主人公の地味でさえない眼鏡男子の頼(吉沢亮)が、大好きな雫(新木優子)のために格好よく変わっていくさまを、昴(杉野遥亮)との三角関係も交え、恋と夢を追い掛ける姿を描いた映画『あのコの、トリコ。』。
主演の吉沢は、学生時代を「カースト制度の最下層にいた」と言うこともあれば、「超モテた」と言うこともあり、まるで頼そのものだが、果たしてどちらが真実なのか…。本作撮影時のエピソードとともに、今や人気イケメン俳優の筆頭にいる吉沢の気になる過去と未来、そして恋愛観に迫った。
相反するコメントの理由を問うと、「中学のときは死ぬほどモテて、高校のときはカースト制度の最下層にいました」と返す吉沢。「地元の友達がいない高校に進学したので、もともと人見知りだったから、男友達5~6人とばかり遊んで、それ以外の人とは関わりませんでした」と回顧した。
だからこそ、さえないキャラクターにも共感ができるようで、「当時の自分が役に生きている気はします。地味とか根暗とかの役の方がしっくりくる」としみじみ語ると、キラキラオーラを放つイケメン役は、「つらいです。どういう顔をしていればいいのかが分からなくて、いつも戸惑っています」と意外な心中を吐露した。
そんな思いを抱えながら演じた頼は、成長ぶりにこだわり、「地味な頼が雫のために格好よく変わっていくところや、最初は雫を助けようと芸能界に飛び込んだけど、実は俳優は子どもの頃からの夢だったので、徐々に自分のために頑張るようになる心の変化を意識しました」と胸を張った。
お気に入りは、アクシデントにより頼が雫の相手役をすることになったランジェリー広告の撮影シーンで、「頼にとっては初めての撮影だからぎこちないし、雫も相手が頼だから恥ずかしさがあるけど、だんだん2人がその空間にのめり込んで、距離が縮んでいく感じがよかったです」と笑みをこぼした。
そんな吉沢は、虚構の世界である漫画の実写化作品に出演することが多い。記憶に新しいのは映画『銀魂』シリーズや『BLEACH』だが、「そういう少年漫画ではうそっぽさが大事だったりするけど、少女漫画はある意味、普通の恋愛の話なので、漫画通りにやってうそっぽくしたくない」とこだわりも明かす。
確かに、等身大の登場人物たちが繰り広げる恋愛模様は、私たちの現実とリンクしそうだが、実際のところ、胸キュンが多発するドラマチックな出来事はそうあるはずもない。“学園一のモテ男”も、自分を取り合う“黒王子と白王子”もまずいない…。そのため、「原作へのリスペクトを持ち、脚本を読み込み、監督に自分の意見も伝えながら、うそっぽくなく演じている」のだとか。
では、「どちらが演じやすいか」と尋ねてみると、「普通の役の方が、『自分だったらこういう感情になるな』とか、『こんなふうに言うな』とか、役の思いを大切にしながら自分を重ねることもできるからやりやすいかな」と答えた。
「少年漫画は、芝居というより形っぽくて見せ方が大事。普段のお芝居とは違うところからのエネルギーが必要です(笑)」と本音ももらした。
とはいえ、「それはそれで楽しい」と笑うと、「つい最近までオーディションばかり受けていたけど、今はオファーで役を頂くことが増えたし、役の幅も広がってきました」と自身の成長を喜んだ。
もともとは事務所のオーディションがきっかけで芸能界入り。当初はアルバイト感覚で、特撮ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」(11)に出演していたときも「辞めたい」と思っていたというから驚きだ。しかし、初主演したドラマと舞台が連動した仏教専門学校が舞台の青春コメディ―「ぶっせん」(13)で、実力不足や観客を集められないなど、たくさんの悔しい思いをしたことで役者魂に火がつき、今に至っている。
まだ24歳。「今はいろんなことを吸収して、自分を磨く時期」と捉えている吉沢は、「いろいろな役柄に挑戦したい」と意気込みを語ると、近年は漫画のキャラクターを演じることが多いこともあり、「ビジュアルやキャラクター性も含めて、一から監督と話し合いながら作るオリジナルものも久しぶりにやりたい」と目を輝かせた。
最後に、本作のキャッチコピー「恋をすると、オトコは変わる」にちなみ、恋愛観も探ってみると、「恋をしていると何をしていても楽しくなりますよね。結構、相手に合わせるタイプだと思います」とのこと。
「普段はLINEで絵文字なんて全く使わないけど、相手が使っていたら僕も使います」と優しい一面ものぞかせてニッコリ。やはり見た目も心もイケメンか…。ますますトリコになりそうだ。
(取材・文・写真/錦怜那)