画制作に取り組んでいます。ですので、この映画についても、最後まで何らかの気持ちを抱きながら楽しんでもらえるフックが必要でした。そのうちの一つがミステリーだったのかもしれません。事物の見せ方に関しては若干ホラー映画的な試みもしています。そういったいろんなことをミックスしながら、2時間ちょっとの旅を、観客の皆さまには寝ずに、あるいは劇場から出ていかずに一緒に過ごしてもらいたいなと。最後にたどり着いたら何かを持って帰ってもらえるんじゃないかなというふうに思っていますので。ミステリーの部分に関しては、何度か見ればおおよそのことは分かると思います。いろんなヒントをちりばめています。
藤 訓練はしません。もう何か覚えるんでしょうね。覚えるというと一生懸命何回も何回もという感じなんだけど、あまりそういう意識がないんです。何となくせりふが入っちゃうんですかね。ちょっと説明し難いんだけど、自分でしゃべっている気は全然していないんです。陽二さんがしゃべっているという感じなんです。だからここで何かをやろうとか、何も考えていないです。陽二さんに全部任せているというか、自分の中に陽二さんが入っている感じです。それが自然に出ていく。私はカチンコになるとすごく自由になれる感じがします。若い時はひどい有りさまでしたけど、だんだんと、訓練じゃないですけど、職人みたいなものですね。技というか、手になじんでくるって言いますか。
近浦 まずは難しいことは考えずに気楽に楽しんでもらいたいなと思います。きっと興味深く見られると思います。あとは、やはりこの映画で一番見てもらいたいのは役者の演技です。本当にこれだけの役者が日本にいるんだと。また、昨年サン・セバスチャン国際映画祭で藤さんがシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞しました。それがどんなものなのかというのを見ていただきたいと思います。
藤 最初に台本を読んだ時に、老境の人間を非常によく描いている。むしろ冷酷に描いていると思いました。でもこれが観客とどうインタアクション(交流)するのか想像ができませんでした。「これで人は感動するの? 面白がるの?」という感じでした。失礼だけど、私はそう思いました。ただ、とてもやりがいがある役だとは思いましたから、監督にも「私はこの映画がどういうものになるのか見当はつきませんが、このおやじだけはしっかりやらせていただきます」と打ち合わせの時に申し上げたんです。ところが、初めて試写を見終わった後、何かグラグラと揺すられた感じがしました。ちょっとドキドキするけど、こいつは一体なんだろうと。それが何かということは具体的には説明できないのですが、この感じを観客の皆さんにも味わっていただきたい。この作品と観客がどうインタアクションするのかにすごく興味があります。それが楽しみです。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023 CREATPS
映画2025年11月14日
-撮影で特に印象に残った場面を教えて下さい。 近所の少年たちにいじめられた幸太が大雨の中、おじさんの家の前で黙って座り込んでいるシーンが、すごく印象に残っています。カメラに綺麗に映るように、大量の雨を降らせていたので、その水圧がものすごく … 続きを読む
2025年11月14日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈 銭湯の湯け … 続きを読む
映画2025年11月13日
-その結果、完成したこの映画では、強盗団が使う刀やナイフのほか、列車備え付けのシャッターや消火器、乗客の荷物など、一見武器になりそうにない身近なものを使った多彩なアクションが見所です。そういうアイデアはどこから生まれたのでしょうか。 私は … 続きを読む
映画2025年11月11日
-ジュゼッペ役の佐野晶哉さんの印象はいかがでしたか。 ご一緒するのは今回が初めてでした。先に佐野さんの声が吹き込まれている状態でアフレコをさせていただきましたが、1日だけ一緒にお芝居ができた日がありました。その時に、第一声から本当に迷いな … 続きを読む
ドラマ2025年11月10日
草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む