心の救済と絶望を描いたいしいしんじの長編小説をウォーリー木下が舞台化した、音楽劇「プラネタリウムのふたご」の大阪公演が2月13日から上演される。2020年6月に上演される予定だった本作だが、新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、やむなく中止に。今回の公演は、待望の延期公演となる。主人公の双子、テンペルとタットルを演じる永田崇人と阿久津仁愛に、公演への意気込みや舞台初共演となる互いの印象を聞いた。
-2020年6月の延期公演ということで、作品への思いも強いかと思いますが、現在(取材当時)、どのような思いで稽古に臨んでいますか。
永田 特に、この作品だからということではなく、いつもと変わらずに、がむしゃらにやっています。
阿久津 もちろん、コロナ禍であることや、延期公演だということもありますが、僕も役に没頭していて、必死になっています。
-それぞれの役柄を、どのように演じたいと考えていますか。
永田 原作に描かれているテンペルとタットルは、どのようにも捉えられると思うんです。なので、どういう方向で作り上げていくのかを、稽古を通して決めていかなければならないのですが、今はまだ固まっていない段階です。このシーンではこれをやりたいと思うことを、(稽古で)惜しまずにやってみて、(演出の)ウォーリーさんの反応を待っているところです(笑)。
阿久津 僕は、演じていく中で、自然と同じ方向を向いていたりとか、ふとした瞬間に目を合わせたりとか、という「双子らしいしぐさ」が大変だなと今は思っています。狙ってもなかなかできないので、双子らしさはもっと深めていきたいです。それから、1幕では、特に子どもらしさや無邪気さが必要だと思うので、パワーや元気さをもっと出していきたいと思っています。まだまだやることがたくさんあるので、ゆっくり考えている余裕がないのですが、でも、その中でももっとこうしたら楽しめるんじゃないかと思うことに、積極的に挑戦していこうと思います。
-最初に原作を読んで感じたことと、今、台本や原作を読んで感じることに変化はありましたか。
永田 原作を最初に読んだときには、どこか遠い国で起こっている物語に感じました。でも、舞台化する中で、日本人である僕たちが演じることで、もちろん原作の、その世界観は残しながらも、もっと身近な物語になっている気がしています。
阿久津 原作を読んだときには見えなかったところも(舞台化することで)イメージができて、知ることができたということもあると思います。僕は、今、稽古をしていく中で、どう演じたらいいのか悩んだら、原作を読み直すようにしています。原作には、細かな感情のイメージや、演じる上でのヒントがあるので、最初に読んだときよりもたくさんの情報を拾えていると思います。
-お二人は、これまでC.I.A.(キューブに所属する若手俳優のサポーターズクラブ)の活動などでの共演はあっても、舞台作品での共演は初となります。互いにどのような印象を持っていますか。
永田 初めて会ったのは、仁愛が中学生だったよね? 僕が偉そうに言うことじゃないけど、透明でゼロだった仁愛が、たくさんの経験をしていろいろな色をつけていく姿は見ていて面白いです。仁愛にとっては、この作品がミュージカル『テニスの王子様』以外では初めての舞台作品なので、今、いろいろと苦戦していると思いますが、臆することなく、自分からチャレンジしているので、僕も尻をたたかれている感じがします(笑)。
阿久津 崇人くんは、コミュニケーション能力があって、すごいと思ったのが最初でした。僕は人見知りで、なかなか会話ができないので。それから、演技レッスンでどんどん挑んでいく姿が印象に残っています。僕は前向きにチャレンジできなかったので、全てにおいて尊敬しています。今回、自分のことに必死で、周りが見えていない僕に、崇人くんが電話で、「ここはこうしよう」と提案してくれるので、すごくありがたいです。
-阿久津さんは、ウォーリーさんの作品も初めてだと思いますが、彼の演出はいかがですか。
阿久津 二つのシーンが、感情をリンクさせながら同時進行する場面があるのですが、そんな演出を考えるウォーリーさんはすごい方だな、と。実際に劇場に入ってみないと、分からないところもたくさんありますが、円形の劇場で演技をするのも、僕は初めてなので、それも新鮮で、どうなるのか楽しみにしています。
-これまでに何度も一緒に作品を作っている永田さんから見たウォーリーさんはどんな演出家ですか。
永田 僕の師匠です。僕は、(ウォーリーと)5年ぐらい一緒にやらせていただいているんですが、ウォーリーさんに認められたいと思って頑張っているところがあります。演出ももちろんですが、人としても好きなんです。今考えると、本当にダサい話なんですが、僕は舞台や2.5次元舞台に出させてもらっていて、「格好いい」「美しい」が全てだと思っていたんです。でも、それは違うと教えてくれたのがウォーリーさんでした。ウォーリーさんは、映像に頼ればあっという間に終わることを、あえてアナログで表現したり、泥くさいことも取り入れて芝居を作られていく。ウォーリーさんの作品は、総合芸術だと思っています。
-改めて、公演を楽しみにしている方へメッセージを。
永田 僕も先日、オフの日に舞台を見に行ってきましたが、やはり生の力はすごいと改めて感じました。その場で行われていることだからこそ、もらえるものがあると思うんです。今は大変な時期ですから「見にきてください」と簡単には言えませんが、舞台が救いになっている人もいると思うので、そういう方々がいる限り、僕たちは芝居を続けていきます。来てくださる方には、嫌なことも忘れて、この舞台の世界観に没入していただきたいと思っているので、稽古にもしっかりと励みたいと思います。
阿久津 まずは、今回、延期という形で公演ができることを幸せに思っています。この作品は、音楽もあり、癒やされるシーンもありと、盛りだくさんな公演です。1回1回の公演に200パーセントの思いを懸けて臨むつもりで頑張ります。
(取材・文/嶋田真己)
音楽劇「プラネタリウムのふたご」は、2月13~14日、大阪・梅田芸術劇場 メインホール、2月20~23日、都内・日本青年館ホールで上演。
公式サイト https://www.planetarium-twins2020.com