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NHKで好評放送中の大河ドラマ「どうする家康」。11月12日放送の第43回「関ヶ原の戦い」では、主人公・徳川家康(松本潤)率いる東軍と石田三成(中村七之助)率いる西軍が、天下分け目の“関ヶ原の戦い”で激突した。
両軍を率いる家康、三成が繰り広げる駆け引きを軸に、参戦した小早川秀秋(嘉島陸)、毛利輝元(吹越満)といった大名たちの思惑が交錯するドラマは見応え十分。総勢15万の軍勢が激突した迫力の合戦シーンと共に描き切り、大河ドラマの面目躍如だった。
その一方で、戦場のドラマに匹敵する存在感を発揮したのが、遠く離れた大坂城で合戦の行方を見守る茶々(北川景子)だ。
まずは序盤、息子・豊臣秀頼(作間龍斗)の出陣を求める三成からの要請に対して、「治部から矢のような催促が来ておる。私は今ぞその時だと思うが」と前のめりな姿勢を見せる。それに対して、西軍総大将の毛利輝元が「それがし、しかと戦の動きを見定めておりますゆえ、お任せくださいますよう」と水を差すと、途端に低い声で「そなたが総大将の器であるか否かが問われておる。機を見誤るなよ」と詰め寄り、ことの黒幕にふさわしい貫禄あるたたずまいを披露。
続いて、阿茶局(松本若菜)が面会に訪れると、「徳川殿のご側室が、このようなところに乗り込んでこられるとは、なんと豪胆な。毛利に見つかったら、捕まってしまいますぞ」と一見、気遣うような言葉を掛ける。ところが阿茶が「わが殿は、信用できるお方。秀頼さまを大切にお守りいたしますので、どうぞ、お身を、徳川にお預けくださいませ」といんぎん無礼に迫ると、たちまち「それは、過ぎたるものいいじゃ。身の程をわきまえよ!」と激怒する。
そして最後は、西軍敗北の報告を受けると、「三成じゃ。やつがしくじりおったのじゃ。あの能なしが!」と言い訳する輝元に黙って近寄り、強烈な平手打ち。さらに「そなたを頼った、私の過ちよ。去れ!」と一喝してみせた。
表面的には冷静さを装いつつも、度々内に秘めた激しい感情がほとばしる茶々の姿は迫力満点。それはまるで、茶々が遠く離れた戦場の家康と直接対峙(たいじ)しているかのようでもあった。茶々との対面を終えて自室に戻った阿茶局が、思わず「おっかないおなごだわ」と本音を漏らす場面もあったが、その言葉は視聴者の気持ちをも代弁していたに違いない。余談ながら、筆者の中ではその迫力あるたたずまいが、若い頃の名取裕子に重なった。
それにしても、前半、家康にほのかな思いを寄せていたお市を品よく演じていた役者と同じ人物とは思えない北川景子の演技の幅広さには、驚くばかりだ。最初にオファーを受けた時点で二役を演じることが決まっていたそうだが、同じ作品で主人公に対する向き合い方が180度異なる役を演じるに当たって、どう気持ちを切り替えたのか、聞いてみたくなる。
関ヶ原の戦いが決着し、これから大坂の陣に向けて、茶々と家康はさらに激しく火花を散らすに違いない。すっかり“狸オヤジ”の呼び名が板についた家康を演じる松本と、貫禄たっぷりな茶々役の北川が、どんなぶつかり合いを見せてくれるのか、楽しみだ。
(井上健一)