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【インタビュー】『翔んで埼玉』益若つばさ、女優業に前向き!コメディーでも戦争映画を参考に真剣役作り

 東京から虐げられ、不法入都した者は処罰される過酷な運命にある埼玉県民が、自由と解放を求めて革命を起こす姿を、超豪華キャストで描いたコメディー映画『翔んで埼玉』。劇中、埼玉解放戦線のメンバー・麻実麗(GACKT)のお手伝いさん・おかよ役を演じた益若つばさ。現在は商品プロデュース業を中心に活動している中で、本作のオファーを受けた理由とは…? 女優業に対する思いや撮影時のエピソード、意外な役へのアプローチ法などを語ってくれた。

益若つばさ

-出演依頼があったのは、益若さんが埼玉出身だからだそうですが、演技経験があまりない中、このような大作のオファーを受けて率直にどう思われましたか。

 演技の仕事はドラマ「最後から二番目の恋」(12)だけです。その後、オファーはいろいろ頂きましたが、緊張するし、自信もないし、自分が女優なんておこがましいという気持ちもあり、全て断っていました。だから今回も「演技かぁ…」とちょっと困りました。

-それでも引き受けた理由とは?

 初めてのドラマも最初は断ろうとしましたが、周りの人から「やってもいないことを否定するのではなくて、やってから判断したら?」と言われて、そうだな…と納得してチャレンジしました。そうしたらすごく楽しかったんです。だから、また経験してみようと思いました。でも、一番の理由は埼玉の映画だからです。埼玉県民の私だからできる手助けがあると思いました。

-原作は『パタリロ』で一世を風靡(ふうび)した魔夜峰央さんの漫画ですが、読んだことはありましたか。

 埼玉をすごくディスっている漫画があるとうわさで聞いていて、実際に読んだらとんでもなくディスっていて、ひどい漫画だね、と笑いながら読んでいました。そうしたらオファーが来たのでびっくりしました。

-原作と映画とでは、おかよのイメージが違いますね。

 原作では、お団子ヘアで三角眼鏡を掛けていて、“ざます”っぽいイメージですが、今回は映画版おかよとして、ビジュアルはスタッフさんと一緒に考え、メークは自分でしました。ほかのキャラクターが派手なので、おかよはやり過ぎず、見た方もまねできるトレンド感を意識しました。

-演じる上で心掛けたことはなんでしょうか。

 (武内英樹)監督からは「隠れ埼玉県人は捕まった後にどうなるか分からないから、生きるか死ぬかの気持ちで逃げて。緊張感を持ってやってほしい」と言われ、どうしたらそうなるかを相談したところ、「戦争映画を見て」とアドバイスを頂きました。最初はコメディー映画だから撮影もバラエティーのノリを想像して、ただ逃げればいいと思っていたけど、死ぬかもしれないとなると気持ちの入り方が変わりましたし、息子役の子にも「死ぬかもしれないからね」と言い聞かせて、緊迫感のある中で挑みました。そのシーンでは、真面目にやったからこその大きな笑いが生まれたと思います。

-ちなみに、どの戦争映画を参考にされましたか。

 『火垂るの墓』の実写版です。生きるか死ぬかの恐怖心を勉強しました。

-GACKTさんとの初共演はいかがでしたか。

 架空の人物だと思っていました(笑)。雨が降って寒い中での撮影のときに、息子役の子がボロボロのタンクトップ姿で震えていると、GACKTさんが身に着けていたマントで私たちをくるんで温めてくれました。すごく優しくて、みんなが想像するまんまのGACKTさんっぽい香りがしました。

-撮影現場で特に印象的だったことを教えてください。

 二階堂ふみさん(都知事の息子・壇ノ浦百美役)にも初めてお会いしましたが、この映画でもそうだし、他の作品でも個性的な役が多いので、メチャメチャとがった方なのかなと思っていたら、とてもフランクでびっくりしました。「ギャルになりたかったんです」って私が出ていたギャル雑誌も見てくれていたみたいで、うれしかったし、イメージが違って不思議でした。

-「ダさいたま」「サイタマラリヤ(埼玉特有の熱病)」「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」など、ディスりネタが満載ですが、本作鑑賞後の埼玉県民としての感想は?

 幼少期からいじられ慣れているので、ここまで大々的にディスってくれてありがとう!という感じです。埼玉県民は寛大だから怒る人はいないんじゃないかな。

-どのようないじられ方をされていたのですか。また、東京に対して憧れを持っていましたか。

 「ダさいたま」は本当に言われました。あとは、「夜10時には終電がない」「貧乳が多い」とか…。埼玉の中でも、「越谷の方が上」「大宮は最近すたれている」とか言い合っていました(笑)。東京には憧れていて、読者モデル時代は埼玉県民ってバレないように、とびきりのおしゃれをして東京に通っていました。

-現在はコスメやアパレルなどのプロデュース業をメーンに活動されていますが、久しぶりの女優業はいかがでしたか。

 自分が経験したことのないことを演じることは難しいですよね。以前難しかったのが怒るシーンで、もともと私には沸点がなくて怒ることがあまりないので、普段から喜怒哀楽が多くないと役者の仕事はできないんだな…と痛感しました。でも同じぐらい、自分ではない人生を生きることはすごく新鮮で面白いと感じました。今回は前回よりも落ち着いた気持ちで取り組めたので、またいいタイミングでお話があったら前向きに考えたいです。

-今後演じたいキャラクターはありますか。

 メークのせいもありますが、意地悪そうとか、怖そうと言われることがあるので、そういう役をやってみたいです。

-最後に読者にメッセージをお願いします。

 埼玉をすごくディスっていますが、そこには愛があるし、すごく笑える映画です。出演している私も驚くほど豪華なキャスト陣も見どころです。存分に楽しんでください。

(取材・文・写真/錦怜那)

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