「この作品と観客がどうインタアクションするのかにすごく興味があります」『大いなる不在』藤竜也、近浦啓監督【インタビュー】

2024年7月10日 / 08:00

-監督、原日出子さんが演じる陽二の奥さんが行方不明になるところは、ちょっとミステリーぽいものを意識しましたか。

近浦 僕にとっての映画は、第一義としてエンターテインメントです。90分〜120分の良質なエンターテインメントを作りたいという思いで、映画制作に取り組んでいます。ですので、この映画についても、最後まで何らかの気持ちを抱きながら楽しんでもらえるフックが必要でした。そのうちの一つがミステリーだったのかもしれません。事物の見せ方に関しては若干ホラー映画的な試みもしています。そういったいろんなことをミックスしながら、2時間ちょっとの旅を、観客の皆さまには寝ずに、あるいは劇場から出ていかずに一緒に過ごしてもらいたいなと。最後にたどり着いたら何かを持って帰ってもらえるんじゃないかなというふうに思っていますので。ミステリーの部分に関しては、何度か見ればおおよそのことは分かると思います。いろんなヒントをちりばめています。

-藤さんに、以前インタビーした時に「台本が覚えられるうちは俳優を続ける」とおっしゃっていました。今回も長ぜりふがありましたが、日頃から何か訓練はしているのですか。

 訓練はしません。もう何か覚えるんでしょうね。覚えるというと一生懸命何回も何回もという感じなんだけど、あまりそういう意識がないんです。何となくせりふが入っちゃうんですかね。ちょっと説明し難いんだけど、自分でしゃべっている気は全然していないんです。陽二さんがしゃべっているという感じなんです。だからここで何かをやろうとか、何も考えていないです。陽二さんに全部任せているというか、自分の中に陽二さんが入っている感じです。それが自然に出ていく。私はカチンコになるとすごく自由になれる感じがします。若い時はひどい有りさまでしたけど、だんだんと、訓練じゃないですけど、職人みたいなものですね。技というか、手になじんでくるって言いますか。

-最後に、観客に向けて一言お願いします。

近浦 まずは難しいことは考えずに気楽に楽しんでもらいたいなと思います。きっと興味深く見られると思います。あとは、やはりこの映画で一番見てもらいたいのは役者の演技です。本当にこれだけの役者が日本にいるんだと。また、昨年サン・セバスチャン国際映画祭で藤さんがシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞しました。それがどんなものなのかというのを見ていただきたいと思います。

 最初に台本を読んだ時に、老境の人間を非常によく描いている。むしろ冷酷に描いていると思いました。でもこれが観客とどうインタアクション(交流)するのか想像ができませんでした。「これで人は感動するの? 面白がるの?」という感じでした。失礼だけど、私はそう思いました。ただ、とてもやりがいがある役だとは思いましたから、監督にも「私はこの映画がどういうものになるのか見当はつきませんが、このおやじだけはしっかりやらせていただきます」と打ち合わせの時に申し上げたんです。ところが、初めて試写を見終わった後、何かグラグラと揺すられた感じがしました。ちょっとドキドキするけど、こいつは一体なんだろうと。それが何かということは具体的には説明できないのですが、この感じを観客の皆さんにも味わっていただきたい。この作品と観客がどうインタアクションするのかにすごく興味があります。それが楽しみです。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023 CREATPS

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「豊臣兄弟!」第25回「変事の予兆」家臣を追放した信長の孤独【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年7月2日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。6月28日放送の第25回「変事の予兆」では、天下統 … 続きを読む

ケナ・ハリス共同監督&リンジー・コリンズプロデューサー「おもちゃたちがデバイスのことをどう思うのかという視点がとても面白い」『トイ・ストーリー5』【インタビュー】

映画2026年7月1日

-今回は、子どもたちにとって、友達という存在は何なのか、相手はデバイスでもいいのか、それともやっぱり人間がいいのかなど、いろいろと考えさせられるところがありました。 コリンズ 今回は、友情の形みたいなものが物語を開発していく上での鍵になりま … 続きを読む

山下リオ「それぞれの愛の形を、まざまざと見せつけられるような映画になっていると思います」『遺愛』【インタビュー】

映画2026年6月30日

-「愛か呪いか」が、この映画のキャッチコピーになっていますが、それについて、演じながらどのように感じましたか。  本当にその通りだと思います。愛とか呪いとか、一応名前は付いていますけど、それって、立体造形にしたら同じものができる可能性がある … 続きを読む

塩野瑛久「中島健人さんへのリスペクトがさらに増しました」ラブコメディで初共演『ラブ≠コメディ』【インタビュー】

映画2026年6月29日

-劇中では、麗司や颯真が人や作品との出会いを経て成長していく姿が描かれています。俳優として数々の出会いを経験してきた塩野さんにとって、最近ではNHKの大河ドラマ「光る君へ」(24)への出演も大きな出会いだったと思います。放送から2年がたち、 … 続きを読む

横山裕「人間ドラマが色濃く描かれていて、物語に一気に引き込まれる」 関水渚「横山さんが演じる磯貝さんとの掛け合いの面白さを楽しんで」 水ドラ★イレブン「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」【インタビュー】

ドラマ2026年6月29日

  -これからの暑い季節の撮影で大変なことも多いと思いますが、暑い中での撮影で心がけていることはありますか。 横山 10年前にも同じスタッフさんと一緒にドラマを作ったのですが、そのときはスーツで。それもめちゃくちゃ大変だったんですが、今回は … 続きを読む

page top