【インタビュー】『きらきら眼鏡』池脇千鶴「見終わった後、皆さんの心が温かくなってもらえたら」

2018年9月7日 / 14:24

 『ふしぎな岬の物語』(14)、『夏美のホタル』(16)などの原作者として知られる人気作家・森沢明夫の同名小説を映画化した『きらきら眼鏡』が公開される(9月7日からTOHOシネマズららぽーと船橋で先行公開、15日から有楽町スバル座ほか全国順次公開)。本作は、恋人の死で心に傷を抱えた青年・明海と、病気で余命宣告を受けた恋人を支える女性・あかねの交流を、繊細なタッチでつづった物語だ。明海役の新人・金井浩人と共にダブル主演を務めた、あかね役の池脇千鶴が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

池脇千鶴

-オファーを受けたときの感想は?

  最初に台本を頂いて読んでみたら、すごく優しい本だなと…。最近あまり優しい作品に出ていなかったので、「こういうのもいいな」と思って。それが、出演を決めた大きな理由です。

-あかねという女性をどんなふうに捉え、役作りはどのようにしましたか。

 台本を読んだら、気持ちがとてもよく伝わってきたので、特別に役作りをしなくてもそのまま演じることができました。ただ、あかねの明るさや天真らんまんな感じだけは、きちんと伝わるように心掛けて。監督と私の間でも、役に対するイメージにあまり相違がなかったみたいで、割と任せてもらえました。私の声が高いので、「ちょっと低くしましょうか」と言われたぐらいです。

-あかねは恋人の裕二(安藤政信)が余命宣告を受けているという事情を抱えています。そういう部分は演じる上で、どう意識されましたか。

 それは間違いなく心の中の大きな部分を占めていて、ある程度は覚悟しているところもあると思います。ただ、今は笑顔を絶やさないためにギリギリのところで頑張っている。それは裕二さんのためでもあり、周りのためでもある。自分が嫌な顔をしたり、愚痴を言ったりすると、周りが心配するし、物事が悪い方向に進んでいくと考えているのでしょう。でも彼女は、もともとポジティブな性格なんですよね。だから、障害を持つ方を助けるという、他の人が敬遠するようなこともごく自然にできる。そういうところから、演じる上では沈み過ぎないようにしました。

-一方であかねは、偶然出会った明海とも心を通わせていきます。裕二と明海という2人の男性との距離感はどのように考えましたか。

 本当にあかねの行動は不思議です。大人っぽいところもあれば、子どものような部分もあって…。明海くんと一緒にいても、裕二さんが嫉妬するとは思っていないし、その一方で、明海くんの気持ちにも一切気付いていないし…(笑)。そこに恋愛感情が生じているつもりはなく、あくまでも明海くんは自分と同じような経験した人で、興味もある、という程度。だから、あかねにとって明海は、裕二さんと離れているときに起きていることを話したい相手、ぐらいに考えました。

-あかねと明海が出会うきっかけとなった本の中に「自分の人生を愛せないと嘆くなら、愛せるように自分が生きるしかない」という印象的な一節があります。この言葉を聞いて、どんなことを感じましたか。

 もうおっしゃる通りで、ドキッとしますよね。本当に正しくて厳しい言葉です。私も自分の人生を愛しているつもりだけれど、嫌になることなんて多々あるわけで…。「こんなこと言われたら、他に言葉出ないよね」というのが素直な感想です(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

目黒蓮が抱いた“継承への思い” 妻夫木聡、佐藤浩市から受け取った“優しさ”と俳優としての“居住い” 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」【インタビュー】

ドラマ2025年11月9日

 日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」への出演発表時、“物語の鍵を握る重要な役どころ”という情報のみだった目黒蓮演じる謎の人物。そこから約2カ月、11月2日放送の第4話でようやくその正体の一端が解禁された。男の名は中条耕一、佐藤浩市演じる山王 … 続きを読む

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

Willfriends

page top