北村有起哉「探偵は“時代を映す鏡”」 令和の名優が初の探偵役で目指したもの『終末の探偵』【インタビュー】

2022年12月15日 / 12:00

-劇中には激しいアクションシーンもありましたが、いかがでしたか。

 僕は普段から鍛えているわけではないので、体にむち打ってやりました(笑)。ただ今回は、アクションシーンになった途端、水を得た魚のようにかっこよく動き回るのも違うと思ったので、それでよかったのかなと。

-というと?

 実は今回、台本の決定稿が上がる前に「泥くさいアクション」ということが決まっていたんです。けんかに強いわけではないけど、決して諦めない。相手のパンチをシュッとかわして、カウンターでパーンと倒すのではなく、急所を狙ったりして、相手が最も嫌がるやり方をする厄介なやつ。そういうイメージのアクションを、アクション監督の園村(健介)さんが作ってくれていたので、すごくいいガイドになりました。

-確かに、新次郎の必死さが伝わるアクションでした。ところで、先ほど「社会性がある作品」とおっしゃっていたように、本作では外国人労働者の問題なども扱っています。エンターテインメントと社会性の両立についてはどう考えていますか。

 何も知らずにやって、「そんなことがあったんだ」と作品を通して知る方法もありますが、やっぱり最低限知っておいた方がいいものはあります。例えば、以前、トランスジェンダーの役をやらせてもらったことがありますが、昭和の時代だったら、もっとオーバーに「やだー!」とかやっていたのかもしれません。でも、今の時代にそんなことをやるわけにはいかない。そのときも、「台本通りにやると、誤解されるのでは…?」と感じたことについては、僕の方から芝居を提案させてもらった部分もあります。だから、ジェンダーの問題も含め、世界がどう動いているのかをきちんと知っておくことは大切じゃないのかなと。

-なるほど。

 しかも、表面的な部分だけではなく、描かれていない心情みたいなものを提示するのも、僕に求められている役割だと思っています。「そこまで掘り下げてくれるんだ」と思わせてこそ、次の仕事につながるんじゃないのかなと。そういうことを考えるには、自分なりにアンテナを張っておくことが必要。だから、ただ単に「せりふを覚えて、芝居をして…」というわけにはいきませんよね。

-北村さんが活躍している理由の一端が分かった気がします。

 僕自身、勉強不足な部分はまだまだたくさんあります。でも、なるべく世の中とつながっているようにしたい。「なぜ今、この時代に探偵を?」と聞かれたとき、「僕なりにこういう考えで取り組ませてもらいました」と、きちんと答えられるようにしておきたいですから。ハリウッドを見ていると、子役ですら自分の考えや作品のテーマをはっきり語っていて、すごいですよね。その辺をオブラートに包みがちな日本とは国民性の違いがあるにしても、やっぱり普段の心構えが大切なんじゃないかなと。僕ももういい年ですし、そのぐらいのことはきちんとできるようにしたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2022「終末の探偵」製作委員会

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山下リオ「それぞれの愛の形を、まざまざと見せつけられるような映画になっていると思います」『遺愛』【インタビュー】

映画2026年6月30日

-「愛か呪いか」が、この映画のキャッチコピーになっていますが、それについて、演じながらどのように感じましたか。  本当にその通りだと思います。愛とか呪いとか、一応名前は付いていますけど、それって、立体造形にしたら同じものができる可能性がある … 続きを読む

塩野瑛久「中島健人さんへのリスペクトがさらに増しました」ラブコメディで初共演『ラブ≠コメディ』【インタビュー】

映画2026年6月29日

-劇中では、麗司や颯真が人や作品との出会いを経て成長していく姿が描かれています。俳優として数々の出会いを経験してきた塩野さんにとって、最近ではNHKの大河ドラマ「光る君へ」(24)への出演も大きな出会いだったと思います。放送から2年がたち、 … 続きを読む

横山裕「人間ドラマが色濃く描かれていて、物語に一気に引き込まれる」 関水渚「横山さんが演じる磯貝さんとの掛け合いの面白さを楽しんで」 水ドラ★イレブン「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」【インタビュー】

ドラマ2026年6月29日

  -これからの暑い季節の撮影で大変なことも多いと思いますが、暑い中での撮影で心がけていることはありますか。 横山 10年前にも同じスタッフさんと一緒にドラマを作ったのですが、そのときはスーツで。それもめちゃくちゃ大変だったんですが、今回は … 続きを読む

藤井流星「コメディーがやりたい」 西田征史と6年ぶりのタッグで挑むROLL((CAKE))TIME【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年6月27日

 藤井流星が主演を務める舞台、ROLL⦅CAKE⦆TIMEが7月6日から上演される。本作は、藤井が脚本・演出の西田征史と2020年のドラマ&舞台「正しいロックバンドの作り方」以来6年ぶりにタッグを組む、完全オリジナルのハートフルサスペンスコ … 続きを読む

【映画コラム】『Michael/マイケル』から、マイケル・ジャクソンのMVを振り返る

映画2026年6月26日

 「スリラー」以降のマイケルのMVのキャリアは、「映画監督と組んで映像表現の限界を押し広げた歴史」そのものだった。  「今夜はビート・イット」(83)の監督はボブ・ジラルディ。本物のギャングたちが撮影に参加し、『ウエスト・サイド物語』(61 … 続きを読む

page top