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NHKで好評放送中の連続テレビ小説「らんまん」。“日本の植物分類学の父”牧野富太郎博士をモデルに、愛する植物のため、明治から昭和へと激動の時代をいちずに突き進む主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の波瀾(はらん)万丈な生涯を描く物語だ。物語は終盤に差し掛かりつつあるが、全話の執筆を終えた脚本家の長田育恵が、作品に込めた思いや創作の舞台裏を語ってくれた。
ほっとした、の一言に尽きます。チームの皆さんの思いを裏切ることなく、物語を最後まで無事に紡ぐことができたのではないかと、胸をなでおろしているところです。
これまで、連続ドラマは5話までしか書いたことがなかったので、一度始まったら最後まで降りられない朝ドラは、ひたすら締め切りに追われ、視聴者からさまざまな反応が返って来るプレッシャーが常にありました。とはいえ、執筆に取り組むうち、私自身、登場人物を生み出し、その行方を考えることが何より好きなので、それを丁寧にやれるこの仕事は、自分に向いているのではないかと感じていきました。おかげで、他では得られない貴重な経験ができました。
初めから牧野富太郎さんの偉人伝にするつもりはなく、槙野万太郎という、草花を生涯愛した人物を広場に見立て、その下に集まる人々や人間関係、ネットワーク、それぞれの人生が咲き誇るさまを描こうと考えていました。そういう意味では、富太郎さんがモデルではありますが、全く違う人物像になっています。