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若かりし頃は“トレンディ俳優”という役柄を担っているところもあったりしましたから、イメージで見られることもありましたし、「本当の自分はそうじゃないんだ」と思うこともありました。それは後日、過ぎた日を振り返った時に感じられるものだと思いますが。
G2さん、そして出演者、スタッフ全員が、緻密に組み立てていくお芝居になっています。見どころは、やっぱりサム・クレメンズという人間を中心に起きるそのアンサンブルです。多重四重奏とは言いませんが、そんな感覚の世界を楽しんでいただけたらうれしいです。ピアノ1台で奏でられている音楽もものすごく美しいので、そこもぜひご注目ください。ミュージカルとはまた違う、今まで見たことがない演劇体験をしていただけるのではないかなと思います。
僕は、舞台俳優として大学時代に英語劇でスタートし、その後に舞台、そして映画デビューをしていますので、舞台は自分の原点で、一生取り組んでいきたいことです。サム・クレメンズという人も実業家で、出版社を作ったり、さまざまな会社に出資したり、世界中を旅しながら旅行記を書いたりしている人なので、自分の中ではそうした彼の姿にはとても共感できます。自分も舞台俳優として、一生俳優でありたいという気持ちが中核にあり、その気持ちが映画を作ったり、映画祭を開催したりすることに枝分かれしているという感覚です。もちろん映像も大好きですし、映像作品に携わることもずっと続けていこうと思っていますが、原点は舞台の仕事なのだと思います。
もちろんやってみたいという思いもありますが、舞台の演出家やプロデューサーの方を見ていると、俳優の集中力以上にものすごく大変な作業をされていらっしゃるので(苦笑)。本当にあらゆることをやらなければいけないので、大変なことも多いでしょうし、尊敬しています。もちろん、1つのものを積み上げて、作品を作っていくことに興味はありますが。
人と人がつながれない状況になった時、演劇は何とも脆弱(ぜいじゃく)なものなんだなということを痛感しました。人が集えなければ、何もできないんですよね。一方で、だからこそ、今やることに貴重な意味があるとも感じました。今後、ますますバーチャルやオンラインでできることが増えていくと思いますし、利便性を考えればそれもまた良いことだと思いますが、だからこそ余計に、同じ空間で、同じものを分かち合い、同じ気持ちを味わい、そして笑ったり、触れたりすることがどれほど人間らしくて、大切なことなのかを感じました。そうしたものが凝縮されたのが、演劇体験にあるような気がしているので、これからどんどんかけがえのないものになるのかなと思っています。そう考えると、本当は今のチケット代の10倍くらいの値段の価値があるのかもしれないと思います(笑)。
人が集って一緒に息を飲み、呼吸をし、笑い、泣き、拍手をする。そういう体験ができることです。例えば、帝国劇場のような大劇場だと、開幕前に2千人の熱気で緞帳(どんちょう)が押されるんですよ。空気圧でそうなるのですが、お客さまの舞台に対する気持ちが乗って、緞帳のラインをグッと(ステージ側に)押しているんだと思うと、それを見るだけでゾクゾクします。舞台上に立って、何かを一緒に生み出し、分かち合う感覚を共有できた時は、ほかにはない体験ができます。
映画というものは、カット割りを考えながら撮影するなどして、緻密に設計して組み立てたものが画面上に出た時に、その画面から派生してお客さまに響く。それもすごいことだなと僕は思います。しかも、それは再現性を持っている。その時代の空気や考え方、その時にいる人間の年齢や俳優のお芝居を真空パックにして何十年も何百年も残るというのは、大きな魅力だと思います。映画は、100年後にも撮影当時の空気感と同じものを見ることができるんです。演劇は逆にその時だけというはかなさがある。もちろんDVDになったり、配信があったりもしますが、劇場という場で感じた体感は、どうやっても再現されないので、そこが魅力です。それぞれに魅力があると思います。
(取材・文/嶋田真己)
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