【インタビュー】『柴公園』渋川清彦 「主演に興味ない」淡白な言葉の裏に垣間見える役者のプライド

2019年6月14日 / 13:51

 作品の脇を締め、時には主役を食うほどの演技力を見せつける“バイプレーヤー”。その一人として、多くの監督から起用を望まれる俳優・渋川清彦。昨年は映画14本、今年も5本の作品に名を連ねている。その渋川が、ついにドラマ「柴公園」で初主演を果たしたが、その心境は…? 意外にも淡白な胸中や、撮影時の衝撃エピソード、役者業に対する思いなどを語ってくれた。

渋川清彦

 本作は、ある街の公園で、柴犬を連れた3人のおっさん(渋川、大西信満、ドロンズ石本)が無駄話を繰り広げるという会話劇。6月14日にはドラマ版の流れをくんだ劇場版も公開される。

 これまでに映画での主演経験はあり、第37回ヨコハマ映画祭で主演男優賞を受賞した経歴もあるが、ドラマの主演は単発・連続ものを合わせて初めてだ。喜びもひとしおかと思いきや、オファーを受けたときの気持ちを聞くと、「いや、あまり変わらず…」と苦笑い。さらに、「あまり主演に興味ないです。忙しいのはあまり好きじゃないので」と淡白な言葉が返ってきた。

 そもそも俳優を始めたきっかけは、「雑誌のモデルを何回かやって、その流れでドラマや映画に出るようになった」そうで、自らの意志ではなく、「いわゆる商品ですからね。その売り込みの一つとして“芝居をする”仕事があった」と振り返る。

 ところが、そうして流れに身を任せてたどりついた現在のポジションには十分に満足しているようで、「役者を始めた頃は全くビジョンがなかったから、これが仕事になって、大きな挫折もなく、細く長くやり続けられているのはありがたいです」としみじみと語った。

 「スケジュールが合わなければ仕方ないですが、面白くないからという理由で断ることはないです。作品に向けた熱量を感じるとか、この監督が好きだからとか、ギャラがいいからとか、何かしらのポイントを見つけて引き受けます」とオファーを受ける際の姿勢も明かした。最初は淡白な印象を受けた渋川だが、そこに映るのは、どの作品も自分につなげたいというエネルギーだ。

 そして、憧れの俳優として、今は亡き名優の原田芳雄と渥美清の名を挙げる。映画『ナイン・ソウルズ』(03)で共演した原田については、「芝居はもちろん、人柄に引かれました。オープンで、何でも受け入れてくれるから芳雄さんの周りには人が集まるんですよ。今でも12月28日に芳雄さんの家で開かれる餅つき大会には役者仲間が大勢来ます」と羨望(せんぼう)のまなざしを向ける。

 渥美については、「映画『男はつらいよ』シリーズの寅さんがすごく好きです。あの人のメロディーのように流れるような芝居がいいんですよね」と述懐。名優への憧憬(しょうけい)の念は、やがて目標に変わるのだろう。

 そんな渋川が本作で演じるのは、柴犬・あたるの飼い主で、研究職に就くインテリ男“あたるパパ”。「駄目な男役はしっくりくるけど、検事とか堅い役はせりふも難しくてやりにくいですね」と笑っていた渋川にとって、専門用語を早口でまくしたてる同役は、かなりの難役だ。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

なにわ男子・大西流星「“timeleszのお兄さん”な原くんは印象通り」 timelesz・原嘉孝「流星は優しくてしっかりしてる子」 1月期ドラマでW主演【インタビュー】

ドラマ2025年11月20日

 なにわ男子・大西流星と、timelesz・原嘉孝がW主演する「東海テレビ×WOWOW 共同製作連続ドラマ 横浜ネイバーズ Season1」が、2026年1月から放送がスタートする。  本作は、令和版『池袋ウエストゲートパーク』として注目を … 続きを読む

早見沙織「プレデターの新しい魅力をこの映画から感じていただけると思います」『プレデター:バッドランド』【インタビュー】

映画2025年11月19日

 未熟故に一族を追われた若きプレデターのデクは、生存不可能とされる最悪の地「バッドランド」に追放される。デクはその地で謎のアンドロイドの少女ティアと出会う。「プレデター」シリーズ中、初めてプレデター自身を主人公に据えて描いた『プレデター:バ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】「ユミの細胞たち」の原作者、ウェブトゥーン作家イ・ドンゴン

インタビュー2025年11月17日

 韓国文化の“今”を再構築し続けるKカルチャー。今回は、デジタル空間で物語を紡ぐウェブトゥーンの世界に焦点を当てる。平凡な会社員ユミの頭の中で繰り広げられる細胞の物語――。2015年に連載を開始した「ユミの細胞たち」は、全512話で32億ビ … 続きを読む

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

Willfriends

page top