松本若菜「ただただ、1人の女性を生きたいという思い」“松本劇場”から一転、心優しき骨髄移植のドナー役『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』【インタビュー】

2023年2月13日 / 14:58

-その真っすぐな芝居が、かえって新鮮な印象でした。ところで、企画・原案・主演を担当した樋口さんの本作に懸ける思いについては、どう受け止めましたか。

 初めてお会いしたときから、ずっと感情が高ぶっているんです。「この映画を作りたい」という悲願が実現するということもあるんでしょうけど、「今日があるのも、ドナーの方のおかげ」という感じで、全てに対して感謝している方で。実際に生死の境をさまよう経験をしたからこそ、そういう気持ちを人一倍強く持っていらっしゃるのかなと。現場でも本番中なのに、モニターを見ながらおえつする樋口さんの声が聞こえてきたりして…。やっぱり想像するんでしょうね。自分のドナーの方が、もしかしたらこんな思いをしていたのかもって。それを見て、胸がいっぱいになりました。

-この作品を経験して、骨髄バンクやドナー登録に対する思いに変化はありましたか。

 この物語には、樋口さんの気持ちが強く反映されていて、樋口さんも会うことができないドナーの方に対する感謝や、骨髄提供を受けて元気になった人たちの気持ちを代弁するような映画です。でも、現実にはうまくいかず、助からなかった命もたくさんあるはずなんですよね。だから、そういう人たちや家族の方々の思いもしっかりと刻み込んで、伝えていかないといけないのかなと。伝え方がすごく難しいんですけど、そういう気持ちは忘れずに持ち続けていたいと思っています。

-松本さんご自身、こういった社会貢献についてはどう考えていますか。

 以前、『ケアニン~こころに咲く花~』(20)という高齢者介護を題材にした映画に出演したことがあるんですけど、それも「介護職のマイナスイメージを払拭したい」という思いで製作された作品でした。実際にご覧になった方から、「これを見て、介護の試験頑張ってきます」という言葉を頂くと、後押しになったのかなと思いますし、こういう作品は各地でロングラン上映されるので、そのたびに「知らなかった」「もう一回見たい」というお話を聞くことも多いんです。そういう意味で、表現を通していろんなことを想像してもらう職業の私たちにとっては、それが社会貢献の一つになっていると信じたいんですよね。

-私自身も骨髄バンクにドナー登録していますが、この映画で初めて知ることがたくさんありました。そんなふうに社会的に意義のあることを広く知ってもらえるのも、映画の価値の一つですね。

 そう信じたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2022「みんな生きている 二つ目の誕生日」製作プロジェクト

  • 1
  • 2
 

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】『六人の嘘つきな大学生』/『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)

映画2024年11月22日

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)  真面目な税務署員の熊沢二郎(内野聖陽)は、天才詐欺師の氷室マコト(岡田将生)の巧妙な詐欺に引っかかり大金をだまし取られてしまう。  熊沢は、親友で刑事の八木(皆川猿時)の … 続きを読む

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

-なるほど。では、公演が12月ということで、2024年の振り返りをお願いします。  今年は自分で掲げた目標に対しての成果も感じることができたので、充実した1年でした。これまではどこかで「やらされている」という感覚があって、自分の意志でできた … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

  Q:合格に向けて、どのように勉強されたか教えてください。 早川 中3の2月に、予備試験を目指すぞって決めてからは、興味の赴くままがむしゃらに勉強してました。平日は、学校から帰ってきて、先ほどお話しした「伊藤塾」のオンライン授業を夜10時 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

-お2人は今回初共演となりますが、現場での様子はいかがでしたか。 八村 「シェアハウス対ユウ」という構図がある中で、共演者の方々とどういう距離感で接すればいいのか、だいぶ悩みました。でも僕は、役のために距離を取ったりすることが苦手なんです。 … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

Willfriends

page top