映画『東京リベンジャーズ』シリーズやドラマ「わたしのお嫁くん」など、数々のドラマ、映画で活躍する高杉真宙が、9月13日から上演される舞台「ロミオとジュリエット」でロミオ役に挑む。高杉に本作への意気込みや役作りについてなどを聞いた。
ー出演が決まったときのコメントで「さまざまな方達が演じてきた、さまざまな方達が知っている物語」と本作を評していましたが、改めて、出演が決まったときの心境を聞かせてください。
演劇をやる上で目標にしていたものの一つで、いつかはと思っていた作品です。有名な演劇作品はいくつもありますが、その中でも、この作品は特に多くの人が知っている作品だと思いますし、そうした作品のお話をいただけてうれしかったです。それから、本来、演劇には年齢はあまり関係ないものですが、やっぱり年齢に合った役をやっていくべきなのかなとは少なからず思っています。そういう意味では、ロミオというかなり若い人物の役を今いただけたことはとても幸運だったと思います。
ーロミオという人物については、どう感じていますか。
シェークスピアの作品もそうですし、僕が以前に出演した「カリギュラ」もそうですが、古典作品には“理不尽と戦う人たち”が出てきます。だから、「神とはなんなのか」と考え、「月が欲しい」と言い始めるんだと思います(笑)。理不尽と戦わないといけないですから。ですが、それが彼らを主人公たらしめているとも思います。そう考えると、ロミオは、“理不尽と戦うことができなかった人”。それが若さゆえのことなのかは分かりませんが、彼は“できなかった”んです。僕はそこに共感しますし、そんなロミオが好きです。
―そんなロミオをどう演じようと考えていますか。
僕なりにまっすぐ演じようと思います。ドラマや映画には「映像のうそ」というのが少なからずあります。できないことをできるように見せることができるんです。それは、そう見せることが芝居の中で重要なことだからですが、舞台ではできることしかできない。誤魔化しようがないですし、できることをできるだけやるしかないんです。なので、まっすぐに演じられたらいいなと思います。
―本作は、悲劇的な結末を迎えるラブストーリーですが、ラブストーリーを演じる上で意識していることはありますか。
お相手の方とのコミュニケーションです。ラブストーリーは特に、お相手の方と2人のシーンが多くなると思います。そうなったときに、コミュニケーションを取ることで、役としても役以外のところでもカバーし合えるのかなと思います。ラブストーリーって、絶対に2人の間に何かが起こるわけですから、きついことも多いんですよ。僕にできることなんて微々たるものだとは思いますが、役以外のところで少しでもつらくなくなればいいなと思います。
―高杉さんは、役を引きずることはあるんですか。
僕はないです。やはり、お芝居ですから。それに、役の上で何か嫌なことがあっても、それを引きずってピリピリしていたら周りの人もきっと嫌な気分になると思うので、そうならないように生きていこうと極力、気を付けています。
―ジュリエット役の藤野涼子さんの印象は?
すごく優しい雰囲気をまとった方だなと感じました。落ち着きがあって安心します。(取材当時)1度だけ読み合わせをさせていただいたのですが、そのときにどの方とも違う藤野さんならではのリズムがあって、それがすごく藤野さんとジュリエットの魅力を引き立てていらっしゃるなという印象がありました。なんとも表現しづらいのですが、どの人とも違うリズムなのに、せりふのリズムを崩しているわけでもないんですよ。僕の勝手なイメージですが、こうした古典作品の場合、伝統的な話し方というのがあり、それをすることによって、リズムにとらわれずに気持ちよく話すことができるんですが、藤野さんはその伝統的な話し方にもとらわれていないんです。すごく不思議で、うらやましいなと思いました。
―昨年は、舞台「ライフ・イン・ザ・シアター」で二人芝居という濃密な経験もしましたが、そうした作品を経て、自分の中の成長を感じていますか。
「ライフ・イン・ザ・シアター」は、これまでのどのお芝居よりも純粋に大切にしたいなと思っている経験です。本当にたくさんのものをもらったので、どの作品に対しても、おそらく生きるということに対しても、大きな実りとなるものをもらっていると思います。ただ、それが経験値としてどのくらい僕の中で積み上がっていて、それを僕自身がどう生かすことができるのかというのは、全く分かりません。一つ言えるのは、いつもならば、舞台に入るときは、“丸腰で、僕は何も武器を持っていない”という感覚があるのですが、今回に限っては、気持ちとしては“僕は何かを持っているんだ”という気持ちで(稽古に)入れると思います。
―それはすごく大きな経験ですね。では、ロミオは若さゆえに悲劇的な結末へと向かっていってしまいますが、高杉さんが若かりし頃、若さゆえにしてしまった失敗はありますか。
若さゆえなのかは分からないですが、寝坊がひどかったです(苦笑)。10代の頃は常に眠くて…。歳を重ねると起きられるようになってきたのですが、本当にだめでした。当時、僕は事務所の寮で暮らしていたのですが、僕の部屋には通路に面した窓があったんですよ。寮のみんなが学校に行くタイミングで窓を「コンコン」とノックしてくれて、それでやっと起き上がって、朝ごはんを食べていました。いろいろと試したのですが、窓をノックされるのが1番、起きられたんです。あとは、携帯の着信。着信も絶対に起きられます(笑)。
―2024年の大河ドラマ「光る君へ」への出演も決まっているなど、今作以外にも出演作が相次いでいます。高杉さんが、作品に向かうときは、どんなことをモチベーションにしていますか。
どのくらい作品と役を愛せるかじゃないかなと思います。どの作品にも愛を持って接することで作品をより好きになるので、より良いものを作れると思います。そうすることで、現場の人たちとも打ち解けて、もっともっと好きになる。もちろん、逆に現場を好きになって作品を好きになるという、順序が違う場合もありますが、いずれにしても作品や役を好きになるというのが僕の1番の原動力です。
「ロミオとジュリエット」は、9月13日~24日に都内・有楽町よみうりホールほか、大阪、富山、愛知、福岡、仙台で上演。