名脚本誕生の舞台裏「渋沢栄一さんは、すごく分かりにくい人だと思った」大森美香(脚本)【「青天を衝け」インタビュー】

2021年12月3日 / 08:16

-それらを踏まえて、吉沢亮さんが演じる渋沢栄一に託した思いはありますか。

 渋沢栄一さんには、新しい1万円札のイメージから、おとなしく座っていらっしゃるような印象があります。でも、「こういう人物がいかにして出来上がったのか」という過程を描こうと考えたとき、この物語の栄一には「人生を駆け抜けてほしい」と思ったんです。そんな栄一にぴったりな方として、みんなの意見が一致したのが吉沢さんでした。吉沢さんは大変だったでしょうけど、期待通り最後まで走り切ってくれて、とてもすてきな栄一になったと思います。

-ところで、もともと渋沢栄一に興味を持ったのは、以前、大森さんが脚本を手掛けた連続テレビ小説「あさが来た」(15~16)に登場したことがきっかけだそうですが、両作品とも明治時代の実業家が主人公です。二作経験して、主人公としての明治の実業家の魅力をどんなふうに感じていますか。

 今は「こうしたら危ないかな」、「こうしたらたたかれるかな」ということを気にしがちな風潮の世の中ですが、彼らはそういうことを気にせず、とにかく突っ走っていた。(「あさが来た」の主人公の)あささんも、「女なのに」ということは気にせず走っていたし、栄一さんも「人にどう思われるか」とか、「偉い人の言うことは黙って聞く」ということを気にする様子が一切ない。そんなふうに、「自分が思う方向に駆け抜けよう」、「自分で何かを作り上げよう」という強い意思を持つ人の話は、やっぱりパワーがありますよね。そういうところに引かれます。今回は、栄一さんを中心に経済の面を描きましたが、「世の中を変えてやろう」という気概にあふれている明治は、政治や教育、文学など、どの面から見ても面白い時代だと思います。

―大森さんと明治の実業家といえば、本作と「あさが来た」の両方でディーン・フジオカさんが演じた五代友厚さんを忘れることはできません。今後、五代さんを主人公にドラマを書いてみたいという意欲はありますか。

 五代さんは薩摩から長崎に行き、また薩英戦争でイギリスの捕虜になるなど、とても面白い人生を歩んだ方です。今回も、五代さんをもう少し描きたかったという思いもありますし、他にない目線でいろんなことを描ける方なので、ぜひ書いてみたいです(笑)。

(取材・文/井上健一)

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