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元受刑者の更生を支え続ける大阪の建設会社の社長・草刈健太郎さんの壮絶な10年の記録を描いたテレビ大阪ドキュメンタリー映画『おまえの親になったるで』が28日から東京と京都で順次公開される。11年前、関西の中小企業が集まり、元受刑者に住まいや仕事を提供して再犯を防ぐ「日本財団職親プロジェクト」が発足。同プロジェクトの中心メンバーとして、罪を犯して刑務所や少年院から出てきた人の身元を引き受け、仕事と住居を提供し「親代わり」になっている草刈さんには、大切な妹をアメリカ人の夫に殺害された悲しい過去があった…。
本作は2018年と2020年にテレビ大阪で制作・放送され、テレビ東京系列ドキュメンタリー大賞と第28回坂田記念ジャーナリズム賞特別賞を受賞。さらに700時間以上に及ぶ映像記録を再編集し、社会問題に迫るヒューマン・ドキュメンタリーとして映画化した作品は再犯防止を目的に、全国の刑務所や少年院でも上映されている。
映画の公開に伴い、草刈さんが活動を始めたきっかけや、元受刑者に幾度となく裏切られても支援を続ける理由、活動を通じて感じている日本社会の課題や問題点などを聞いた。
草刈健太郎さん(C)エンタメOVO
2011年に東日本大震災の復興活動で仙台や石巻に炊き出しに行っていたときに、(同プロジェクト発案者である)大阪のお好み焼き屋「千房」の中井政嗣会長にお世話になり、その後に一緒にやってみないかというお話をいただいたことがきっかけです。もともと家系的にボランティア活動は活発で、亡くなった妹もボランティアをやっていましたし、家の先祖の遺言で「言われたことは断ったらあかん」という家訓もあったので始めました。
妹が2005年に死んでから、僕は夢がなくなってしまった感じだったんです。そんな中、青年会議所の友達からカンボジアでの活動を手伝ってほしいと頼まれて、2008年にカンボジアに渡りました。そこでは子どもが生ごみから食べ物を探していたり、児童労働や児童買春をやったり、そんな中、紛争も起こってむちゃくちゃな国で…。そんな現状を見た後に、東日本大震災でたくさんの人が亡くなっても皆が頑張って生きている姿を見たら、自分はボランティアで行っていながらも大いに励まされた気持ちになって。自分がお返しをするのは、こういう所なのかなと思いましたし、その後に「職親プロジェクト」を始めるために刑務所を訪れたときに、何か変なつながりやなと、妹から何か言われているような気がしました。
人を殺したら命は帰って来ないので、やっぱり罪なんか償えないと僕は思うんです。でも、加古川市の播磨学園という少年院に行って、初めて少年院の子たちとガチンコでしゃべったときに、人を殺した人間ばかりではないけれど、この子らを放っておいたら、いつか人殺しをするなと思ったんです。「足し算も掛け算もできへん」と言うし、僕も「お前ら、足し算もできなかったら悪いことをするしかないやんけ」と言って、「職親プロジェクト」の会議に来ていた公文式の方に「少年院に行って公文をやってほしい」とお願いして導入してもらいました。そうしたら足し算ができなかった奴が微分・積分までできるようになって年々レベルが上がっているんです。少年院に入るやつは負けず嫌いが多いですし、みんな頑張って勉強しています。これは更生とはまた別の話ですが、いつか彼らの役に立つと信じて、支援の一つとしてやっています。
親がおるのとおれへんのとでは、悪いことをするときのレッドラインの超え方が違うなと思います。0か1か、俺は世の中から見捨てられているから、もうどうでもええわ、ここまで悪いことをしてもええねん、みたいな考え方の人は親にしても友達にしても止める人がいないなと思います。親がいないのにいるといったり、うそばかり付くし、もうずっとそういう虚言癖で育ってきた子もいますね。“何が本当か”を誰も教えてくれなかったんだと思います。だから自分でも分からない。ある子は人に優しくされたことがなくて、僕に「それだけ優しくされたらしんどい」と言う子もいました。
(C)テレビ大阪
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