【インタビュー】『ソローキンの見た桜』阿部純子「人と人とが別れるときの痛みや感情の流れは、今の私たちにも共通すると思います」

2019年3月20日 / 12:00

-井上雅貴監督はロシアで映画製作を学んだ人ですが、日本の監督との違いはありましたか。

 監督が先頭に立って現場を引っ張っていく、という監督もいらっしゃるかと思うのですが、井上監督の現場では、演者もスタッフも含めてみんなが流動的に動いていて、全員で映画を作っていくという雰囲気でした。また、この映画の舞台になったのが日本とロシアだったので、過去にいろいろなことがあった国同士が、こうして一つの作品を作るということはとてもすてきなことだと思いましたし、それを成り立たせることができたのは井上監督だったからだと感じています。

-捕虜収容所所長役のイッセー尾形さんも、ロシア映画『太陽』(05)で昭和天皇役を演じていますが、印象はいかがでしたか。

 尾形さんは、一緒に演じさせていただく中で、本当に勉強になることばかりでした。常に資料を持ち歩いては読まれていましたし、お話させていただいたときも、演じ方のアドバイスを頂きました。尾形さんとボイスマン役のアレクサンドル・ドモガロフさんが並んでいると、独特の雰囲気が漂っていました。お2人を見ていると、「きっといい映画になる。私もしっかりと付いていこう」と思いましたし、この人たちが支えてくださるのだから、私は自分にできることをすればいいんだと思えました。

-では、今後演じてみたい役は?

 とにかく笑うことが好きなので、見た人が前向きになれるような、笑顔が増えるような作品に出たいと思っています。なぜか陰がある役が多いので、明るい役もやりたいです(笑)。

-最後に、この映画の見どころと観客へのメッセージをお願いします。

 見どころは、私たちがロシア兵と一緒にコサックダンスを踊るシーンです。撮影現場でも、日本語と英語とロシア語が飛び交っていましたが、このシーンは、言語の壁や、戦争という背景を越えて、楽しい時間を共有するシーンだったので、とても印象に残っていますし、私にとってもお気に入りのシーンになりました。
 この映画は、確かに時代物であり、背景には戦争が描かれていますが、そうしたことに捉われず、恋愛映画の一つとして見ていただければと思います。この映画が描いた、人と人とが出会って、やがて別れるときの痛みや感情の流れは、今の私たちにも共通すると思います。そこに注目していただきたいです。いろいろな形の愛があるということが、皆さんにも届けばいいなと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2019「ソローキンの見た桜」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山時聡真、中島瑠菜「倉敷の景色や街並みや雰囲気が、僕たちの役を作ってくれたという気がします」『蔵のある街』【インタビュー】

映画2025年8月19日

-この映画の主役は倉敷という街とそこに暮らす人たちだと思いましたが、演じながらそういうことは感じましたか。 山時 僕たちのお芝居がどうこうというよりも、本当に倉敷の景色や街並みや雰囲気が、僕たちの役を作ってくれたという気がします。これは自分 … 続きを読む

ファーストサマーウイカ「それぞれの立場で“親と子”という普遍的なテーマについて、感じたり語り合ったりしていただけたらうれしいです」日曜劇場「19番目のカルテ」【インタビュー】

ドラマ2025年8月17日

-主演の松本潤さんとお芝居で対峙(たいじ)してみての印象を教えてください。  松本さんは、演じられている徳重先生と共通して、とても包容力のある方だと感じます。現場でもオフでも、相手を受け止めて認めた上で、的確かつ愛を持ってアプローチされるの … 続きを読む

橋本愛 演じる“おていさん”と蔦重の夫婦は「“阿吽の呼吸”に辿り着く」【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年8月16日

-そんな魅力的な蔦重を演じる横浜流星さんの座長ぶりはいかがでしょうか。  横浜さんは、蔦重さんをどう演じるか、常に誠実に真面目に考えていらっしゃいます。そういう空気がスタッフやキャストにも伝播し、しっかり取り組もうという空気感が現場全体に生 … 続きを読む

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

-ネプトゥーヌス国王役の三宅さんはいかがでしょうか。人魚という設定の上に、娘と接するときと、それ以外では雰囲気がだいぶ違いますが。 三宅 ネプトゥーヌス国王は、「屈強で、威厳があり、でも娘に甘い」。最初にその3つのファクターを大事に、と伺い … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

-リアム・ヘムズワースとラッセル・クロウを演出してみていかがでした。  2人とも自分が演じるキャラクターを見いだすための努力を惜しまず、そのキャラクターの中にある真実や誠実さを見つけてくれます。さらにそのキャラクターにエンタメ性や楽しさも持 … 続きを読む

Willfriends

page top