エンターテインメント・ウェブマガジン
イタリアの小さな港町ポルトロッソの住民たちは、海の世界に住むシー・モンスターを恐れていたが、シー・モンスターも地上に住む人間を恐れていた。だが、好奇心旺盛なシー・モンスターの少年ルカは、海のおきてを破り、親友となったアルベルトと共に、ポルトロッソへやってくる。北イタリアの美しい港町を舞台に描くディズニー&ピクサー最新作『あの夏のルカ』が、6月18日(金)からディズニープラスで独占配信される。エンリコ・カサローザ監督とアンドレア・ウォーレンプロデューサーに話を聞いた。
カサローザ 確かに、今回は『スタンド・バイ・ミー』や『ヤング・ゼネレーション』(79)からもインスピレーションを得ました。そうした映画のように、今までも夏や友情は映画の美しい題材になってきましたが、ピクサー作品の多くは、パーソナル(個人的)な体験から物語を築いていきます。ですから、今回も僕自身の体験が基になっています。それから、これまでのピクサーの作品では、子ども同士の物語や子どもの視点だけで描かれたものはあまりないと思ったので、それもこの作品を作ろうと思った理由の一つです。子どもの世界で時間を過ごすのも面白いのではないかと思いました。
あとは海です。僕は運のいいことに、イタリアの海岸沿いの街で育ちました。子どもの頃は、仲間と一緒にずっと海から上がらず、自分たちが魚になったような気がしていました。そこで、この映画のアルベルトのモデルとなった親友と出会いました。そんな中で、友情がいかに互いを成長させていくのか、友情がどのように自分を変えるのか、あるいは、そうした友情や出会いがなければ、果たして今の自分はいたのか…。そうした問い掛けを、この映画の中で掘り下げていきたいと思いました。
カサローザ この映画を、僕の自伝的なものではなく、普遍的なものにするためには、チームの皆との対話が重要でした。皆それぞれに、ルカやアルベルトのような友人がいたり、いろいろな経験をしています。ですから、皆で、友だちからどんなことを学んだのか、新しいことにチャレンジするために、互いにどのように励まし合ったのか、といった話をたくさんしました。僕は、友情の中心にあることは、一人ならやらないようなことに挑戦するきっかけを作ってくれることだと思います。その鍵となるのは、友情がどのように自分を変えるのか、自分の成長にどのように役立っているのかということだと思います。なので、今回は、2人の出会いと、気持ちが通じ合う瞬間を描くことがとても重要だと思いました。それから、2人がそれぞれ孤独だったということも描きたかったのです。互いに寂しいし、相手を必要としているという。その点でも、誰もが共感できる友情が描けたと思っています。
カサローザ 映画の舞台を選ぶときに、初めからその場所にフォーカスしようと意識しているわけではありません。その場所を正確に、具体性を持って描きたいという思いがあるので、ディテールにこだわるのはその結果だと思います。また、物語は普遍性があるものにしたいと思うので、どうすればその舞台にフィットするのかを考える中で、そうなっていくのだと思います。
ただ、この映画の場合は、僕のイタリアへのラブストーリー、ラブレターのようなところもあります。僕が去らなければいけなかった場所だし、皆さんをそこに連れていきたいという気持ちもありました。それは、先ほどお話した、ピクサーではパーソナルな物語をつづる、というところからきているのだと思います。もちろん、この映画はファンタジーなので、全てがリアルというわけではありませんが。それから、一つ訂正があります。モリコーネの話はウィキペディアに勝手に書かれたもので、根も葉もないうわさに過ぎません。僕はどちらかと言えば、ニーノ・ロータの方が好きです(笑)。
ウォーレン この映画は、エンリコ監督自身の歴史に沿った物語なので、イタリアにしっかり根差しているのは正しいと思いました。また、ピクサーでは、常に描く場所や土地を大切にするという姿勢があります。観客の皆さんには、そこに連れていってもらったような感覚を持ってほしいと思っています。今回も、実際にリサーチ旅行をし、建物や水の反射、通りの感じなどをじっくり研究しました。ですから、ローカル色が強いと感じるのは、イタリアのリグーリアのニュアンスをしっかりと取り込んだ結果なのだと思います。
映画2025年9月16日
東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む
映画2025年9月12日
ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年9月12日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む
ドラマ2025年9月12日
NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年9月11日
中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む