【インタビュー】映画『夕方のおともだち』村上淳×菜葉菜 「廣木監督は、“安定”の壊し方が絶妙」

2022年2月2日 / 10:00

-廣木監督は長回しで知られていますが、俳優は演じやすいのでは?

村上 地方ロケで合宿的に撮ると、みんなどんどん顔が役になっていく。できる限り順撮りで、順撮りって壮大な長回しなんです。彼の長回しは、演劇的な長回しではなくて、映画的な一連。役者の演技を止めないためではない。だから、なるべくカメラワークはシンプルに。日本ではそんなにテストができるわけではない中で、2~3回のテストで、ある種の安定ができたときの安定の壊し方が、廣木さんは絶妙。ジェントルマンなんです。安定がスクリーンに映っちゃうと、お客さんは引くから。

菜葉菜 私が脚本を読んでいて、ここでショックを受けるだろうなと思うところを、あっさりと後ろからの引きで撮る。私の切ない表情は見せないんだって思う。それが廣木節で、ミホの切ない気持ちを見せると押し付けちゃうので、想像させる。後ろ姿と「さあ、仕事に行こう」の一言で十分。むしろ、その方がお客さんに伝わる切なさのようなものを映しているんだろうな、というのを完成した作品を見終わった後に感じて、廣木さんってすごいなと。

-お互いに、相手のシーンで注目してほしいというところを教えてください。

村上 菜葉菜ちゃんは、ぬれ場。映画史に残るぬれ場じゃないかなと思います。

菜葉菜 初めてだったので、こんなにアクロバチックなんだ、動きの自由が利かないんだって。「菜葉菜、ちょっと股広げ過ぎ、映っちゃう」とか(笑)。それでも、感情を大切にして撮ってくれたし、村淳さんがリードしてくれたから、そういう意味では、そこだけにこだわらず感情を入れられたので、そう言ってもらえてよかった。私は、村淳さんの、同僚役の鮎川桃果さんとの一連が大好き。物を壊す行為や彼女に対しての行動から、ドMのヨシオが持っているSの側面が垣間見える。SとMって表裏一体だと思うんです。私は現場にいなかったので、完成した時にあのヨシオを見て、ヨシオが深まったと一層魅力を感じました。

村上 一般論でいうと、一男優が女優のぬれ場を見てくれと言うのって、けっこうゲスな話。女優として認めているからこそ言える話であって、本人を前にしてぬれ場を推せるっていうのは、女優としての核がしっかりしているから。

菜葉菜 うれしい! もう1年頑張れます。

(取材・文・写真/外山真也)

(C)2021「夕方のおともだち」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『遠い山なみの光』(9月5日公開)  1980年代のイギリス。日本人の母とイギリス人の父との間に生まれロンドンで暮らすニキ(カミラ・アイコ)は、大学を中退し作家を目指している。ある日、彼女は執筆のため、異父姉の景子が亡くなって以来疎遠になっ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

▼新しい美の概念  志賀直哉や武者小路実篤らと文芸雑誌『白樺』を創刊し、西洋美術を紹介していた柳宗悦(1889-1961)は、浅川兄弟との関わりで初めて朝鮮に興味を持つことになる。  「(彫刻家を目指していた)伯教さんは『白樺』を読み、柳先 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

-劇中に流れるさまざまな曲は、全て監督のチョイスですか。  音楽は全て私のチョイスです。こういうシーン、こういう状況だったらこの音楽は意味があるかなと考えながら一つ一つ選んでいきましたが、いろんな人たちの意見も聞きましたし、私自身もたくさん … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

-お芝居に悩んだり、難しさを感じたりすることはありませんでしたか。 前田 たくさんあります。でもその都度、松井監督と相談しながら進めていきました。迷ったときは、松井監督を信じればいい、という信頼関係が出来上がっていたので。 窪塚 松井監督は … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

-ルンメイさん、夫・賢治役の西島秀俊さんの印象はいかがでしたか。 ルンメイ 今回西島さんと一緒にお仕事ができたことはとても光栄でした。西島さんは経験豊かな方なので、私は現場でとても安心して演技をすることができました。西島さんがいろんなエネル … 続きを読む

Willfriends

page top