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自分でやろうと思ってもできることではありませんから、こういう機会を作ってくださって、本当にうれしかったです。物語的にもまだ追い込まれた感じはなくて、笑い声の絶えない楽しい現場ですし。風間さんは知り合ってからもう長いですが、人柄そのままで吉兵衛になっていました。松坂さんは久しぶりでしたが、やっぱり全然変わりません。おっとりしていながら、そこはかとないユーモアをお持ちで、いつもリラックスできます。
お二人のご活躍を常に拝見しているので、何十年もたった気がしません。時間がたって改まった関係になるようなこともなく、昔と変わらずにお話しできましたし。3人とも健康に不安を抱えたり、事故などでブランクがあったりすることもなく、元気なこともうれしかったです。自分では意識していませんが、よく考えたら、3人ともそろそろいい年ですから。それでもこうやって元気に仕事を続けていられるのは、幸せなことです。できれば、もう一度でも二度でも、同じようにご一緒したいです。
西郷家と大久保家のセットでは、手前を撮影しているときに、奥の方で何かの作業をしているような場面が多かったので、常に一緒にいるような感じでした。後はやっぱり、島流しになる前に風間さんと相撲を取る場面でしょうか。
風間さんと相撲を取ったのは初めてですが、みんなが応援する中でやったので、子どもに返ったようで楽しかったです。撮影では何度も同じ場面を繰り返すのですが、僕が勝つ筋書きだったので、風間さんには何度も転んでもらいました。風間さんも、ちゃんと負けてくれるんだなと(笑)。先輩に悪いと思いましたが、僕は子どもの頃に相撲部だったので、どういうふうに組んで、どうしようか、みたいなことはアドバイスさせていただきました。その都度、松坂さんが、風間さんではなく僕を応援してくれたのも気持ち良かったです(笑)。
登場人物みんなに心配りが行き届いています。鹿児島といえば“薩摩隼人”ですが、(原作者の)林(真理子)さんと中園さんのお二人が書く薩摩隼人は、常に正義があるわけではなく、時には失敗もする。そういうところをかわいらしいと思って、愛しているような気がします。その辺は、男性にはなかなか書けない部分だと思います。僕と風間さんの相撲の場面なんかも、普通だったら「この年で、よせやい」となるところですが、それをさせてしまうあたりがかわいいですよね。
最初から出ると、ご祝儀のようなおめでたさがありますよね。お正月になると必ずテレビに出てくる芸人さんみたいで(笑)。初めて大河に出演した時、途中から最後まで出たのですが、どんどん人がいなくなるので、寂しいんです。最後は5、6人で「あの人は死んだ、この人も死んだ」という話ばかりしていて(苦笑)。最後は1人で死ぬ結末だったので、「絶対に最初から出る方がいいな」と思って。ようやく、念願がかないました(笑)。
(取材・文/井上健一)