「この映画を見て、笑って元気づいていただけたら、最高にうれしい」「明日からしっかり生きようというパワーをくれる映画」松村克弥監督、北原里英『神さま待って!お花が咲くから』【インタビュー】

2024年2月5日 / 14:30

 小児がんを抱えながらも12年の生涯を明るく生きた森上翔華さんのエピソードを基に描いたヒューマンドラマ『神さま待って!お花が咲くから』が、2月2日から公開された。本作の松村克弥監督と、主人公を見守る小児科医の脇坂和美を演じた北原里英に話を聞いた。

(左から)北原里英、松村克弥監督 (C)エンタメOVO

-監督は、ここのところ『天心』(13)『ある町の高い煙突』(19)、それから今回の映画と、実話を基にしたものを撮っていますが、そうした映画を作る時の難しさや、気を付ける点などをお聞きしたいのですか。

 なるべく実話に即して作ろうとは毎回思っていますが、実話通りにいかないところを脚色で埋めていくのが、毎回苦労するというか工夫しているところです。ただ、今回の作品は、脚本を書いてくれたプロデューサーの渡辺(健一)さんが、翔華ちゃんのご両親や校長先生や担任の先生に何度もお話を聞きに行って、それをすごく広げて、深くしてくれたので、今回は、本当に脚本の力が大きかったです。渡辺さんが書いてくれた世界を壊さずに、どう描こうかということをすごく考えました。

-北原さんは、一見クールに見えるお医者さんだけど、実は違って、最後に本音が出てくる。本来は患者を救う立場のお医者さんが逆に翔華ちゃんに救われるみたいな部分もありましたが、最初に脚本を最初に読んだ時の印象はどんな感じでしたか。

 最初に脚本を読んだ時は、すごくいい話だなと思いました。もちろん泣きましたし、自分の役がすごく大事だと思ったので、この役を演じるんだと思ったら、とても緊張しました。映画の脚本ですけど、小説を読んだような重厚感というか、何てしっかりとした物語なんだと思って、これが映画になったらすごくすてきだろうなと思いました。

-実際に演じてみて、監督の演出も含めていかがでしたか。

 監督は、それほど細かく演出をされるタイプの方ではなく、すごく任せていただいたなと思っています。実際に演じてみて、自分の中でも、この役をしっかり演じ切れたら、かなり成長につながるだろうなと思っていたので、悔いなく演じられたのはすごくよかったです。今できる精いっぱいのものは出せたかなと。この映画を撮った時に監督に褒めていただけたことがすごく心に残っていて、短い撮影期間だったんですけど、とても印象深い映画になりました。

-監督は、先ほど脚本を壊さないようにとおっしゃいましたけど、今回演出をする上で、ほかに何か気を付けたことや心掛けたことはありましたか。

 『天心』や『ある町の高い煙突』では、ベテランの俳優さんたちと一緒にやっていて、こういう子どもさんたちが主役の映画というのは初めてだったので、どういうふうにやってこうかと思いました。今回はオーディションですてきな俳優さんや子役さんたちとも知り合えたので、クランクインをする前にみんなで集まって、いろいろと話し合ったりしました。僕は、俳優さんの最初のテンションを大切にしたいので、リハーサルはあまりやらないんですけど、今回は子役さんたちが相手で、彼らは経験も少ないので、そこは気を付けました。でも、あまり現場でいろいろと言っても仕方がないので、割と早めのテークでオッケーにして、本人が持っている子どもならではの生理や生き生きした素顔をつぶさないようにしました。

-翔華役の新倉聖菜さんはオーディションで選んだとのことですが。

 何を基準にして選んだかというと、昔ベテランの助監督さんから「オーディションで監督が選ぶコツは、お客さんが彼らと2時間付き合って見ていたいと思うかどうか。それを考えた方がいいよ」と言われました。聖菜ちゃんなら、僕もお客さんも2時間見ていられるタイプだと思いました。そうやって選ばせてもらいました。

-実際に演出してみていかがでしたか。

 すごく勘がいい子でよかったです。それに変な言い方ですけど、すごくかわいくてきれいなんですよ。だから見ていたいなと。それは結構大きかったです。笑顔も、ちょっと悩んでいる顔も、どれもかわいらしいんです。 そこにまたいとしさが湧くじゃないですか。この子がこの後亡くなっちゃうんだなって。僕はオーディションでそれを感じました。彼女も本当に頑張ってくれました。あとは、周りのいじめっ子役の子たちもみんな良かったです。だから北原さんと上村(佳里奈)さんの最後のシーンが僕は好きなんです。あのシーンも見どころなので、ぜひ見ていただきたいです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top