X


「現場では芳根ちゃんと一緒にトマトを食べています」高良健吾(野上潔) 【べっぴんさん インタビュー】

 戦後の焼け跡の中、娘のため、女性のために、子ども服作りにまい進するヒロインとその仲間を描く連続テレビ小説「べっぴんさん」。連続テレビ小説は「おひさま」以来の出演となる高良健吾が主人公・坂東すみれ(芳根京子)の幼なじみ・野上潔を演じている。潔は、カリスマ性があり、頼れる兄貴的存在で、第2週では、すみれから思いを寄せられながらも、すみれの姉ゆり(蓮佛美沙子)と結婚。戦後は父が取締役を務めていた「坂東営業部」を再興させるため、あらゆる手を尽くす。高良が役への思いを率直に語った。

 

野上潔役の高良健吾

-2011年の「おひさま」以来となる連続テレビ小説への出演ですが、オファーを受けた時の思いは?

 うれしかったです。「おひさま」に出たことで、自分の中で変われた部分があったので、連続テレビ小説にはすごく感謝をしています。また出られるとなった時に、もしかしたら今回も変われるんじゃないかなと思って。

-変われたとは具体的には?

 「おひさま」に出るまでは映画ばかり出ていて、自分の中で大切にしているものもたくさんあって、それを曲げられなくて…。でも「おひさま」の時に、それを曲げたわけではないけれど、新しい感覚で仕事ができたんです。それまではどこか個人プレーの部分もあったと思います。でも、3.11があり、ちょうどドラマが戦後の復興の話だったというのもあって、視聴者の皆さんからのリアルタイムの反応がものすごく大きかったので本当に多くの人に、多くのものが届いているという感覚が大きくて、自分の中でも何かが変わった気がしました。

-今回演じる、野上潔の魅力はどこにあると思いますか。

 人を信じられるところだと思います。 “人の良いところ”を見ることができる人物。集中したり、こうだ!と思った時にはガっと視野が狭くなっちゃうこともあるけれど、そこには“人を信じる強さ”が真ん中にあるし、自分のことも信じている。とても誠実な人だと思います。

-役作りで気を付けているポイントは?

 “野上潔としてちゃんとこのシーンに居ること”というのは何より大切にしています。後は関西ことばの難しさですね。撮影の最初のころは、自分になじまなくてそれがすごく大変だったのですが、最近はだんだんなじんできています。今も意識しながらの芝居ではありますが、最初とはだいぶ変わってきました。

-すみれからもゆりからも思いを寄せられる潔ですが、女性から見た魅力はどこにあると思いますか。

 やはり愚直に誠実に生きているからじゃないでしょうか。目の前の人に対して手を抜かない。それは登場から最後まで変わらずにやりたいです。

-潔は第2週でゆりと結婚しました。失恋したすみれが気の毒な部分もありましたが、潔はゆりのどんな部分に引かれたのでしょう。

 2人とは、子どものころから一緒にいて、すみれに好かれているなんて潔はまず思っていない。鈍感なところがあるんです。後は、あの時代に、女性であるゆりが「自分は英語を習って社会で活躍したい」と言ったことは、今の時代とは全く違う意味を持つと思うんです。そこに対しての面白さ、そこに引かれるところがあるのではないでしょうか。

-ヒロインのすみれを演じている芳根さんの印象を教えてください。

 とにかく一生懸命。ちゃんと“連続テレビ小説のヒロイン”として現場に立っています。自分が19歳の時には、絶対にあんなことはできなかったし、本当に頼もしい。とても目がきれいで意志が強そう。現場では、いつもトマトを食べています。トマトばかり(笑)。好きなんでしょう。だから僕もトマトを食べています。芳根ちゃんみたいに、心がきれいになるかなと思って。現場ではみんなで食べています。体にいいらしいので(笑)。

-現場での盛り上げ役は誰ですか。

 それも芳根ちゃんです。ヒロインがやっています。控室に戻らず、必ず前室にいて、常に現場にいる。(「おひさま」の時の)井上真央さんもそうだったけど、必ず月曜のリハーサルの時には、その週のせりふが全部入っているんです。関西ことばを完璧にしてやってくるので、相当やり込んでいるんだろうなと思います。ヒロインは土日も休みではないし、それを見て、みんなも“この子のために頑張ろう”と思います。芳根ちゃんは、一人一人に声を掛けて常に笑顔です。

