「もう少しうまく歌えたんじゃないかな…」声楽に苦労しつつも成長を実感 二階堂ふみ(古山音)【「エール」インタビュー】

2020年5月19日 / 08:20

 「栄冠は君に輝く」「六甲おろし」などを手掛けた昭和を代表する作曲家・古関裕而と妻で声楽家の金子をモデルに、激動の時代を音楽とともに生きた夫婦の姿を描く連続テレビ小説「エール」。主人公・古山裕一役の窪田正孝と共に、朝ドラ初出演でヒロイン古山音役に全力投球している二階堂ふみが、役に込めた思いや撮影時のエピソードなどを語った。

古山音役の二階堂ふみ

-さまざまな困難に遭遇しながらも歌手になる夢を追い続ける音に、どのような印象を持ちましたか。

 最初に台本を読んだとき、とても強い、はつらつとした女性だと思いました。そして自分の好きなものに対して正直な方だとも思いました。音さんを通して、人を大事にすることや、好きな人の未来を応援したい気持ちが育っているのを感じています。

-1人の人物を長く演じるということは朝ドラの醍醐味(だいごみ)だと思いますが、手応えは感じていますか。

 幅広い年齢を演じられることは、とても楽しいです。時代が進むにつれて自分の中で気持ちの変化がありますし、出会う方々、周りの方々に育てていただいていると実感しています。音さんと一緒に寄り添って生きているような感覚です。

-実在の人物がモデルのキャラクターを演じる上で大切にしていることは何でしょうか。

 金子さんが古関さんと実際にやり取りされていた手紙を読ませていただいたり、録音された歌声を聞かせていただいたりしました。その声が、とにかく楽しそうに弾んでいて、本当に歌うのがお好きだったんだなと思いました。歌が音さんと金子さんをつないでいたので、そのことを大事にしながら演じています。

-音の見どころの一つが歌唱シーンですよね。視聴者の評判も上々ですが、ご自身の感想は?

 音楽学校で行われる記念公演出演をかけたオーディションのシーンは、たくさん練習して、かなり気合を入れて歌いましたが、もう少しうまく歌えたんじゃないかな…と悔しさが残っています。

-練習はどのぐらいしましたか。

 昨年の夏頃からレッスンを始めました。自分の体が楽器になるという経験は今までなかったので、毎回学びがあってとても楽しいです。歌うシーンの前は声帯を開くためにスタジオでも声出しをして、毎回120パーセントの力で臨みますが、自分の技術が足りないせいで納得できなかったり、難しいと感じたりすることもあります。でも、そういう姿も反映して成長していく役だと思うので、周りの方々に助けていただきながら挑んでいます。

-カラフルでレトロな衣装も「かわいい」と好評ですね。

 衣装の方が「チェックを着せたい」とおっしゃっていたので、よく着ているのですが、すごくすてきですよね。帽子もとてもかわいいです。色使いもきれいで、音さんだけでなく、皆さんもかなり“ハイカラ”な女性像になっていると思います。

-「戦前・戦中・戦後にわたる物語」に引かれてオーディションを受けられたそうですが、当時と現代の女性について思うところはありますか。

 「死」を身近で感じながら生きた人たちの苦しみは、平和な時代に生まれた自分たちには、想像はできても全てを共感することはできないと思います。でも、劇中、結婚して子どもが生まれる段階で、音さんは女性としての生き方と自分の夢との間で悩むのですが、現代にもそういう悩みを持つ女性はたくさんいらっしゃるので、共通している部分もあると感じました。

-音の人生には、薬師丸ひろ子さん演じる母・光子の生き方が強く影響しているようですね。

 光子さんは、女性が生きていくことの大変さを子どもたちに見せてくれる、とても強いお母さんです。厳しい中にも、それ以上の愛と優しさで包み込む姿に、たくさんのことを教えられました。だから、音さんにも光子さんの強さと優しさが受け継がれているのではないでしょうか。裕一さんと出会い、それらが花開いていくとしたら、その根の部分にあるのは関内家での暮らしです。これからの音の変化にも注目してもらいたいです。

-関内家は父・安隆(光石研)が亡くなり女所帯になりましたが、いつもにぎやかですね。

 三姉妹は個性がバラバラで面白いですが、朝ごはんは、みんな同じように遠慮なく食べています(笑)。カットがかかったあとも「これおいしいわねえ」「そうですねえ」と言っていて、すごく家族らしいです。姉・吟役の松井玲奈さんや、妹・梅役の森七菜さんとは現場で仲良くさせていただいています。私は一人っ子なので、姉妹がいたらこんな感じなのかなと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

 40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

Willfriends

page top