山田杏奈「凛は、過酷な環境でも生きることをやめようとしない人」さとり世代に通じるたくましい主人公役に込めた思い『山女』【インタビュー】

2023年6月29日 / 10:00

 18世紀末、大飢饉(ききん)に襲われた東北の寒村。先代の罪を負った家の娘・凛は、人々からさげすまれながらもたくましく生きていた。だがある日、父親が起こした事件の罪をかぶり、村を去ることに。行き場を失い、禁じられていた山奥の森に足を踏み入れたことで、凛の運命は大きく動き出す…。6月30日公開の『山女』は、柳田國男の名著『遠野物語』に着想を得て、閉鎖的な村社会で生きる女性・凛の生きざまを通して、今の時代にも通じる「人間らしさ」を問う物語だ。主人公・凛役で強い印象を残すのが、『樹海村』(21)、『ひらいて』(21)、「17才の帝国」(22)などで存在感を発揮してきた山田杏奈。撮影の舞台裏や凛役に込めた思いを語ってくれた。

山田杏奈(HM:菅長ふみ(Lila)/ST:中井彩乃) (C)エンタメOVO

-凛の強くたくましい生きざまが鮮烈な印象を残す作品でした。オファーを受けたときに山田さんが感じた作品の魅力は?

 今も昔も変わらない村社会での人々の生きざまが、生々しく描かれているのが面白いと思いました。もともと村社会の話は好きだったんです。宗教的なことを絡めつつ、閉鎖的な環境で、人間の愚かさみたいなものを描いた作品に引かれるので。漫画では『ガンニバル』みたいな作品も好きです。多分、私にとって非現実だからなのだと思います。

-凛の生きざまについてはどう思いますか。

 凛は、冷害による食糧難の中、自分がやったわけでもない先祖の罪を背負わされ、同じ村の人たちからもさげすまれながら生きています。そんな過酷な環境でも強く見えるのは、彼女自身の生命力や打たれ強さのたまものだと思います。根本的な意味で諦めないというか、生きることをやめようとしない人なんですよね。でなければ、あの中で生きていくのはかなり大変。ただその分、映画の真ん中にいるのにふさわしいキャラクターとして演じるにはどうしたらいいのか、ものすごく考えました。

-役作りはどのように?

 本当は山の中で暮らせば一番いいんですけど、さすがにそれは無理なので、髪をバサバサにしたり、リップを塗るのを控えたり、細かいことから近づけていきました。山の中で撮影しているうちに、爪が汚れていったりするのも、凛に少しずつ近づけている気がしてうれしかったです。そういう意味では、撮影で1カ月間、山形に滞在していたことも大きかったかもしれません。

-方言はいかがでしたか。

 方言を覚えるのは大変だったのですが、普段、東京で暮らしている私が、いきなり山形に行ってお芝居しなければならなかったので、気持ちを切り替える上ではすごく助けられました。せりふが標準語のままだったら、あんなにスムーズに切り替えられなかったと思います。

-アニャ・テイラー=ジョイ主演の『ウィッチ』(15)の世界観も参考にしたそうですね。

 アニャ・テイラー=ジョイさんが大好きで、彼女が主演している『クイーンズ・ギャンビット』(20)の後にたまたま見たのが、『ウィッチ』だったんです。そうしたら、虐げられながら生きる主人公が凛に似ていて。にもかかわらず、すごく魅力的だったんです。だから、真ん中にいる女性が、打たれ弱いだけだと見るに耐えないものになると感じて、「こういう女性であってほしい」という私の願望も込みで、お芝居の参考にさせていただきました。凛について「強さがありますね」と言っていただけることが多いのは、それがうまくいったおかげかもしれません。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

小瀧望「ファンの皆さまの声に応え続けたい」 舞台「ロックンロール」では「僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月30日

 小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守 … 続きを読む

佐津川愛美「酒井監督に惚れました(笑)」念願だった酒井麻衣監督との初タッグ『時給三〇〇円の死神』【インタビュー】

映画2026年9月30日

 10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#受験競争だけではない韓国の教育問題、「鉄槌教師」が問う教師の役割

2026年9月29日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

鈴鹿央士「絶対に映画館で見て損はさせない映画になっています」『藁にもすがる獣たち』【インタビュー】

映画2026年9月29日

 出会うはずのなかった登場人物たちが、1億円をきっかけに複雑に絡み合いながら“金の獣”と化していく数奇な運命を描いた、曽根圭介の同名小説を城定秀夫監督が実写映画化した『藁にもすがる獣たち』が全国公開中。本作で、主人公のチャンネル登録者数“2 … 続きを読む

向井理、演出家・倉持裕と再びタッグ 6人で描き出す会話劇に「戻ってきたな。こういうことがやりたかった」 M&Oplaysプロデュース「ブランク」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月29日

 向井理が主演するM&Oplaysプロデュース「ブランク」が、10月3日から開幕する。本作は、2023年に本多劇場で上演した「リムジン」に続き、向井と倉持裕が再びタッグを組んで贈る新作公演。ある弁護士事務所を舞台に、そこで繰り広げら … 続きを読む

page top