松村雄基「家族とは信じ、待ち、許し、守りたくなる相手」 「スクール☆ウォーズ」で学んだ教えが今も生きる【インタビュー】

2022年6月4日 / 08:00

-デビュー当時と現在とで、芝居に対する思いも大きく変わったのではないかと思いますが、何かターニングポイントはありましたか。

 言い訳になってしまいますが、デビューのきっかけがスカウトだったこともあり、デビュー当時は演じることにあまり興味がありませんでした。ところが、「ぼくらの時代」(81)というドラマに生徒役で出演したときに、不良にいじめられているところを先生に助けてもらうというシーンで、台本には書かれていなかったのに、気持ちが熱くなって号泣してしまったことがあったんです。そのときに、芝居って不思議だと感じたのが(芝居への思いが変わった)最初のきっかけでした。

 その後、「スクール☆ウォーズ」などのドラマを無我夢中でやっているときは、与えられたせりふを言うことだけで精いっぱいでしたが、時間を経て、舞台に出演するようになって、2度目のターニングポイントがありました。映像作品の場合、カメラに向かって演技をするので、視聴者のリアクションを生で感じることはできません。ですが、舞台では僕たちの芝居に対するリアクションがその場で返ってくる。そして、それが僕たちを動かす感覚がありました。当時、さまざまな演出家の方から「芝居とはエネルギーのキャッチボールだ」というアドバイスを頂いたのですが、まさにそれを実感し、「僕たちはお客さんの心を揺さぶって、喜んでもらわないといけない。それが役者なんだ」と気付きました。そこから、10代、20代で考えていた役者業とは全く違う方向にシフトしていきました。

-なるほど。そうして、今がある?

 そうですね。それから、最近では、コロナ禍も考えが変わるきっかけになりました。どこか、お客さんに劇場に見に来ていただけることは当然だと思っていたところがあったんだと思います。それが、当たり前ではなかったと気付かせてくれたのがコロナ禍でした。役者ってなんなんだろうと思ったこともありました。ですが、同じ役者たちがコロナ禍でも配信を行ったり、これまでとは違う形であっても、お客さんに思いを伝えようとしている姿を見て、役者は決して不必要な存在ではないと強く思うようになりました。今、僕にとって、役者は生きるために欠かせないものですし、芝居をしてそれを見ていただくことは意味のあることだと強く思うことができるようになってきました。

-改めて、公演への意気込みを。

 この作品は、息苦しさをひととき忘れて、生きるということは素晴らしいことだと感じさせてくれる作品だと僕は思います。見てくださるお客さんの心が少しでも安らぎ、温かい気持ちになっていただけるように、僕らは精いっぱい務めていきたいと思いますので、ぜひ劇場に足をお運びください。

(取材・文/嶋田真己)

舞台「黄昏」

 舞台「黄昏」は、6月4日に都内・江東区文化センター ホールでプレビュー公演、6月21日〜26日に都内・紀伊國屋ホールほか、大阪、兵庫、金沢、愛知、長野で上演。
公式サイト https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2022/tasogare_2022/

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

-陽彩はいわゆる“毒親”の母と2人で暮らすうち、自分の人生に期待を持てなくなってしまった人物です。そういう役と向き合うお気持ちはいかがでしたか。 南 陽彩にとって、親や家族は、居場所であると同時に、自分を縛る呪いのようなものでもあったと思う … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

▽長い時を刻む、大衆文化とは異なる魅力 -Kカルチャーが世界で注目される今、今回のような舞台表現はKカルチャーの中にどう位置づけられると思いますか?  K-POPや映画などの大衆文化も素晴らしいですが、伝統芸術はそれよりもはるか以前から続い … 続きを読む

毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

映画2025年7月3日

-実際に演じてみて感じたことや、演じる上で心掛けたことや気を付けたことはありましたか。  自分が桐島を演じる上で一番重要だと思ったのは、(偽名の)「ウチダヒロシ」として、1人の部屋で朝を迎えて、窓を開けてコーヒーを飲んでというシーンでした。 … 続きを読む

磯村勇斗&堀田真由、ともにデビュー10年を迎え「挑戦の年になる」 ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」【インタビュー】

ドラマ2025年7月2日

 磯村勇斗主演、堀田真由、稲垣吾郎が出演するカンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”「僕達はまだその星の校則を知らない」が7月14日から放送スタートする。本作は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村勇斗)が、少 … 続きを読む

Willfriends

page top