窪田正孝、人生で大事なのは「『自分がどうしたいのか』を見失わないこと」【インタビュー】

2022年10月17日 / 08:00

 映画界の第一線で活躍する監督たちと豪華俳優陣が集結したオムニバス作品『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』が10月21日からPrime Videoで世界同時独占配信となる。ニューヨーク・タイムズ紙掲載のコラムに基づき、多様な愛の物語を描いた Amazon Original「モダンラブ」の舞台を東京に移した全7話のうち、唯一のアニメーションとして注目を集めるのが「彼が奏でるふたりの調べ」だ。この作品で主人公・桜井珠美の高校時代の同級生、凛の声を演じたのがNHKの連続テレビ小説「エール」(20)など、数々の作品で活躍する窪田正孝。収録の舞台裏や作品を通じて感じたことを語ってくれた。

窪田正孝(ヘアメーク:菅井征起(GÁRA inc.)/スタイリスト:菊池陽之介)(C)エンタメOVO

-「彼が奏でるふたりの調べ」は、社会人として働く主人公・珠美が、思い通りに行かない日常を過ごす中、高校時代の同級生・凛との淡い恋の思い出をきっかけに、新たな一歩を踏み出す物語です。窪田さんが演じた高校生の凛は、他の生徒と距離を取るところがあり、ややませた印象ですが、ご自身ではどう感じましたか。

 「ませている」というよりも、人となじむのが苦手で、自己表現も下手なので、誤解されやすい人なのかな、という印象です。ただ、凛は学校が好きではないし、文化祭の輪に入りたいとも思ってないんですよね。普通はまだ子どもだから、学校という社会の中で人の目が気になるし、外れてしまう恥ずかしさみたいなものもあって、友だちを作らなきゃ、みたいなことを考えるんですけど。でも、彼はそうではなく、自分の好きなものや嫌いなもの、苦手なものがすごく明確。そういう意味では、「ませている」、「大人びている」ということになるのかもしれません。

-そんな凛を演じる上で心掛けたことを教えてください。

 表現が過度になり過ぎないように、ということは強く意識しました。それと、言葉のイントネーションで残そうとするのではなく、吐息と混ざってイントネーションがブレてしまうところや、“声にならない声”みたいなものも。自転車のペダルを踏み外したりするかわいらしいところにこそ、不器用な凛のリアルがあると思うので。そういう小さなポイントに見る人は引き込まれていくはずなので、そこは大事にしたいなと。

-確かに、凛の繊細な感情がよく伝わってきました。主人公の珠美役の黒木華さんとはアフレコも別だったそうですね。

そうなんです。だから、先に収録してあった彼女の声に対して、キャッチボールできているのか、いないのか、分からない微妙な具合を出せたら…と思っていました。そういう意味では、別々に収録する形でよかったのかもしれません。

-というと?

 珠美と凛の間には、お互いに“初々しい恥ずかしさ”みたいなものがあるんです。だから、一緒に仕事したことがある華ちゃんと掛け合いをするよりも、「お互いに一方通行」という感じの方が、ちょうどいい“すれ違い”の作用が起きるんじゃないかなと。完成した作品を見て、その方向性は間違っていなかったと思いました。

-おっしゃるように、2人の感情は微妙にすれ違っていますね。ところで、山田尚子監督からは作品や役について、どんな話があったのでしょうか。

 作品については、それほど深く話をしませんでした。先にコミュニケーションを取るのではなく、まずはセッションしてみましょう、という感じだったので。たぶん監督は、僕から出てくるものを探し出そうとしていたんじゃないかなと。おかげで今回、“声に宿るもの”がものすごくあるな、と改めて感じることができました。

-山田監督は『聲の形』(16)や「平家物語」(22)などの話題作を数多く手掛け、現在の日本のアニメーションを支える監督の一人ですが、人柄についてはどんな印象ですか。

 収録後、少しお話をさせてもらいましたが、短い時間でも、アニメーションを愛していて、作ることが大好きで、学びをやめない方なんだな、という印象が強く残りました。山田監督の作品では以前、『聲の形』を見ましたが、あの映画も今回のように“青春もの”だったので、そこにも何か特別な思い入れがあるのかなと。そういう意味では、この作品にも監督の愛情がすごく詰まっていますよね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

岸井ゆきの「夫婦の“切実さ”が描かれている」宮沢氷魚「すごくやりがいがありました」すれ違っていく夫婦役で初共演『佐藤さんと佐藤さん』【インタビュー】

映画2025年11月28日

 大学で出会った佐藤サチと佐藤タモツはたちまち意気投合し、一緒に暮らし始める。ところが卒業後、弁護⼠を⽬指すタモツは司法試験に失敗。独学を続けるタモツに寄り添うため、サチも司法試験に挑むが、数年後、合格したのはサチだった。結婚、出産を経て弁 … 続きを読む

28歳で亡くなった阪神タイガースの元選手の実話を映画化! 松谷鷹也「横田慎太郎さんのことを知っていただきたい」前田拳太郎「誰かの背中を押す作品になるはず」『栄光のバックホーム』【インタビュー】

映画2025年11月28日

 プロ野球、阪神タイガースの将来を担う選手として期待されながらも、21歳で脳腫瘍を発症して引退、その後も病気と闘いながら講演会活動などを続け、2023年に28歳で亡くなった横田慎太郎の生きざまを描いた『栄光のバックホーム』が、11月28日か … 続きを読む

吉高由里子「忘れかけていたことをいきなり思い出させてくれる」 念願の蓬莱竜太と初タッグ パルコ・プロデュース2025「シャイニングな女たち」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月28日

 吉高由里子が2022年の「クランク・イン!」以来、3年ぶりに舞台主演を果たす。吉高が挑むのは、日常に潜む人間の葛藤や矛盾を丁寧にすくい取り、鋭い視点の中にユーモアを織り交ぜる作風で共感を呼んできた蓬莱竜太が描く新作舞台、パルコ・プロデュー … 続きを読む

【映画コラム】新旧監督の話題作が並んで公開に『TOKYOタクシー』『金髪』

映画2025年11月22日

『TOKYOタクシー』(11月21日公開)  タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、85歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を東京の柴又から神奈川県の葉山にある高齢者施設まで乗せることになった。  すみれの「東京の見納めに、いくつか寄ってみたい … 続きを読む

中川晃教「憧れることが原動力」 ミュージカル「サムシング・ロッテン!」で7年ぶりにニック役に挑戦【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月22日

 数々のミュージカル作品へのオマージュが登場するコメディーミュージカル「サムシング・ロッテン!」が12月19日から上演される。2015年にブロードウェイで初演された本作は、「コーラスライン」、「アニー」、「レ・ミゼラブル」などの人気ミュージ … 続きを読む

Willfriends

page top