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【インタビュー】舞台「ハルシオン・デイズ2020」南沢奈央「こういった時代だからこそエンタメで心を癒やしてもらえたら」

 演出家・鴻上尚史による定期公演の第18弾「ハルシオン・デイズ2020」が、10月31日から開幕する。本作は、絶望と救済、希望をテーマに、Twitterの「#自殺」で出会った4人の登場人物たちの物語。柿澤勇人、南沢奈央、須藤蓮、石井一孝が出演する。鴻上作品へは2度目の出演となる南沢に、稽古場の様子や公演への思いを聞いた。

南沢奈央、稽古中の様子(撮影:田中亜紀)

-現在、稽古中かと思いますが、手応えは感じていますか。

 すごく面白い舞台になりそうです。毎日、純粋に稽古を楽しんでいます。作品のあらすじなどを読むと、「自殺」や「自粛警察」などの重い言葉が出てきますが、作品全体のトーンとしては、明るく、笑いたっぷりの舞台なので、楽しい作品になっていると思います。

-今回、南沢さんが演じる役柄について教えてください。

 私は谷川和美という元スクールカウンセラーの役です。高校で生徒の悩みを聞く仕事をしていたのですが、カウンセリングをしていた生徒が自殺してしまい、それ以降、その生徒の幻を作り出してしまいます。どうにか乗り越えようと、自殺しようとしている人を次こそ救おうと一生懸命になっています。

-どんなところに重点をおいて演じていますか。

 ステージ上には4人しかいないので、テンポの速い会話で物語が展開していきます。でも、テンポを重視してしまうと言葉が流れてしまって、重みがなくなってしまうんです。カウンセラーという役柄上も、人の言葉を聞くということが大切だと思うので、相手の話から気持ちをくみ取ろうとする姿勢を見せていきたいと思います。

-鴻上さんとは、今回が2度目の顔合わせになりますね。

 はい。4年ぶりになりますが、またご一緒させていただきたいと思っていたので、「やっときた!」とうれしかったです。鴻上さんの「トランス」という作品が大好きで、いつか出演させていただきたいと思っていたのですが、「ハルシオン・デイズ」はその「トランス」の姉妹作ということだったので、ワクワクしました。それから、新型コロナウイルスの影響を受けて、出演予定だった舞台が中止になってしまうということが続いていたので、こういった時期にお話を頂けたこと自体が本当にうれしかったです。

-最初に脚本を読んだとき、本作のどこに魅力を感じましたか。

 「ハルシオン・デイズ」は、16年前に初演されていますが、そのときの作品とは全くの別物に書き上げられています。今現在の日本を表すかのように、コロナの時代で新たに生まれた苦しさも描かれていて、全ての人が共感できる物語になっていると思います。鴻上さんの作品は最終的にポジティブな気持ちになれる作品が多いのですが、この作品も同じで、最後まで見ていただければ、きっと生きていこうというエネルギーが湧いてくると思います。私自身も脚本を読んで励まされました。もっと強いエネルギーを持って頑張らなきゃいけないなと思わせてくれる作品だったので、お客さまにもそう思っていただける作品になるように頑張っています。

-身構えずに見られる作品になりそうですね。

 はい。劇中には「おふざけポイント」もたくさんありますので、たくさん笑っていただけると思います。今回、稽古をしていて、お芝居や物語に没頭していると、普段のつらいことも忘れて心が癒やされるということを改めて感じたので、こういった時代だからこそエンタメで心を癒やしてもらえたらうれしいです。

-コロナによる状況の変化を経験したことによって、南沢さんご自身の舞台や芝居に懸ける思いも変わりましたか。

 お芝居をしたい、舞台に立ちたいという気持ちがどんどん湧いてきて、私はこんなにもお芝居が好きだったんだということに気付きました。それから、表現する場がないことのつらさも感じ、改めて自分が何をしたいのか、どうしていきたいのかに気付けた、ある意味ではいい機会だったなとは思います。

-主演の柿澤勇人さんとは初共演になりますが、柿澤さんの印象を教えてください。

 ミュージカルのイメージが強かったのですが、今回、(ストレートプレーで)お芝居をしている姿を見たら、お芝居も本当にうまくて何でもできる方なんだと思いました。コメディーも似合うんです。鴻上さんからのオーダーに、瞬時に、臨機応変に応えて、お芝居をどんどん変えていくので、本当に素晴らしい役者さんだと思います。

-ところで、近年、南沢さんは幅広い作風の舞台作品に数多く出演されています。コンスタントに舞台出演を続けていることに、どのような思いがあるのですか。

 私がこの仕事を始めたきっかけはスカウトだったのですが、そのとき、やろうと決心したのは当時の事務所の先輩だった黒木メイサさんの「あずみ」という舞台を見たことでした。すごく感動して、私もやってみたいと思って、事務所に入ることにしました。舞台は、見ている人に直接、いろいろな感情を与えることができるものなんだということをすごく感じたんです。なので、舞台に対しては特別な思いがあります。

 舞台に出ると、自分に足りないものがはっきりと見えてくるんです。私は役を作ったり、演出家さんや監督の求めていることをできるようになるまでに時間がかかるタイプなので、舞台のように時間をじっくりかけて作り上げていくのは性に合っているんだと思います。その作業も大好きですし。舞台に出演すると、毎回、いろいろなものを得られると感じているので、ここ数年は、意識して舞台をやらせていただいています。

-今後、出演してみたい作品はありますか。

 「あずみ」を見て感動した思い出があるので、アクションをやりたいです! もちろん、殺陣をきちんと習って、訓練もしなければいけないと思いますが、格好いい女性の役ができたらいいなと思います。

-改めて、作品を楽しみにされている方に一言お願いします。

 今を生きるのに必死になって、もしかしたらつらかったり、暗い気持ちになっている方もいるんではないかと思いますが、この作品を見てもらえれば、きっと、明るい未来を想像して生きていこうと感じていただけると思います。少しでもポジティブになって、頑張ろうと思ってもらえたらという思いで演じます。エネルギーを与えられるよう、私たちも、全員が汗をかいて動き回ってエネルギッシュなものをお届けしますので、楽しみにしていただけたらうれしいです。

(取材・文:嶋田真己)

KOKAMI@network vol.18「ハルシオン・デイズ 2020」

 KOKAMI@network vol.18「ハルシオン・デイズ 2020」は10月31日~11月23日に都内・紀伊國屋ホール、12月5日・6日に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。
公式サイト http://www.thirdstage.com/knet/halcyondays2020/

 

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