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白洲迅「この家族がどうやって壁を乗り越えていくのかを見ていただきたいです」 映画『向田理髪店』【インタビュー】

 九州のさびれた元炭鉱町「筑沢」にある理髪店の親子の葛藤を軸に、家族の絆や人と人とのつながりの大切さを描いた『向田理髪店』が、10月14日から全国公開される。この映画で、突然東京から帰郷した息子の向田和昌を演じた白洲迅に、映画への思いや見どころなどを聞いた。

白洲迅(写真:Fujimoto Kazuhiro/ヘアー&メークアップ:Moteyama Tacaco/スタイリスト:Mochida Yosuke)

-東京の出身なので、今回の九州弁のせりふは難しかったですか。

 簡単ではなかったですけれど、思ったよりも、イントネーションは案外標準語と変わらない感じがして、関西弁よりは難易度は低いかなと思いました。僕の勝手な印象ですけど。

-今回、演じる上で気をつけたことは何かありましたか。

 脚本を読んで、大事なのは、ちゃんと親子に見えるようにすることだと思いました。(父親役の高橋)克実さんとも、(母親役の)富田(靖子)さんとも「はじめまして」だったのですが、撮影の初日から、すぐに親子になれた感じがして、心配はなくなりました。

-この映画のテーマの一つは、父と子の対立や葛藤でしたが、それについてはどう思いましたか。

 この映画は、僕が演じた和昌が、仕事を辞めて、東京から帰ってくるところから始まります。もちろん、新しいことを始めたいとか、親を思って「床屋を継ぐ」という、その言葉にうそはないと思います。ただ、東京から逃げてきたという気持ちもあるから、面と向かって、おやじとはなかなか素直には話せない。そういう空気感は、克実さんにも助けられながら出せたと思います。いいセッションができたと思っています。

-和昌に共感する部分はありましたか。

 ものすごくありました。年齢的に近いせいもあったのですが、20代の後半は、一度立ち止まって「このままでいいのかな」と考える時期だと思います。この時期は、学生が終わって、初めての悩む時期なのかなと。なので、和昌は、そういう若者の代表のようなキャラクターだと思います。僕は今年で30歳になりますが、和昌と同じ年頃だった2、3年前は、本当によく悩んだり考えたりしていました。だから、とても共感できる役でした。

-大牟田でのロケは、いかがでしたか。

 とにかく、地元の人たちが温かかったです。びっくりするぐらい全面協力で、こんなことが本当にあるのかと。だから、大牟田市の皆さんのおかげで出来た作品だと言ってもいいと思います。大牟田は小さな地方都市ではあるんですが、元炭鉱の町でもあるので、どこか活気があるという、その独特の雰囲気を感じました。一人一人のエネルギーが大きな町なのかなと思いました。

-森岡利行監督の演出はいかがでしたか。

 現場を楽しんでいる方だなと思いました。事前にいろんなことを考えて演出するのではなく、現場に来て、雑談から始めて、本番が始まっても、そのいい雰囲気を持続しながら、和気あいあいと、という感じでした。

-最後に、映画の見どころをお願いします。

 ところどころにユーモアがちりばめられていて、クスっと笑えるような作品になっています。かといってずっと平和なわけではなくて、いろんな事件が起きたりもするので、見ていてほっこりもするし、ハラハラもします。そんな作品なので、飽きることなく見ていただけると思います。向田家だけではなく、ほかにもいろんな家族の形が出てきます。家族の問題は、誰もが抱えているものだと思うので、ぜひ、感情移入していただいて、この家族がどうやって壁を乗り越えていくのかを見ていただきたいと思います。

(取材・文/田中雄二)

(C)2022「向田理髪店」製作委員会

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