広瀬アリス「すごく新鮮な体験でした」風間俊介「広瀬さんはアスリートのようだった」初共演の2人が語る重厚なミステリーの舞台裏「連続ドラマW 完全無罪」【インタビュー】

2024年7月4日 / 12:30

広瀬アリス(左)、風間俊介

-本作のメガホンをとったのは、『MOTHER マザー』(20)、『グッバイ・クルエル・ワールド』(22)など、骨太な作品を多数手掛ける大森立嗣監督です。大森監督の現場はいかがでしたか。

広瀬 役者の皆さんのこれまで見たことのない表情を数多く見ることができました。というのも、こういうキャラクターだから、こうしなければ、ということがなく、常に自然体なのにきちんとその役に見え、物語が成立するんです。それがすごく不思議で。

-それが大森監督の特徴だと?

広瀬 そんな気がします。大森監督は、ぱんぱんに膨らんだ風船のような私に「お芝居しないで」と声を掛け、ほどよく空気を抜いてくださるんです。「千紗としてここに立ったとき、あなたはどうする? 緊張しているんだよね。そんなとき、どんな行動をとる?」といった感じで演出してくださる上に、ささいな一瞬の表情も見逃さず、俳優本人のリアルなしぐさを大事にしてくださって。おかけで、いい緊張感を保ち、常に役と自分が一体のような感覚でいられました。

風間 人の深層心理にある根幹的なものは、表面的な動作やせりふではなく、ほのかに匂ったり、ちょっとしたしぐさににじみ出たりするもの。大森監督は、そういう役の深層心理を大事にすくい取ろうとしていた気がする。

広瀬 確かに、そんな印象を受けました。

風間 お芝居するときは、こういう物語で自分の役割はこうだから、という設計図が徐々にできあがっていくんだけど、その設計図を書かせないのが大森監督。だから例えば、自分が書類を整理した後に相手が部屋に入ってくる、という場面では、想定したタイミングで相手が入ってこない、という瞬間が当たり前のようにやってくる。そのとき、「何もすることがない手」が生まれる。普通は「何もない手」をやるときは、「何もない手をやろう」と意図してお芝居するんだけど、大森組では意図しない「何もない手」が生まれる。でも、そういうことは日常的にありえるから、その「手」の使い方にその人がにじみ出る。そこが、大森組の魅力じゃないかな。

広瀬 私も最初は不安でしたが、幸い、大先輩の皆さんが何人も現場にいらっしゃったので、北村さんとご一緒したとき、力を抜いて柔軟に演じられる姿を間近で見て、そこから少しずつ学んでいきました。おかげで、いい具合に力も抜け、すごく新鮮な体験ができました。

-全力で事件に向き合う千紗を演じているのに、「力が抜けている」というのは意外です。

風間 千紗としては力が入っているけど、広瀬アリスとしては力を入れないで、ということじゃない?

広瀬 そうなんです。だから、ものすごく難しくて。

風間 難しいし、多分、今までにない疲れ方をするだろうなと思った。でも、大変だけど面白い体験だったんじゃないかな。

広瀬 面白かったです。気付いたらどっぷりと千紗に“はまる”どころか、“沼”っていて。千紗として平山さんや有森さんと向き合う中で、どんどんいろんな感情も出てきましたし…。こういうお芝居のやり方もあるんだな、と気付かされました。

-本作の魅力をひもとくヒントになりそうなお話です。それでは最後に、作品の見どころを。

広瀬 最後まで二転三転し、真実がどこにあるかわからない物語です。千紗を演じた私ですら、「人を信じるってなんだろう?」と疑問が浮かび、自分に芽生えた感情すら疑い始めるなど、いろんな思いが湧き起こりました。ぜひ皆さんも重厚な物語に心揺さぶられ、そんな余韻を味わっていただけたらうれしいです。

風間 普段、僕たちが信じていることのオブラートが引き剝がされていく瞬間が魅力的で、すごく面白い作品です。「面白い」という言葉にはさまざまな意味がありますが、その中でもこれは「面白い…」と思わずうなってしまうような作品だと思います。ぜひ最後まで楽しんでください。

(取材・文・写真/井上健一)

「連続ドラマW 完全無罪」 (全5話/第1話無料)、7月7日午後10時からWOWOWで放送・配信スタート

(C)大門剛明/講談社 (C)2024 WOWOW

「連続ドラマW 完全無罪」(C)大門剛明/講談社 (C)2024 WOWOW

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ファーストサマーウイカ「それぞれの立場で“親と子”という普遍的なテーマについて、感じたり語り合ったりしていただけたらうれしいです」日曜劇場「19番目のカルテ」【インタビュー】

ドラマ2025年8月17日

-主演の松本潤さんとお芝居で対峙(たいじ)してみての印象を教えてください。  松本さんは、演じられている徳重先生と共通して、とても包容力のある方だと感じます。現場でもオフでも、相手を受け止めて認めた上で、的確かつ愛を持ってアプローチされるの … 続きを読む

橋本愛 演じる“おていさん”と蔦重の夫婦は「“阿吽の呼吸”に辿り着く」【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年8月16日

-そんな魅力的な蔦重を演じる横浜流星さんの座長ぶりはいかがでしょうか。  横浜さんは、蔦重さんをどう演じるか、常に誠実に真面目に考えていらっしゃいます。そういう空気がスタッフやキャストにも伝播し、しっかり取り組もうという空気感が現場全体に生 … 続きを読む

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

-ネプトゥーヌス国王役の三宅さんはいかがでしょうか。人魚という設定の上に、娘と接するときと、それ以外では雰囲気がだいぶ違いますが。 三宅 ネプトゥーヌス国王は、「屈強で、威厳があり、でも娘に甘い」。最初にその3つのファクターを大事に、と伺い … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

-リアム・ヘムズワースとラッセル・クロウを演出してみていかがでした。  2人とも自分が演じるキャラクターを見いだすための努力を惜しまず、そのキャラクターの中にある真実や誠実さを見つけてくれます。さらにそのキャラクターにエンタメ性や楽しさも持 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(1)“たまたま”が導いた講談の道

舞台・ミュージカル2025年8月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼みなさん、こんにちは  日本の伝 … 続きを読む

Willfriends

page top