三上博史、「これはちょっとした事件になる」 誰も見たことのない寺山修司の世界を描き出す【インタビュー】

2023年12月9日 / 08:00

ーなるほど。今、寺山さんの作品を求めているのは若い方が多いと。

 そうです。もちろん、昔からの寺山さんのファンの方もいらっしゃるけれども、若い人が増えている。それも男女問わず。音楽から入る方もいらっしゃいますし、寺山写真館という写真集から入る方もいる。面白いなと思います。

ー興味深い話ですね。ところで、年の瀬も迫り、今作に向けて稽古がスタートしていると思いますが、改めて2023年を振り返ってみると、どんな1年でしたか。

 ちょこっとのお仕事と楽しいお仕事と…あとは何も変わらないですね(笑)。僕は、今、東京を離れて山に住んで、価値観の違う人たちと交流して暮らしているんですよ。それが面白い1年でした。今、東京が面白くなくなってきたでしょう? みんな苦しいだけで。「昔は」というフレーズは嫌いですが、その頃はもうちょっと刺激的だった。どうでもいい人がいっぱいいたように思います。でも、今はどうでもいい人は東京に住めない。東京は、きっちりお金を稼いで、きっちり生活している人じゃないと住めない街になりつつあるから、僕は今、ここにいる必要はないなと。別に畑仕事をしたいとか、そういうわけではないんです。ただ、東京には刺激を感じない。今は、山にいて、人間的なリズムを取り戻しています。

ー2024年の目標は?

 怠け者なのですが(笑)、もうちょっと作品などを皆さんに提出できたらなとは思っています。自分の居心地がいいことしかやっていないけれども、多少は無理をしたりしながらキャパを増やしたいです。

ーまずは、この作品からですね。

 この作品は本当に好きなことだけをやっている作品ですが(笑)。でも、これはすごいことになると、僕は予感しています。たかが演劇界ですが、これはちょっとした事件になるような気がします。僕が「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に出演したときも、そうした実感があったんですよ。それと同じ感覚があります。何が起こるか分からない。僕も探っているけれども、お客さんも探っている、プロデューサーも探っている。そんな中でこういうのが出てきたら、どうなるんだろうとワクワクしています。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 寺山修司没後40年記念/紀伊國屋ホール開場60周年記念公演「三上博史 歌劇‐私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない‐」は、2024年1月9日~14日に都内・紀伊國屋ホールで上演。アーカイブ配信も決定。

 

寺山修司没後40年記念/紀伊國屋ホール開場60周年記念公演「三上博史 歌劇‐私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない‐」

 

 

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  ―確かにその通りですね(笑)。  ただ、大半は史実通りですが、(小田)新之助(井之脇海)とふく(=うつせみ/小野花梨)ととよ坊の一家、序盤に登場した蔦重の恩人の花魁・朝顔(愛希れいか)など、一部に私が創作したオリジナルキャラもいます。と … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『栄光のバックホーム』(11月28日公開)  2013年のプロ野球ドラフト会議で指名され、鹿児島実業から阪神タイガースに入団した18歳の横田慎太郎(松谷鷹也)。誰もがその将来に大きな期待を寄せていたが、突然横田の目にボールが二重に見えるとい … 続きを読む

Willfriends

page top