-高良さんにとって、連続テレビ小説ならではの心境というのはありますか。

 連続テレビ小説も大河もそうですが、NHKの長いスパンでやるドラマというのは、なぜか自分が落ち込んでいたり、自分が苦しい時にやってくるんです。それが自分にとっては救いになっているというか。常に自分のやりたいことができているわけではないし、自分の芝居に対して嫌なときもあったりして…。大河(「花燃ゆ」)をやる前も苦しかったし、これをやる前も自分の中でちょっと苦しかった。だけど、これをやると自分がちょっと変われる気がする。そのタイミングは不思議だし、(この縁は)大切にしたいです。

-常に模索しながら演技をされている印象ですが、今はどんな時期だと捉えていますか。

 自分は27歳ぐらいの時から“30歳になる準備をしなければ”と思ってやってきました。実際に新しくいろいろなことを試したり、意識を変えてやっているつもりです。以前は、自分に対しても“おいおい”と思うこともあったりして、26歳の後半あたりから“このまま30になったらちょっとまずいな”と思ったんです。

-実際にご自分の中で変化は起こりましたか。

 だんだん見えてきた気がします。まずは、勉強するようになったということだと思います。いろんな人の話をよく聞いたり、本を読んだり…。自分はこれまで、どこか勢いとか感覚でやってきたけれど、いろんな考えに触れると“これやっていなかった”“これは嫌いだったけど、この人がやっているならありかもしれない”と変化も起こる。その中で、だんだんと自分の実力が分かってくるし、その時に自分に何もないことが怖く感じたりもします。

-2016年、現在の立ち位置は。

 そう考え始めて、1年、2年しての2016年。まだ、自分の中では“できていないな”と思っている1年です。だけど、あとちょっとで29歳。後1年ちょっとしたら30歳。それまでにはもしかしたら…という気持ち。30歳になったらまた新たな課題は出てくるのでしょうが、その前の段階の準備はやっているのかなと思います。今回、ドラマでお父さん役をやれるというのもすごくプラスになっていると感じています。

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

妻夫木聡「家族のために生きているんだなと思う」 渡辺謙「日々の瞬間の積み重ねが人生になっていく」 北川悦吏子脚本ドラマ「生きとし生けるもの」【インタビュー】

ドラマ2024年5月3日

 妻夫木聡と渡辺謙が主演するテレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」が5月6日に放送される。北川悦吏子氏が脚本を担当した本作は、人生に悩む医者と余命宣告された患者の2人が「人は何のために生き、何を残すのか」という … 続きを読む

【週末映画コラム】台湾関連のラブストーリーを2本『青春18×2 君へと続く道』/『赤い糸 輪廻のひみつ』

映画2024年5月3日

『青春18×2 君へと続く道』(5月3日公開)  18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)は、アルバイト先のカラオケ店で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、天真らんまんでだがどこかミステリアスな彼女に恋 … 続きを読む

城田優、日本から世界へ「日本っていいなと誇らしく思えるショーを作り上げたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月3日

 城田優がプロデュースするエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」が5月14日から開幕する。本公演は、東京の魅力をショーという形で世界に発信するために立ち上がったプロジェクト。城田が実 … 続きを読む

「光る君へ」第十六回「華の影」まひろと道長の再会からうかがえる物語展開の緻密さ【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年4月27日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月21日に放送された第十六回「華の影」では、藤原道隆(井浦新)率いる藤原一族の隆盛と都に疫病がまん延する様子、その中での主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の再会が描かれた。  この … 続きを読む

宮藤官九郎「人間らしく生きる、それだけでいいんじゃないか」 渡辺大知「ドラマに出てくる人たち、みんなを好きになってもらえたら」 ドラマ「季節のない街」【インタビュー】

ドラマ2024年4月26日

 宮藤官九郎が企画・監督・脚本を手掛けたドラマ「季節のない街」が、毎週金曜深夜24時42分からテレ東系で放送中だ。本作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”へと置き換え … 続きを読む