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大貫勇輔&小野田龍之介&木村達成、ミュージカル「マチルダ」トリプルキャストで挑む憎まれ役【インタビュー】

 英国ロイヤル・シェークスピア・カンパニーが2010年に制作し、瞬く間にウエストエンドで最も人気のある作品となったミュージカル「マチルダ」が、日本オリジナルキャストで初上演される。本作は、高い知能と豊かな想像力を持った少女・マチルダが、持ち前の頭脳と不思議な力で理不尽な仕打ちをする両親や校長先生たちに立ち向かっていく姿を描く。怪力の持ち主で、暴力で学校を支配しているミス・トランチブルをトリプルキャストで演じる大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成に本作の見どころを聞いた。 

(左から)大貫勇輔、小野田龍之介、木村達成 (ヘアメーク:エムドルフィン) (C)エンタメOVO

-3月22日の開幕に向け、現在稽古中だと思いますが、稽古をしていて感じていることを教えてください。

大貫 トランチブルは、情緒がおかしいところがあり、理解に苦しむところも多いのですが、稽古を重ねる中で、いい意味で奇妙なせりふに面白さを感じています。本当によくできた、ミュージカルらしいミュージカルなので、稽古段階から、これは面白い作品になると確信しています。

小野田 とにかく稽古の進むスピードが早いので、われわれ日本チームは海外のクリエーティブチームに付いていくのに必死です。全ての音や動きが厳密に決まっているので、それを的確にやらなければいけないのは大変ですが、バチッとハマったときは言葉に表せないぐらいの高揚感とワクワク感が作品に生まれることを感じました。こうした高揚感の連続がこの作品の感動や衝撃を生み出していることをひしひしと感じながら、日々、稽古に臨んでいます。

木村 僕は、久しぶりのミュージカルということもあり、「こんなに覚えることがあったっけ?」と頭をフル回転しながら取り組んでいます。なので、いっぱいいっぱいです(笑)。マチルダ役の子どもたちはものすごい熱量で臨んでいるので、僕たち大人が負けられないと思いながら稽古に励んでいます。

-現在、演じる上で意識していることは?

 大貫 クリエーティブスタッフから、トランチブル校長は言葉にすごくこだわりがあって、かみ締めながら話していると演出を受けたので、言葉の持つパワーを大切にしたいと思っています。この作品は、ロイヤル・シェークスピア・カンパニーが制作した作品だけに、やはり言葉というのはとても重要なのだと思います。シェークスピアのお芝居のせりふって、すごく心地いいじゃないですか。あのニュアンスが出せたらいいなと思っています。

小野田 この作品に限ったことではありませんが、それぞれの役をリアルに生きるということは第一に考えているところです。それから、この作品の原作は児童文学なのですが、本には挿絵があって、それらの挿絵はマチルダから見た大人の姿が描かれています。とても劇画的に描かれているのですが、その挿絵を大事に、そして言葉回しも動きもとにかく大胆に動きたいと思います。マチルダから見たトランチブルはすごくヒステリックで非常に威圧感のある人物だと思いますが、そうしたトランチブルを三者三様に作っていけたら面白いと思っています。

木村 僕はまだ現時点では形にとらわれているので、まずはその形が決まらないとかなとは思います。ただ、トランチブルの姿勢の保ち方や子どもたちに対するフォーカスの当て方はつねに頭の中に置いて演じるようにしています。何にせよ、お客さまからも子どもたちからもどう見られるかが大切だと思うので、どう見られているのかを意識しながら演じたいと思います。

-二枚目の役やヒーロー的な役を演じることも多いと思いますが、今回は主人公に敵対する憎まれ役になります。そうした役どころを演じる面白さはどんなところにありますか。

大貫 これまでミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の死のダンサーや、ミュージカル「ピーター・パン」のフック船長、舞台「ねじまき鳥のクロニクル」の綿谷ノボルなど、悪い役を演じてきてはいますが、今回は初めて尽くしです。口を開けば悪口しか言わないので(笑)。チャレンジングな舞台になっています。日々、新しい自分と出会っているような感覚です。

小野田 僕は10代後半から20代前半の頃は、ヒールや奇抜な役を演じることが多かったんですよ。なので、久しぶりにこうした役が演じられるとワクワクしています。ただ、トランチブルは言葉遣いがとにかく悪い。この令和の時代に「このウジ虫」とか「ならず者」と人に向かって言うんです。そうした言葉が普段も出てきそうになるので、それは今、困っているところです。

大貫 でも、(小野田は)まさにトランチブルになっているよね。あまり日常と変わらないといったら語弊があるかもしれないけど(笑)。

小野田 そんなことはないですよ。お二人に比べたら僕は存在感も薄いですし、本当にシャイな俳優なんで、今、大胆に演じるのに精いっぱいです(笑)。

木村 僕は「卒業タイムリミット」というドラマで学校の先生役はやったことがあるんですよ。そのときも“ギチギチ”なシーンがあったのですが。

小野田 “ギチギチ”というのは、トランチブルの最上級のお仕置きなのですが、じゃあ、やっていることは変わらないんだ(笑)?

木村 そのときとは、性別が違うというのが大きいですね。それから、体格。トランチブルは、ハンマー投げの元選手で、スポーツ万能なので、自分の動きにもそうしたスパイスが加わればより面白くなるのかなと思っています。ただ、最近、全然運動をしていないので、すでに体がバキバキで、膝が笑っちゃうんですよ。毎朝、起きるのが怖いんです(笑)。運動をしなければいけないなと思っているところです。

-ビジュアルもインパクトがありますが、実際に扮装(ふんそう)をした感想は?

大貫 あんなに大きなおできをつけたこともなかったですし、太い眉毛で、不細工に見えるようにメークをするというのも初めてだったので、新鮮な写真が撮れたと思います。小野田さんは、特に似合っていましたね(笑)。

小野田 はい、僕は撮影のときから何の違和感もなかったですよ(笑)。あの衣裳を着ると、一気に役になれるエネルギーがあるんですよ。ウィッグもメークも含めて、あそこまで変身できると、役に入り込めます。扮装の力は偉大だなと感じました。

木村 おできの場所も少しずつ違うんですよ。僕たち3人も違いますが、世界各国、演じる俳優さんの骨格によって、全部位置を変えているそうです。眉毛をつなげるかどうするかも違います。それだけこだわりがあるんだなと感じました。

(取材・文・写真/嶋田真己)

Daiwa House presentsミュージカル「マチルダ」

 ミュージカル「マチルダ」は、3月25日~5月6日に都内・東急シアターオーブ(3月22日~24日はプレビュー公演)、5月28日~6月4日に大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演。公式サイト

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