山田裕貴 本多忠勝の最期に「僕が演じてきた忠勝の思いが伝わった」役を生きた長期の撮影【「どうする家康」インタビュー】

2023年11月19日 / 20:46

-「俺は認めん」というせりふは第44回にもありましたが、最初に登場したのは第1回で、そのうちラストのセリフは山田さんのアドリブだったそうですね。

 第1回の最後に家臣団が殿に詰め寄る場面で、台本には「…」しか書かれていなかったんですけど、いつまでたってもカットが掛からないので、思わず「俺は認めん」と言ってしまったんです。そうしたら、それが完成版で使われていて。殿(松本のこと)や(酒井忠次役の大森)南朋さんから、「あれ、狙ってたんでしょ?」と聞かれたんですけど、何の計算もなかったんです。でもそんなとき、「ちゃんと役を生きられているな」と思うんです。台本を超える瞬間というか、思ってもいなかったところでそういう瞬間が生まれるのが、お芝居の面白さだと思います。

-まさかそのアドリブで生まれた一言が最後に生きてくるとは。

 古沢(良太/脚本家)さんはそうやって、僕がやったことをちゃんと引き取り、「山田くんの忠勝はこうなんだね」と書き続けてくださるんです。叔父上(本多忠真/波岡一喜)の形見のひょうたんも、僕が希望してつけ始めたら、ひょうたんで酒を飲むト書きを加えてくださって。それは本当に、ありがたかったです。

-第44回では、忠勝が自分の肖像画を何度も描き直させる逸話も描かれていました。

 実は、クランクイン前に本多忠勝ゆかりの地を訪問したとき、案内していただいた岡崎の武将隊の方が「本多忠勝の肖像画は、本人が8回描き直させているんです。だから、本当は山田さんのように痩せた人だったのかもしれません」と教えてくださったことがあって。その話を聞いて、少しだけ本多忠勝を演じる自信を持つことができたんです。それまで僕も、多くの方が抱く肖像画のような屈強なイメージにとらわれていたところがあったんですけど、本当のところは分からない。そして、疑似的にでも体感できるのは、自分だけなのだから、自分が思う忠勝をやればいいんじゃないかと。そう気付かせてくださった武将隊の方には、ものすごく感謝しています。

-では、山田さんが忠勝を演じる上でこだわった部分は?

 忠勝といえば「剛」のイメージが強いですが、実はものすごく繊細で、いろんな人の気持ちを受けとめて戦っていたんじゃないかと思うんです。有名な鹿の角のかぶとは、戦で逃げる途中、道に迷ったとき、鹿が導いてくれたことから、「自分を守るのは鹿だ」と考えたためで、大きな数珠を体に掛けているのも、失った人や自分が斬った相手の思いを全部背負って戦うという意味だそうですから。だとすると、誰かのために涙を流すことも当たり前にできる繊細な人だったんじゃないのかなと。だから今思えば、自分が一言もしゃべらないシーンでも、殿を見つめる目、みたいな細かいところに、ものすごくこだわっていたような気がします。

-最後に、これまで本多忠勝を演じてきた中で、特に印象に残ったシーンを教えてください。

 まずひとつが、先ほどお話しした通り、僕の中で殿を認めた第2回の大樹寺のシーンです。そしてもう一つが、三方ヶ原合戦での叔父上(本多忠真)との別れのシーン(第18回)。あのシーンでは、演じる波岡(一喜)さんと2人で演技プランを提案し合い、「(数多の戦いでかすり傷ひとつ負わなかったと伝わる)忠勝の最初で最後の傷にしたいので、殴ってください」とお願いしたんです。そうしたら本番当日、波岡さんがさらに抱きしめる芝居を加えてきて。その瞬間、僕の頭の中に、演じてもいない幼少期の映像が流れ込んでくるような不思議な感覚になったんです。それはやっぱり、役を生きていないと達することのできなかった瞬間だし、僕はそれこそ、忠勝さんが見せてくれたんじゃないかと思っています。

(取材・文/井上健一)

「どうする家康」(C)エンタメOVO

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『栄光のバックホーム』(11月28日公開)  2013年のプロ野球ドラフト会議で指名され、鹿児島実業から阪神タイガースに入団した18歳の横田慎太郎(松谷鷹也)。誰もがその将来に大きな期待を寄せていたが、突然横田の目にボールが二重に見えるとい … 続きを読む

氷川きよし、復帰後初の座長公演に挑む「どの世代の方が見ても『そうだよね』と思っていただけるような舞台を作っていきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月29日

 氷川きよしが座長を務める「氷川きよし特別公演」が2026年1月31日に明治座で開幕する。本作は、氷川のヒット曲「白雲の城」をモチーフにした芝居と、劇場ならではの特別構成でお届けするコンサートの豪華2本立てで贈る公演。2022年の座長公演で … 続きを読む

岸井ゆきの「夫婦の“切実さ”が描かれている」宮沢氷魚「すごくやりがいがありました」すれ違っていく夫婦役で初共演『佐藤さんと佐藤さん』【インタビュー】

映画2025年11月28日

-結婚したサチとタモツのすれ違いが最初に垣間見えるのが、共通の友人の結婚式に1人で参加したサチが帰宅した後のシーンです。勉強しながら留守番していたタモツに、結婚式の様子を話したサチがトイレに行った後、何気なく「トイレットペーパーないよ」と声 … 続きを読む

28歳で亡くなった阪神タイガースの元選手の実話を映画化! 松谷鷹也「横田慎太郎さんのことを知っていただきたい」前田拳太郎「誰かの背中を押す作品になるはず」『栄光のバックホーム』【インタビュー】

映画2025年11月28日

-そんな親しい関係を築き上げたお二人に加え、WEBで公開されている本作のプロダクションノートを拝見すると、秋山監督をはじめとするスタッフの熱量もかなり高い現場だったようですね。 松谷 俳優がスタッフも兼任するのが秋山組の特徴で、「慎太郎さん … 続きを読む

Willfriends

page top