「ホラー映画ってこんなに疲れるんだと実感しました」「分からないことを楽しんでもらえたら」古川琴音、下津優太監督『みなに幸あれ』【インタビュー】

2024年1月18日 / 08:00

 看護学生の“孫”は、ひょんなことから田舎に住む祖父母に会いに行く。久しぶりの再会、家族水入らずの幸せな時間を過ごす。しかし、どこか違和感を覚える孫。祖父母の家には「何か」がいる。そしてある時から、人間の存在自体を揺るがすような根源的な恐怖が孫に迫ってくる…。下津優太監督による同名短編を基に、下津監督自ら商業映画初メガホンを取り、長編映画として完成させた『みなに幸あれ』が、1月19日から全国公開される。ホラー映画初挑戦となった孫役の古川琴音と、下津監督に話を聞いた。

(左から)下津優太監督、古川琴音 (C)エンタメOVO

ーとても不思議な感じがする映画でしたが、このアイデアはどこから得たのでしょうか。

下津 都市伝説のユーチューバーさんが、「地球上感情保存の法則というものがある」と言っていました。簡単に言いますと、地球上には幸せな人と不幸な人がいて、それを足し合わせるとゼロになるというものです。それを活用して、もしそれが本当であれば、意図的に不幸な人を作り出せば幸せを得ることができるということを軸に作っていった感じです。

ー古川さんは、今回がホラー初出演ということですが、最初に脚本を読んだ時の印象を聞かせてください。

古川 最初に台本を読んだ時は、「何て後味の悪い物語なんだろう」と思いました。でも、今まで見てきたホラーと比べても、何か違う怖さがあるなと。フィクションではあるんですが、物語の最初から最後まで、現実と完全に切り離された話ではないというのがにじみ出ていたので、そこの気持ち悪さが面白いなと思いました。

ー実際に演じてみていかがでしたか。

古川 ホラー映画って、こんなにも泣いて叫んで怒って逃げてみたいな感情が全部必要だったのかと気付いて、ホラー映画ってこんなに疲れるんだと実感しました。

ー演じる際に気を付けたことや難しかったことはありましたか。

古川 基本は普通の映画と一緒なんですけど、監督から「ホラー映画というのは、驚いている人の顔を見てお客さんが怖がるから、もうちょっと反応を大きくして」みたいなことは何回か言われました。でも、自然な反応も大切にされるので、そこのあんばいには気を使ったかなと。

ーホラーの時には、大体皆さん大げさに表現するというのはよく聞きますね。

下津 そうですね。僕は、映像と演技の掛け算かなと思っていて。それをやり過ぎると、ちょっと観客が引いちゃうので、僕の映画では映像はちょっと引き気味というか、客観的な方だと思うので、演技をやり過ぎぐらいでも、ちょうどいいのかなと思います。

ー監督から見た古川さんの演技は、いかがでしたか。

下津 古川さんで本当に良かったなという感じです。周りの役者さんが、あまり経験のない方たちだったので、 彼らとのコラボレーションというか、一緒に演じる上でも、とてもいいあんばいでやってくれましたし、それによって周りの人たちとの違和感や異質感が生かせました。ほぼ古川さんがずっと画面に映っていて、89分間を引っ張るわけですが、引っ張る魅力というのも、すごくあったと思います。

ー田舎の持つ違和感や恐怖みたいなことも描きたかったのでしょうか。

下津 この映画のテーマは、「誰かの不幸の上に、誰かの幸せが成り立っている」ということなので、これは田舎だけの物語ではなくて、世界中で起きている出来事というふうに描いているつもりです。なので、田舎に行って、風習がちょっと違っていても、都会にいても同じことが起きているということです。ただ『ミッドサマー』(19)などもそうですが、逃げられない感は都会よりも増しますね。都会だといろんな人がいるし、すぐに助けを求められますから。

ー古川さんは、田舎を舞台にした、プロの役者ではない方が多い、ちょっとドキュメンタリーぽい感じのする映画で芝居をすることに関してはいかがでしたか。

古川 すごくこの台本に合っていたというか、田舎で撮ることによって、自分自身もその世界に入れたなというのはありました。私も都会生まれの都会育ちなので、木の家の感じや、2階が暗くて光が入ってこない感じというのも、全て違和感として捉えることができました。それが、自分の恐怖心とかを膨らませる材料にもなったので、とても良かったなと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top