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【インタビュー】『天気の子』主役の醍醐虎汰朗・森七菜が明かす、新海誠作品への思い 醍醐「『秒速5センチメートル』はショッキングでした」

 7月19日に公開された、新海誠監督の最新作『天気の子』。主人公・森嶋帆高とヒロイン・天野陽菜の声は、オーディションで2000人以上の中から抜てきされた、俳優の醍醐虎汰朗と森七菜が演じる。声優初挑戦の2人が、本作に懸ける思い、新海監督作品への思い、そして今後の展望についても語ってくれた。

醍醐虎汰朗(左)と森七菜

-お二人は声優初挑戦ですが、新海監督から指導されたことや、褒められたことなどはありますか。

醍醐 細かい指摘はありましたが、具体的な演技の指導はなかったです。「帆高は醍醐くんであって、醍醐くんは帆高だから、自然体でやっていいんだよ」と最初に言っていただいたので、その言葉に救われました。

 このアニメを見られる方にも「なんで声優さんがヒロインじゃないんだ」と思う方もいるでしょうし、それに対する不安を与えたくないなと思っていました。でもある日、新海さんが「息づかいも声優さんっぽくなってきたね」と言ってくださって、意識せずともそうなれるぐらいに余裕が出てきたのかなと、うれしくなりました。

-今までの新海監督の作品で、特に印象に残っているものはありますか。

醍醐 『秒速5センチメートル』は、とてもショッキングでした。あんなに物事がうまくいかないなんて…と初めて感じたアニメです。あと、花澤香菜さんが好きなので、(彼女がヒロインを演じる)『言の葉の庭』も大好きです。もちろん『君の名は。』も映画館に3回ぐらい行きましたし、本当に面白いですよね。

 オーディション前に一気に全作品を見ました。もう1回『秒速~』を見返したいなと思います。一番好きなのは『言の葉の庭』でした。ゆったりした時間が流れているように感じたけれど、意外に46分しかないなんて。濃かったなって。

醍醐 うんうん。

-『君の名は。』に続き、今回もRADWIMPSさんが全楽曲を担当されます。その曲を聴いて、どういう印象を持ちましたか。

醍醐 初めて聴いたときは、「神だな!」と思いました(笑)。野田(洋次郎)さんの書かれる歌詞は、常人では思いつかないものだなと。実はファンでもあるのですけど、今回もメッセージ性の強い歌詞で、『君の名は。』同様に、曲も映像ときれいにハマっていました。作中で生きるキャラクターたちの気持ちを代弁してくれていると思うし、やっぱり「神だな!」と思いました。

 曲の歌詞が、見ているお客さんと陽菜と帆高の距離を近づける、はしごになってくれていると思います。不器用な主人公たちの気持ちを代弁してくれている場面がたくさんありました。だから、物語に集中する回と、音楽を感じる回と、何回も見てほしいなと思います。

-演じた役柄への思い、ご自分と似ている点や違う点などあれば教えてください。

 新海監督には「天気みたいなところが似ているね」と言われました。私は気まぐれで、陽菜は感情的で、怒っていると思ったら、泣いていたりする。確かに似ているかなとも思うのですが、お姉さんぽいとか、積極的なところとかは似ていないなと思います。

-なるほど。森さんにごきょうだいはいらっしゃるのですか。

 (陽菜と一緒で)弟がいるのですが、弟が料理を作ってくれるなど、人にお世話されて生きているので、陽菜と真逆です。陽菜が突発的に何かをすると最初は「そんなことしちゃうんだ」と思うこともありましたが、最終的には全て理解できましたし、「似てきたね」と言われることが多々あったので、ちょっとずつ寄ってきたのかなと。

醍醐 「顔が似ているね」とよく言われます(笑)。「頑張って空回りしちゃっているところ」が似ているとも。そこはあまりうれしくはないのですが(笑)、でも一生懸命さ(の表れ)なのかなと。僕が計算的に演じるのではなく、できる限り自分が帆高になって進もう、と思って演じました。

-本作は「雨」が重要な役割を担っていますが、雨の日は好きですか。

 好きです。この映画を見てさらに好きになりました。

醍醐 嫌いです! ぬれるので。

-では、雨の日の思い出などはありますか。

 雨を意識するようになってから、雨の降っている中でもお散歩をするようになりました。雨の音もきれいに聞こえるようになったし、『天気の子』ってそういうことにも気付かせてくれる、風情のあるすてきな映画だなって。

醍醐 急に雨が降ってきて、コンビニでビニール傘を買わなければいけない瞬間の、あのお金ってすごくもったいないなと思います。

 (笑)

-今後、アニメにもっと出演したいという思いはありますか。

 あります!

醍醐 僕もです!

-では、どんな役をやってみたいですか。

醍醐 超絶イケメンをやってみたいです(笑)。(共演者の)梶裕貴さんの物まねをするのが好きだったので。

 アフレコの合間によくまねしていましたが、似ていましたね。私は、主人公の周りにいて、肩に乗ったり機械に戻ったりする(マスコットキャラのような)役がしてみたいです。

醍醐 ちっちゃい女の子の役がめちゃくちゃうまいんですよ。

 ちっちゃい子の役の人や、倍賞(千恵子)さんがいらっしゃらないときは、せんえつながら、私が代わりにやっていました(笑)。

醍醐 すごくうまくて、(演じる)幅が広いなと思いました。有望ですよ!(笑)。

-お二人の今後のご活躍が楽しみになりました。最後に、観客に向けて一言お願いします。

 この夏の最高のエンターテインメント作品で、老若男女の皆さんに楽しんでいただける作品になっています。天気の子が手を差し伸べて、いろんなところに連れて行ってくれるので、自分はこうだから…という壁を作らずに、皆さんに見にきていただきたいなと思います。

醍醐 新海監督の美しい映像美×RADWIMPSさんの音楽のコラボレーションは必見で、すがすがしい気持ちで見られるので、そこを楽しみにしていただきたいです。エンターテインメント映画ではありますが、すごくメッセージ性の強い映画にもなっていて、帆高というフィルターを通して愛について考えることができる作品になっています。帆高を自分に、陽菜を大切な人に置き換えて映画を見ることができたなら、身近な人への思いや接し方も変わるのかなと思います。ぜひ、大切な方と一緒に見にいっていただきたいです。

(取材・文・写真)江風葵

(C)2019『天気の子』製作委員会

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