【インタビュー】ダンスカンパニーDAZZLE・長谷川達也 「生で見ることで、五感を刺激され、感情が豊かになっていく」

2020年4月2日 / 17:00

 昨今の舞台・演劇業界では、観客がその世界観を存分に体感できる演出を施した“体験型”とも呼べる作品が数多く見られる。その最たる公演形態である、本格的なイマーシブシアター(没入型演劇)を日本で初めて公演するなど、新たな表現の可能性を提示し続けているダンスカンパニーがある。ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させた、唯一無二のスタイルで見るものを魅了するDAZZLEだ。彼らの公演はダンスという枠を超え、観客が共に感じ、共に考え、共に楽しめるエンターテインメント作品だ。今回は、DAZZLを主宰する長谷川達也に、作品制作への思いを聞いた。

DAZZLE 長谷川達也

-DAZZLEの舞台作品は、映像によるテキストやナレーションで物語性の強い作品を上演しています。それはダンスカンパニーとしては非常に珍しいことだと思いますが、どんな思いから現在の作風になったのですか。

 もともとDAZZLEは「ストリートダンスの世界で活躍したい」という思いを持って活動を始めたわけですが、活動を続ける中で、そこで抜きん出るためには独自性が大事だと感じるようになりました。それで、音楽にファッション、空間の演出や人物の構成や配置といった、さまざまな要素を駆使した舞台表現で見せていこうと考えたんです。その一つ一つの要素を、どうこだわり、どう組み合わせていくかに、自分たちらしさを見つけていくことで、独自性を出すことができる、と。

-なるほど。

 それから、一般的にストリートダンスはダンサーに向けて見せるためのステージが多いのですが、僕たちはアーティストとして生きていくためにも、ダンスを知らない人が見ても面白いと思える表現をしていかなければならないとも考えました。そこから生まれたのが、「物語」を取り入れるという発想です。実は、これはストリートダンスシーンでは、とても異色なことでした。ストリートダンスの多くは、いわゆる自己表現のためにあるものだったので、自分じゃない何者かになって表現するということはほとんどないことだったんです。僕は子どもの頃から映画やゲーム、漫画が大好きで、それらに共通するものが「物語」だったことからも、「物語を読む、聞く」ことは誰にでも自然に浸み込むものだと思っていたので、ダンスで物語を表現することをやってみようと思ったのがきっかけでした。

-DAZZLEの公演ではマルチエンディングやマルチストーリーなど、ストーリーが分岐していく作品も数多く見られます。

 2016年の「鱗人輪舞」という作品では、二つのエンディングを用意し、観客の皆さんに、公演の途中で投票してもらい、公演の結末が変わる、という手法で上演しました。演者としては、プレッシャーもありましたが、それ以上に手応えも感じていましたし、投票結果が日に日に変化していくことに、人間の心理が反映されているようで面白かったです。

-そして、17年からはイマーシブシアターを上演しています。イマーシブシアターとは、どういったものですか。

 イマーシブシアターとは、劇場ではなく施設全体を使って、同時多発的にパフォーマンスを行うものです。2019年には「SHELTER」という作品を上演しましたが、それはDAZZLEの9人全員が、開演から終演まで、それぞれのキャラクターを演じ続けるということを同時に行いました。そして、そのパフォーマンスを見た観客の皆さんが、エンディングを選びます。「SHELTER」では、30種類以上のエンディングを用意していました。

-イマーシブシアターを上演しようと思ったきっかけは?

 DAZZLEのメンバーがニューヨークで「スリープノーモア」という作品を見て、自分たちもやりたい、という提案は以前からしてくれていたんです。話を聞いただけでは上演するのは難しいと思ったのですが、実際に僕もニューヨークまで行って見てみたら、「ああ、こういうことか」、と。そして、作品を体験してみて、DAZZLEがイマーシブシアターをやったら、より緻密で、より面白い作品ができるんじゃないかと思って、すぐに制作にとりかかりました。

-より緻密に作れるというのは、例えばどういった部分で?

