「とにかくいけ好かないやつを演じようと」山西惇(板部岡江雪斎) 【真田丸 インタビュー】

2016年6月5日 / 21:00

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、名門北条家の重臣として北条氏政(高嶋政伸)とその息子氏直(細田善彦)を支える外交僧、板部岡江雪斎を演じている山西惇。豊臣秀吉(小日向文世)や徳川家康(内野聖陽)との息詰まるような交渉をこなしながら、北条家の行く末に思いをめぐらせる苦しみを語る。

 

板部岡江雪斎役の山西惇

板部岡江雪斎役の山西惇

-江雪斎のことはご存じでしたか。

 いいえ。調べてみると、北条家を離れた後も秀吉に気に入られて御伽(おとぎ)衆になり、その後、関ヶ原の戦いでは徳川方についたと聞きまして、こんな面白い人がいたんだなと驚いています。

-どんなイメージで演じようと思いましたか。

 三谷幸喜さんの台本のト書きには「説得力のある声で朗々と」とありました。氏政の先代から仕えていたと思われますので、老舗の大番頭ですね。氏政を育て上げたという自負も持っていると思います。

-第22話で描かれる沼田裁定では、真田家の信繁(堺雅人)や徳川家の本多正信(近藤正臣)と議論で対決する緊迫したシーンがありますね。

 堺さんや近藤さんと丁々発止のお芝居をさせてもらえるのはなかなかないことなので、台本をもらった時にはどきどきしました。三谷さんには信繁の最大の壁になってほしいと言われていたので、撮影前は雑談もせず、とにかくいけ好かないやつを演じようとにらみつけるように臨みました(笑)。

-実際に演じてみていかがでしたか。

 楽しかった印象が一番強いです。裁定では、まるで今の裁判みたいにお互いに立って自分の意見をしゃべって「以上」って言って座るということにしたのですが、リハーサルの時に、あの時代に慣習化されていたやり方ではないという話が出たので、江雪斎が最初にやったから、みんなも同じようにしたというふうに演じることになりました。だから信繁は初々しく、ぎこちなくそのしぐさをしています。そんな細かいニュアンスを楽しんでいただきたいです。

-北条家滅亡へと向かう中で氏政に対する考え方は変わってきますよね。

 氏政のことは大好きなのだと思います。ただ秀吉に対する考えはどうも自分とは違うと感じ始めていると思います。どうすればお家を守りながら戦国の世の流れについて行けるのかをずっと画策していたのでは。お父さんべったりだった息子の氏直に対しても、そろそろお父さんに歯向かわないと北条家は終わるという気持ちがあって、最後は氏直になんとかしてほしいという気持ちになっていったと思います。最後の最後まで努力した人なのではないでしょうか。

-高嶋さんと細田さん、2人のクランクアップを見てどう思いましたか。

 氏政が汁かけ飯を食べるシーンで終わるというのを聞いて高嶋さんに「ほっとした」と言うと、「そうだよねえ、最後は穏やかな顔になっているところで終わりたいよね」って高嶋さんもうなずかれていたので、そのシーンに立ち会えて、とっても楽しかったです。でも同時に、2人と撮影現場で会えなくなるのがこんなに寂しいものかと思いました。

-江雪斎はどうして一人生き永らえようと考えたんでしょう。

 やっぱり侍ではないからかな、死ぬことはないと思ったんでしょう。自分が生かせるところがあればこれからも誠心誠意やろうと考えたんだと思います。

-今後の江雪斎の描き方に関して何か希望はありますか。

 江雪斎は関ヶ原の戦いで小早川秀秋の寝返りに一役買ったという話もあるらしいので、そのあたりを三谷さんが書いてくれればいいなと思っています。

-山西さんはドラマ「相棒」をはじめ、テレビでもおなじみになりましたが、舞台とは役作りのアプローチは違いますか。

 あまり違いはありません。ただどちらの場合も、その役の基本的な立ち姿とか声の出し方、歩幅とかが見えてこないとなかなかせりふも入ってこないので、そこらあたりから役作りに入っていきます。


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