のん「三田さんのせりふや立ち居振る舞いが心に食い込んでくる感じがした」三田佳子「この役を演じられるのはのんちゃんしかいないと思った」映画『天間荘の三姉妹』【インタビュー】

2022年10月24日 / 08:00

 天界と地上の間にある街・三ツ瀬の老舗旅館「天間荘」に小川たまえ(のん)という少女がやって来る。たまえは、旅館を切り盛りするのぞみ(大島優子)とイルカトレーナーのかなえ(門脇麦)の腹違いの妹で、現世へ戻って生きるか、天界へ旅立つか、魂の決断ができるまで天間荘で過ごすというのだが…。漫画家・高橋ツトムの代表作『スカイハイ』のスピンオフ作品を北村龍平監督が実写映画化した『天間荘の三姉妹』が10月28日から公開される。本作で、主人公のたまえを演じたのんと、天間荘に滞在する謎の女性・財前玲子を演じた三田佳子に話を聞いた。

のん(ヘアメーク:菅野史絵(クララシステム)/スタイリスト:町野泉美)と三田佳子(ヘアメーク:森田光子/スタイリスト:村井緑) (C)エンタメOVO

-まず、最初に脚本を読んだときはどう思いましたか。

のん 私は、先に原作を読ませていただいたのですが、災害や震災で亡くなった人たちや、財前さんやたまえのように、三ツ瀬にやって来る人たちをファンタジーで描くというのはすごくすてきだなあと思いました。残された人たちの気持ちを考えたり、その悲しみに寄り添うという発想は私にもありましたが、亡くなった人たちがどう過ごしているのかということには、あまり思いをはせたことがなかったので、この物語を見て、こういうふうに、亡くなった人の魂が癒やされたり、自分の人生について振り返って考えられる場所があると思えると、救われる人がたくさんいるのだろうなあと感じたので、そこが素晴らしいと思いました。

三田 最初に読んだ台本から、何度か変わりました。その途中で体調を崩して入院したので、ちょっと無理かなと思ったんですが、同時に、「もしやるとなったら…」と思って、原作のコミックを読みました。その絵を見て、(財前は)私に似ていなくもないなと(笑)。それで、自分も病気をしたという現実的なことも重なりました。(財前の絵は)おしゃれな人だけど、必ず口がへの字に曲がっているんです。だから「への字はやろう」と思いました。実際にやってみたら、相当強烈な顔になりました。これまでそんな顔をして映画に出たことはなかったので、面白かったです。(北村龍平)監督には、迷惑を掛けるといけないので、途中で「降ろさせてください」と言ったのですが、「待ってでも、三田さんにやってほしい」と言っていただいたので、その言葉に勇気づけられて、退院してから10日もたたないうちに北海道まで行きました。そんな状況が、(演じた)財前玲子さんそのままだと思いました。

-今回が初共演でしたが、互いの印象はいかがでしたか。

のん 共演できることが本当にうれしかったです。三田佳子さんと一緒に演技ができるというので、かなり浮かれていました(笑)。もちろん緊張して、ドキドキもしていましたけど、共演できて本当に幸せでした。三田さんのせりふや立ち居振る舞いが心に食い込んでくる感じがして、たまえちゃんが財前さんに引き込まれていくのを、自分自身でもリアルに感じながら演じることができました。だから、本当に楽しかったです。

三田 映画の中では、年の離れた訳あり同士でしたが、たまえの、訳ありなのにとても純真で天真らんまんなところに、財前さんが引かれていくところを、彼女のストレートな芝居の中で、十分感じさせてもらいました。のんちゃんの芝居は、ストレートで、突き刺さってくる感じなんです。それも強くはなくて、自然体で。前から思っていましたが、のんちゃんはしっかりとしたぶれない女優さんという印象です。今回はますますそう思いました。今の若い人は器用で、どんどん変形していくような芝居が得意ですが、彼女はポンと芯が一つあって、それを貫いてやっているところが、ほかの人にはないところだと思います。実際にこの映画を見ると、この役を演じられるのは彼女しかいないと思いました。

のん ありがとうございます。

-この映画のテーマの一つは、生と死の間や死生観だと思いますが、その点についてはどう思いましたか。

のん 先ほども言いましたが、私は、残された人が、どんな悲しみを背負っているのかという気持ちに寄り添って考えてみたことはありましたが、亡くなった人がどうしているのか、どう思うのかを、幽霊とか、そういう世界観ではなく考えるという発想がなかったので、そこにこの映画の驚きがあると思いました。三ツ瀬に旅館があって、そこで魂を癒やしている人がいるという設定ですが、そういう世界が本当にあったらいいなとすごく思いました。もしそれがあれば、震災などで亡くなった人たちや残された人たちの無念の思いが少しは軽くなったり、止まっていた時間が動き出したりとか、そういうふうに思えるかもしれないと感じました。

三田 私は、生や死について、痛切に感じざるを得ない年齢ですが、この映画に出てくるのは、死に損なっていたり、生や死を拒否したり、命を粗末に扱いたいという思いから、(天界と地上との)中間にとどまっている人たちです。それで、こんなふうにとどまれる時間があれば、どんなにロマンチックだろうと思いました。この映画は、生か死かを自分で選びなさいというところが強烈だし、生きることの大切さを、一歩立ち止まって考え直せるところが、この映画のロマンであり、ファンタジーでもあるのかなという気がしました。

 
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