【インタビュー】『栞 Shiori』三浦貴大「人に尽くす行為は自己満足」 経験者だからこそ語れる医療や救命に対する思いとは

2018年10月26日 / 15:18

 理学療法士の雅哉が、死に直面する患者の前で無力感にさいなまれながらも、自分に何ができるのかを模索し、希望に向かって歩いていく姿を描いた映画『栞 Shiori』が10月26日から公開される。元理学療法士の榊原有佑監督が実体験をベースにした本作で主演を務めた三浦貴大が、作品や役に込めた思い、経験に基づく医療や救命に対する考えなどを語ってくれた。

理学療法士を演じた三浦貴大

-病院で起こる生と死の物語は、リアル故に想像以上にヘビーでしたが、三浦さんはどのような感想を持ちましたか。

 確かに内容は重いですし、雅哉にたくさんの悲しい出来事が降りかかってきます。でも、僕も監督も、そういう悲しい出来事も、生きている人間がどんどん未来に形を変えてつなげていく希望の話として捉えて取り組んでいました。

-オファーをもらったときの率直なお気持ちは?

 かなりヘビーな内容なので、監督がどういう思いで作ろうとしているかを知りたくて、一度お会いさせていただきました。そのときに、理学療法士は一般的にリハビリをサポートする人というイメージがあるけれど、それだけではなく、医療に携わり、命と向き合う仕事であることや、「これまでの自分の経験を伝えたい」という言葉を聞いて、ぜひ、監督の心を表現したいと思いました。

-三浦さんは理学療法士に対してどういうイメージを持たれていましたか。

 大学ではスポーツ健康科学部に在籍していたため、知り合いに理学療法士がたくさんいるので仕事の内容は理解していました。ただ今回、理学療法士にとって、人と関わるスキルがとても大事であることを知りました。命って“生き死に”ではなくて“生活”ですよね。生活が苦しくて、死ぬよりつらい経験をしている人もいるじゃないですか。だから、生活を守る仕事はとても意義があると感じました。

-在学中は精神保健福祉士を目指していたそうで、医療に携わっている点で雅哉にリンクしますね。

 監督は、僕が精神保健福祉士の勉強をしていたことや、ライフセービングをやっていたことから、医療活動に理解があると思ってくれたみたいです。後は、今まで演じてきた役のイメージなどからオファーをしたとおしゃっていました。

-三浦さんも、もともと人に尽くす精神を持っていらっしゃるのですね。

 そうですね…。でも、人に尽くすというのは「自己満足」だと考えています。その言葉は悪い意味で使われることが多いですけど、僕にとっては原動力で、まず自分が満足して、その結果として人の役にたてばいいなと思いながら活動していました。なので、人に尽くしたい欲求を満足させたい気持ちが強ければ強いほど、いい救助者、いい理学療法士になれると信じています。

-雅哉も患者に寄り添う素晴らしい理学療法士ですが、人物像をどう解釈して演じましたか。

 雅哉は、自ら物語を回すのではなく、身の周りで起こる物語を受け止める人です。自ら放ったり、何かを受けて返したりすることがなく、スポンジのようにひたすら吸収する役どころは初めてだったので難しかったです。何かを放つ方が楽なのかもしれません。ただ、自分と雅哉の気持ちは近いところにあるので、雅哉が言われたことや、目の前で起こっていることは僕自身も一緒に受け止めている感じがして、すごく珍しい体験をさせてもらいました。

-現場の雰囲気はいかがでしたか。

 とても明るかったです。大分県での撮影でしたが、みんなでご飯に行ったり、部屋で飲んだりしていました。どういう作品でもコミュニケーションを取って、明るい現場であった方がいいと思っているので、作品に引っ張られて必要以上に暗くならずにすんでよかったです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

 第42 回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の小説を原作にした鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』が、7月4日公開となる。浪費家の母(河井青葉)に代わってアルバイトで生活を支えながら、奨学金で大学に通う主人公・宮田陽彩が、過酷な境遇を受 … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

Willfriends

page top