岸井ゆきの×市井昌秀監督 「裕次郎をディスればディスるほど、市井さんをディスることに」 『犬も食わねどチャーリーは笑う』【インタビュー】

2022年9月17日 / 12:00

-岸井さんは、「旦那デスノート」でしか本音を言えない日和という役に、どうアプローチしていったんですか。

岸井 私の家族のことを考えました。私は未婚なので、一番リアルに見てきたものってなると、自分の家族のことなので。家族のことはどことも比べられませんが、多分ウチの家族は仲がいいと思うんです。それでも、両親が冷戦気味のときもあったし、いろんなことを乗り越えてきたんだなというのは、一緒に暮らしていて見てきたので。ささいなことでけんかをすることもたくさんあったし、はたから見たらしょうもないと思うようなことも、本人たちにとっては大問題だったりする。基本的には母親が一方的に言っていて、お父さんがホントに裕次郎と一緒、鈍感で何で怒っているのか分からないみたいな。そういうところからチョイスして、日和を作っていきました。ウチの場合は、私が間に入るから、それがデスノートに書かない理由だと思います。「お父さん、そういうときは『ありがとう』って言わないと駄目だよね」で、うまくいく。でもチャーリーは全部見ているけど、日本語をしゃべれないから。

-夫婦は他人だから逃げずに向き合わないといけないというメッセージは、『ドライブ・マイ・カー』にも通じます。さらに、深田晃司監督の新作『LOVE LIFE』でも、直接感情をぶつけ合えない夫婦像が描かれています。こういった偶然のテーマの共鳴は、一流のクリエーターほど時代性に敏感だからではないでしょうか。夫婦に限らず、今は大事な人と向き合えない時代だと思いますか。

市井 シンプルにあるとは思います。SNSとかハンドルネームの人の悪意めいた発信が、自分に対してだけではなく、すごく嫌で。匿名だから強く言い切れる部分もあるから。ですが、この映画はそういう闇をどうにかしようという作品ではなく、時代として感じてはいましたけど、そこに重きを置いて作ったわけではないです。あくまでも自分自身の夫婦が念頭にあったので。

岸井 時代のせいにはしたくないですね。

市井 そう見えているだけかもしれないですね。どんなに親しくても向き合っていないということは、いつの時代でもあると思います。普遍的な人間関係じゃないかと。

岸井 時代じゃないと思う。確かに、時代のせいにしがちというか、しやすいとは思いますけど。あくまでも、この夫婦の例だと思います。

(取材・文・写真/外山真也)

(C)2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

AmBitious・岡佑吏、松岡昌宏との初共演に「緊張」も「振り切る自信はある」 「家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月19日

 女装した大柄な家政夫・三田園薫が、派遣された家庭・家族の内情をのぞき見し、そこに巣食う“根深い汚れ”までもスッキリと落としていくヒューマンドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」。松岡昌宏主演で2016年にスタートし、第7シリーズまで続く人気作 … 続きを読む

【週末映画コラム】人気シリーズの最終章『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』/実際の元収監者たちが演劇メンバーを演じる『シンシン SING SING』

映画2025年4月18日

『シンシン SING SING』(4月11日公開)  無実の罪でシンシン刑務所に収監されたディヴァインG(コールマン・ドミンゴ)は、刑務所内更生プログラムの一環である「舞台演劇」のグループに所属し、収監者仲間たちと日々演劇に取り組むことで気 … 続きを読む

神山智洋&中村海人、ドラマ初共演で“ブラザーバディ”が誕生 神山、中村は「かわいい弟という感覚」

ドラマ2025年4月18日

 WEST.の神山智洋とTravis Japanの中村海人が出演する、土ドラ「ミッドナイト屋台~ラ・ボンノォ~」(毎週土曜23時40分放送/東海テレビ・フジテレビ系)の第2話が4月19日に放送される。  本作は、味覚を失ったスゴ腕フレンチシ … 続きを読む

三浦透子「その先で自分がどんな人間になっているのか、自分でも楽しみ」 舞台パルコ・プロデュース 2025「星の降る時」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月14日

-三浦さんには実際に兄弟姉妹はいますか。  ひとりっ子です。 -そうすると、役と自分を重ね合わせるのは難しいのでは?  そうですね。なので、逆に今回はすごく楽しみで、姉妹の関係を疑似体験できるのではないかと思っています(笑)。那須さんは実際 … 続きを読む

石坂浩二 松平武元役は「渡辺謙さんと相談しながら、お芝居を工夫しました」【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年4月13日

-ここで改めて、松平武元を演じる上で心掛けたことを教えてください。  武元は、3代の将軍に仕えた人物なので、“コテコテの徳川派”という雰囲気を出そうと考えていました。つまり、太平の世を守るため、江戸幕府を開いた徳川家康のやり方を継承していく … 続きを読む

Willfriends

page top