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数々の映画祭に出品され、世界三大映画祭の一つであるベルリン国際映画祭では、パノラマ部門の観客賞と国際アートシアター連盟賞をダブル受賞した映画『37セカンズ』。本作に出演した大東駿介が、「度肝を抜かれた」という撮影秘話や、30歳を過ぎた頃から変化してきた役者への向き合い方などを語ってくれた。
本作は、生まれたときに37秒間呼吸が止まったことによる脳性まひを患うユマが、ある出来事をきっかけに夢と直感を信じて、閉鎖された世界から自分の道を切り開いていくさまを描いたヒューマンドラマ。ユマ役は、体に障害のある女性約100人のオーディションによって、脳性まひを患う佳山明が役を射止めて女優デビューを果たした。
ユマに寄り添う介護福祉士の俊哉役を演じた大東は、「ユマちゃんと重なる明ちゃんの演技は芝居の域を超えてくるから、同じ画角に収まる僕たちは、ただ演技をしているだけでは見ている人にとっては違和感がある」と、よりリアリティーのある演技が必要とされた苦労を打ち明けながらも、佳山に「僕たちを引っ張ってくれました。すごく頑張ってくれました」と感謝を示した。
米ロサンゼルス在住でハリウッドスタイルの撮影をするHIKARI監督とのタッグも新鮮だった様子。日本ではあらかじめ決めたアングルで撮影することが多いが、ハリウッドではクローズアップ、ミディアム、ロングなどさまざまなアングルで撮影し、編集時に物語を再構築するスタイルがスタンダードなため、シーンごとのカット数は自然と多くなる。
加えて、粘り強い演出でなかなかOKを出さないこともあったHIKARI監督に現場の空気が張りつめることもあったようだが、大東は「作品、スタッフ、キャスト、全てに対するエネルギーがかなり高くて、愛情と使命感を持っていることが伝わってきました」と徹底した姿勢に舌を巻いたという。
HIKARI監督に引っ張られ、スタッフ・キャストが丹精込めて作った本作は、上映時間115分の“ユマの成長物語”に仕上がったが、その裏には衝撃のエピソードがあった。実は、最初に本編をつないだときは4時間にもわたる長尺で、俊哉や障害者を中心にサービスを行うデリヘル嬢の舞(渡辺真起子)など、登場人物それぞれの人生を丁寧に描いたシーンがあり、“群像劇”の様相を呈していたのだとか。
それが大幅にカットされたため、初めて試写を見た大東は「度肝を抜かれました。みんなが感動してウルウルしている中、どういうことや!と驚きました」と思わず笑い、「台本では俊哉はユマの相手役で、映画自体が2人の恋物語みたいな話でしたからね」と当初の予定も教えてくれた。
シーンの大幅カットによって物語の方向性も変わったが、大東は「編集が素晴らしい。必要のないものを切ったのではなく、名シーンを削ってでも映画を2時間内にまとめて完成させようというHIKARIさんのポリシーを感じたし、この映画はこうあるべきだと納得できました」と太鼓判を押した。
さらに、「世界的に注目を集め、ベルリン映画祭で観客の心が一番動いた作品に贈られる観客賞を頂いたことに、とても感動しています」と大満足の様子。その一方で、「最近は、いじめや虐待、人種差別、障害者に対する偏見など、心の病から引き起こされる事件が多いですよね。そういう、他者を思いやれず、自分は正しいと過信する“心の障害”も怖いですが、同じぐらいに、これらの問題に慣れてしまっている自分たちも怖いと思います」と問題提起をする。
そして「バリアフリーへの取り組みや、障害者へのケアなどが世界的に見て劣っている日本で、この作品がどう受け入れられるのかという期待と不安を抱きつつ、観客一人一人の心を動かすきっかけになればうれしいです」と願いを込めた。
大東が本作への出演を決めたのは、「福祉や、障害者と社会・健常者とのつながり方などを自分の中の議論のテーマとして考えていた頃に話を頂いたから」だそうで、「やらないわけにはいかない。スケジュールを意地でも空けてもらいました」と振り返る。
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