「具体と抽象が入り交じった美術館に入った時と同じような感覚になるかもしれない」福士蒼汰『湖の女たち』【インタビュー】

2024年5月16日 / 08:00

 湖畔にある介護施設で、100歳の老人が殺害された。事件の捜査を担当する西湖署の若手刑事・濱中圭介は、捜査で出会った介護士の豊田佳代(松本まりか)にゆがんだ支配欲を抱くようになる。一方、事件を追う記者(福地桃子)は、署が隠ぺいしてきた薬害事件が今回の事件に関係していることを突き止めるが…。吉田修一の同名小説を大森立嗣監督が映画化したヒューマンミステリー『湖の女たち』が5月17日から全国公開される。本作で主人公の圭介を演じた福士蒼汰に話を聞いた。

 

福士蒼汰(メーク:矢澤睦美(wani)/スタイリスト:髙橋美咲(Sadalsuud)) (C)エンタメOVO

 

-まず、本作に引かれた一番のポイントから聞かせてください。

 一番は吉田修一さんの原作作品であるということと、 大森(立嗣)さんが監督をするということで、チームとして絶対に面白いものになるだろうと思いました。原作を読み進めていくと、これまで僕が挑戦したことのない役柄、作品でもあったので、ぜひ演じてみたいと思いました。

-最初に脚本を読んだ時の印象と、実際に演じてみてどう感じたかを。

 最初に脚本を読んだ時は、頭で理解するより感性で見たり感じたりする作品だと思いました。薬害事件や731部隊の話は事件性があってミステリーとしての見どころも多いのですが、圭介と佳代の関係性は複雑で体で理解するしかないと思い、演じる上でも難しいと感じた部分です。2つの物語が同時に流れていて共存しているのですが、具体と抽象の共通点を探すようなお話だと感じました。どうやって演じようかと悩むこともありましたが、実際、お芝居に入っていったら、頭で理解して俯瞰(ふかん)したイメージよりも、その瞬間で作るエネルギーの方を大事にしたいと思うようになりました。

-役作りはどういう感じで行いましたか。

 今作では、今までの役作りとはかなり違っていたと思います。大森監督は「自分が心からそうだと思う瞬間にその言葉を言って。行動して」という演出をしてくださいました。今までは、「役柄を魅力的に見せるためにはどうしたらいいか」を考えていたのですが、今回は自分自身の心の奥底から出る言葉や行動を優先するようにしていたので、「役作りはしない方がいい」という感覚でした。

-松本まりかさんが演じた佳代とのゆがんだ関係性が描かれていましたが、彼女の印象と共演して何か感じたことがあれば。

 松本さんとは、圭介と佳代という存在でいたかったので、現場で雑談することは一切なく、言葉を交わすのはせりふのみだったんです。その上、笑顔を見せることも目線を合わせることもほとんどなかった。だから、すごく嫌な人間に見えていたかもしれません(笑)。この前も、「今でも半分嫌い。まだ信じていない」と言われてしまって…。今となっては申し訳ない気持ちもあるのですが、よりよい作品にするためには間違っていなかったと思っています。

-「役者人生のターニングポイントになる作品になった」というコメントをしていますが。これまでとは違うと思ったところは?

 大森監督から、「自分が心から思ったタイミングでちゃんとお芝居をするということを心掛けてほしい」とご指導いただきました。最初はその言葉の意味をつかみ切れていなかったのですが、撮影を行っていく中で、「この感覚なのかな」と感じる瞬間があって。監督も、僕がだんだんと感覚をつかんでいくのを感じ取ってくださっていたように思います。今作の撮影が終わった後も大森監督から受けた演出を大事にしています。「最近お芝居が変わったね」と声を掛けていただくことも多くなりましたし、自分の変化を実感できるようになりました。大森監督との出会いは、僕の役者人生において間違いなく大きな財産だと思っています。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

石橋静河「皆さんに『一歩前進してみようかな』と思っていただけたら」連続テレビ小説主演に懸ける思い【連続テレビ小説「ブラッサム」インタビュー】

ドラマ2026年9月26日

 9月28日から2026年後期連続テレビ小説「ブラッサム」が、NHKで放送開始となる。主人公は、明治、大正、昭和を駆け抜け、自由を求め続けた作家・宇野千代をモデルにした葉野珠。彼女が苦難の中でも「幸せのかけら」を見つけ、常に前に進むことで人 … 続きを読む

【映画コラム】戦争が終わった後に残るものは…『ハート・オブ・ビースト』『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

映画2026年9月25日

『ハート・オブ・ビースト』(9月25日公開)  かつて陸軍特殊部隊で生死を共にした退役軍人のジェームズ(ブラッド・ピット)と、元軍用偵察犬で義足のオーディン。戦場を離れた現在も、彼らは相棒として深い絆で結ばれていた。  ところがアラスカ上空 … 続きを読む

市川團十郎、市川新之助「こういう形で記録に残せたのは非常によかったと思います」【インタビュー】『襲名』

映画2026年9月24日

 十三代目市川團十郎白猿の襲名と八代目新之助の初舞台を正面から捉えた、三池崇史監督のドキュメンタリー映画『襲名』が、9月25日から全国公開される。映画の公開を前に、團十郎、新之助親子に話を聞いた。 -まず、映画を見て感じたことから伺います。 … 続きを読む

尾上松也「金田一耕助を演じる喜びがふつふつと」奥智哉「今の時代にふさわしい作品に」名作ミステリー映画で共演『八つ墓村』【インタビュー】

映画2026年9月18日

 横溝正史原作の名作ミステリーが、令和の時代によみがえる!これまで繰り返し映像化されてきた『八つ墓村』が装いも新たに映画化され、9月18日から全国公開となる。  岡山県の山奥にひっそりとたたずむ八つ墓村で起きる連続殺人の謎に、名探偵・金田一 … 続きを読む

有村架純、石田ひかり、姫野花春「見終わった後ですごく幸せな気持ちになれる映画です」『さとこはいつも』【インタビュー】

映画2026年9月18日

 沖田修一監督が、年齢も育った環境も異なる3人の「さとこ」という女性の人生が交差していく様子をオリジナルストーリーで描いた『さとこはいつも』が、9月18日から全国公開。本作で、35歳の沙都子を演じた有村架純、55歳の里子を演じた石田ひかり、 … 続きを読む

page top