 「スリープノーモア」という作品は、入場してから退場するまで完全に自由なんです。どこを見てもいいし、どこを見なくてもいい。でも、日本で上演するに当たっては、その自由さはむしろ不自由になると感じたんです。「どうぞ、ご自由に」と言われても、どうしていいか分からない人の方が多い。そこで、僕たちの公演では、人の流れを計算して、見てもらいたいシーンを必ず見せることで、物語の軸や物語の導入部分を全員に体験してもらい、より没入感を高めたいと思いました。そういった流れの作り方とシーンの数、そして各部屋の振り付け、出演人数から音楽の流れまで、全てにおいて止まることなく動かすための、緻密な計算をして制作しています。

-消極的なところがある日本人には向いていない公演形態のようにも思えますが、実際に上演してどう感じましたか。

 確かに最初は戸惑いを感じた観客もいたかもしれませんが、始まってすぐにそれは解消されました。それは、物語の導入部分はきちんと案内して、見ていただいたということが大きかったと思います。それから、なるべく伝わりやすいように言葉を使った説明も入れていたので、それを聞いてくだされば理解できる作りにはしていました。ただ、イマーシブシアターというものは1回では全部を見ることができない作りになっているので、物足りなさを感じる方はいらっしゃったかもしれません。その後に、リピートしてくださるお客さまが多かったと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山下リオ「それぞれの愛の形を、まざまざと見せつけられるような映画になっていると思います」『遺愛』【インタビュー】

映画2026年6月30日

 父の死を契機に母の介護を始めた女性の周囲で、次々に起こる異変。それは、母の抜け殻に入り込んだ“何か”による呪いなのか、それとも、介護に疲れ追い詰められた女性の心の闇が生んだ虚構なのか…。酒井善三が監督し、テレビ東京プロデューサーの大森時生 … 続きを読む

塩野瑛久「中島健人さんへのリスペクトがさらに増しました」ラブコメディで初共演『ラブ≠コメディ』【インタビュー】

映画2026年6月29日

 NHKの大河ドラマ「光る君へ」(24)の一条天皇役が話題となり、今年もドラマ「嘘が嘘で嘘は嘘だ」「未来のムスコ」に出演し、『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』、『SAKAMOTO DAYS』、『マジカル・シークレット・ツアー』と公開作品が … 続きを読む

横山裕「人間ドラマが色濃く描かれていて、物語に一気に引き込まれる」 関水渚「横山さんが演じる磯貝さんとの掛け合いの面白さを楽しんで」 水ドラ★イレブン「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」【インタビュー】

ドラマ2026年6月29日

 横山裕がフジテレビ系連ドラ初主演を果たす、水ドラ★イレブン「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」が、7月1日から放送される。本作は、「good!アフタヌーン」(講談社)で連載中の人気漫画を実写化。人と群れない一匹オオカミの刑事・磯貝史郎と、 … 続きを読む

藤井流星「コメディーがやりたい」 西田征史と6年ぶりのタッグで挑むROLL((CAKE))TIME【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年6月27日

 藤井流星が主演を務める舞台、ROLL⦅CAKE⦆TIMEが7月6日から上演される。本作は、藤井が脚本・演出の西田征史と2020年のドラマ&舞台「正しいロックバンドの作り方」以来6年ぶりにタッグを組む、完全オリジナルのハートフルサスペンスコ … 続きを読む

【映画コラム】『Michael/マイケル』から、マイケル・ジャクソンのMVを振り返る

映画2026年6月26日

 “キング・オブ・ポップ”と呼ばれた伝説のアーティスト、マイケル・ジャクソンの半生を描く映画『Michael/マイケル』が大ヒット公開中だ。命日に当たる6月25日には、声出しやコスプレ、応援グッズの持ち込みが可能な応援上映も開催された。   … 続きを読む

page top