「この映画を見て、笑って元気づいていただけたら、最高にうれしい」「明日からしっかり生きようというパワーをくれる映画」松村克弥監督、北原里英『神さま待って!お花が咲くから』【インタビュー】

2024年2月5日 / 14:30

-北原さんは、新倉さんとの共演はいかがでしたか。

 すごく真っすぐな子で、翔華ちゃんがここにいると思いました。だから目の前にいるこの子が亡くなったら本当に悲しいだろうなと思いました。自分は医者の役だけど、この子を助けられないんだと思うと、すごく切なかったです。聖菜ちゃんが翔華ちゃんを演じたことで、お芝居の面でも助けられたところがあります。何かとてもリアルで、演じているのではなく、そこに本当の翔華ちゃんがいるような感じがして。

 私は、お芝居ですぐに泣けるタイプではないので、その気持ちを作るためには、一度別の悲しいことを想像したりします。過去に泣いたことがある経験を思い出して、ここまで涙を持ってきて、お芝居をしながら涙を流すみたいな工程を踏むことが多かったんですけど、今回は目の前にいるこの子を救えないんだという思いがして、最初から持ってこられました。

-監督が、この映画に込めた思いとは。

 プロデューサーさんが言っていた「9割笑い、1割感動」というのをなるべく大切にしようと思いました。うまい子役が出てきて泣かすというのではなく、翔華ちゃんや友達の女の子たちが持っている、いとおしさや切なさ、悲しさを出すことに気を付けました。泣かせるのではなくて、笑わせたりしながら切ない感じを出すみたいな作品だったと思うので。

-聖華ちゃんが亡くなった後に、彼女がまいた種が周囲の人たちに影響を与えたところに、彼女が生きた証しみたいなものが出ていたと思いますが。

 その通りです。だからタイトルにもお花があるんです。シンボリックな話として、翔華ちゃんのお父さんから「翔華は飛んできた花。もしかしたら、本当にこの世に降りてきた天使だったかもしれない。ちょっと間違えて生まれてきてしまった天使だったのかもしれません」と聞いたことがあって、そういう思いは大切にしたつもりです。

-最後に、観客に向けて、見どころも含めて一言ずつお願いします。

北原 この映画は、明日からしっかり生きようというパワーをくれる映画だと思います。見た方の生きるパワーの源になったらいいなと思います。まずは映画館でいろんな方に見ていただくのが目標ですけど、ゆくゆくは小学校の授業などで体育館に集まってみんなで見たりすることもできる映画だと思います。それから「夏休みに地元の市民会館で特別上映するから見に行こう」みたいな、親子のコミュニケーションにもつながるような映画になっていったらいいなと思います。

松村 映画館で上映して終わるというのではなく、今北原さんが言ったように、地域上映みたいな形で広げていきたいと思います。こういうテーマだと、重く感じて見るのをためらう人もいるかもしれませんが、全くそんなことはなくて、みんなが生き生きと明るく演じてくれたので、ぜひ見ていただいて、爽やかな感動を味わっていただきたいと思います。この映画は、翔華ちゃんが周りを笑わせて勇気づけたことを大切に描いたつもりなので、この映画を見て、笑って元気づいていただけたら、僕としては最高にうれしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)海と空キネマ

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

Travis Japan七五三掛龍也&吉澤閑也「期待を裏切らない自分たちでいたい」 ミュージカル「ダブリンの鐘つきカビ人間」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月29日

-今回から「カビ人間」がミュージカル版になって歌やダンスの要素が含まれますが、ミュージカル版ならではの面白さや発見はありましたか。 七五三掛 歌を通してカビ人間が思っていることや、昔はこういう子だったんだという背景が分かるので、やはり作品の … 続きを読む

「光る君へ」第二十五回「決意」まひろを物語の中心に立たせる道長との絆【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。6月23日に放送された第二十五回「決意」では、越前から都に戻った主人公・まひろ(吉高由里子)が藤原宣孝(佐々木蔵之介)の妻になることを決意する過程や、政務をおろそかにする一条天皇(塩野瑛久)に頭 … 続きを読む

ウエンツ瑛士「お芝居の力をまざまざと見せつけられている」 現代社会に問いかける物語「オーランド」で届ける演劇の魅力【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月28日

-具体的には、どんなところが好きなのですか。  演劇は、人の可能性を見に行くものだと思います。物語を見に行くというよりは、日常でわれわれが感じていることが舞台上でも同じようにつづられる、その瞬間を見に行く。それは決して劇的な物語である必要は … 続きを読む

全国の刑務所や少年院でも上映! ドキュメンタリー映画『おまえの親になったるで』 草刈健太郎さん「元犯罪者の更生は“誰かがやらなあかん”」【インタビュー】

映画2024年6月28日

-刑務所を出所した人の4割が5年以内に再び刑務所に戻るとも聞きます。草刈さんが “親”として愛情を注いでも、仕事に行かず逃亡したり、窃盗、薬物、詐欺などの犯罪に再び手を染める人も少なくありません。こうした支援を続けることは、実の親でも逃げて … 続きを読む

【週末映画コラム】若手監督たちの試金石『GEMNIBUS vol.1』/熊について考えるという意味ではタイムリーな『プロミスト・ランド』

映画2024年6月28日

『プロミスト・ランド』(6月29日公開)  マタギの伝統を受け継ぐ東北の山間の町。高校卒業後に家業の鶏舎を継いだ20歳の信行(杉田雷麟)は、閉鎖的な暮らしにうんざりしながらも流されるまま日々を過ごしていた。  ある日、役所から今年の熊狩りを … 続きを読む

Willfriends

page top