「今まで見たことがないエンターテインメントがここにあると思う」『THIS MAN』木ノ本嶺浩【インタビュー】

2024年6月5日 / 08:00

-天野友二朗監督の演出はいかがでしたか。

 このシーンはこう撮りたいという明確なイメージを持っていらっしゃるし、そのシーンの意図を丁寧に説明してくださいましたので、僕らとしては、ある種感情の設計図になるようなところがありました。「こうしてください」とか「ここはこんな表情で」みたいな演出を現場で受けるのではなく、「ここはつらいですね」みたいなところを読み合わせた上で撮影ができました。めちゃくちゃ欲しいカットが撮れたら、すごくニコニコしながら、「いや、よかったですね」と。自宅での家族のシーンはすごくカット数が多くて、シーン数も多いのに、どんどんと早いテンポで一気に撮っていました。乗ってくると、監督が“あの男”を見たんじゃないかと思うぐらいに熱が入って、その熱にほだされて、現場の士気もどんどんと上がっていくみたいな感じでした。

-順撮りではなかったとのことですが、役としてのメリハリの付け方というか、幸せだった時との切り替えを演じるのは大変でしたか。

 大変な部分はありましたが、起きる出来事に対して素直に反応していくようにしました。目の前でつらそうにしている奥さんがいる、目の前で子どもが泣いていることに素直に反応していく。順撮りではない分、手探り感というのは確かにありましたけど、とにかく起きる出来事に素直に反応しようと思いました。また、役について半年間じっくりと考えていられるというのはとても充実した期間でした。ふとした時に脚本を読み返して、家族についてはこうなのかなと考えていけたので、僕の中ではすごく寄り添い続けられた役でした。いつもこんなふうに真摯(しんし)に作品と向き合い続けたいと思いました。年齢的にも奥さんがいて子どもがいてという役ができたことは、ある意味、転機になりました。

-完成作を見て、撮影時と印象は変わりましたか。

 見たことがない作品だと思いました。 映像や音楽の使い方も和ではなく、ある種アジア的なノリもあるんですけど、でもやっぱりこれは日本だよなという印象もありました。また、映像のカラーリングでいえば、監督がこだわった色合いがこんなにも際立つんだという驚きがありました。伊豆大島のロケーションでは、自然への畏怖みたいなものを感じました。それがあるからこそ、人々は見えないものに巻き込まれていくみたいなテーマが見えました。

-これから映画を見る読者に向けて、一言お願いします。

 恐怖を感じたいという人には、もちろん楽しんでいただけると思います。ただ、それだけではないドラマもありますし、恐らく今まで見たことがないエンターテインメントがここにあると思うので、いろんな楽しみ方ができると思います。考え過ぎずにも見られるし、考え込むこともできるという作品になっています。そこを楽しんでいただければと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2024 Union Inc.

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

ドラマ2025年10月20日

-高橋さん、沖縄の言葉は大変でしたか。 高橋 真栄田に関しては「ないちゃー(本土の人間)」と言われているような男なので、そこまで大変ではなかったのですが、(小林)薫さんや青木(崇高)さんは結構大変だったと思います。真栄田は彼なりによかれと思 … 続きを読む

オダギリジョー「麻生さんの魅力を最大限引き出そうと」麻生久美子「監督のオダギリさんは『キャラ変?』と思うほど(笑)」『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』【インタビュー】

映画2025年10月17日

-豪華キャストが生き生きとコメディーを演じているのが「オリバー」の人気の理由ですが、そういうアイデアは、現場で出演者の皆さんから出てくる部分も多いのでしょうか。 オダギリ みんなで楽しもう、という雰囲気はあるとは思うんですが、コメディーって … 続きを読む

【映画コラム】初恋の切なさを描いた『秒速5センチメートル』と『ストロベリームーン 余命半年の恋』

映画2025年10月17日

『ストロベリームーン 余命半年の恋』(10月17日公開)  病弱な体のため、学校にも通えず毎日独りで家の中で過ごしてきた桜井萌(當真あみ)。彼女のひそかな夢は、自分の誕生日に好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれるという、6月の満月 「ストロベ … 続きを読む

大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

映画2025年10月16日

-そうやって出来上がったふわふわとした初五郎の存在が、対照的に絵の道を極めようとする北斎親子の生きざまを際立たせている印象です。北斎親子についてはどのような印象を持たれましたか。  2人とも自分の意志を曲げないので、ことあるごとにぶつかり、 … 続きを読む

黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

映画2025年10月15日

-団塚監督の印象は? 遠藤 出来上がった映像を見て、びっくりしました。予想だにしないアングルがあったり、編集にも想像がつかないような斬新さがあって面白かった。監督は、撮影中に何か言う時も、この若さでと思うぐらいとても適切でした。言うことが全 … 続きを読む

Willfriends

page top