漫☆画太郎氏による伝説のギャグ漫画を映画化した『珍遊記』。天竺を目指して旅を続けていた玄奘(倉科カナ)と、半ば押し付けられる形で引き取られた山田太郎との旅を描く。妖力を封印された天下の不良少年・山田太郎を演じた松山ケンイチがこのほどインタビューに応じ、『珍遊記』実写化に対する思い、破天荒なキャラクターの役づくり、2歳から楽しめる作品の魅力などを語った。
―“まさか”の実写化で、主人公・山田太郎役のオファーが来た時の率直な感想を。
漫☆画太郎さんの漫画を実写化すること自体珍しいことではあるし、山田太郎を演じることに対してはもちろん、これは大変だなという戸惑いもありました。でもいろいろなことに挑戦していろいろ感じたいと思っているので、やらないで終わるよりはやった方がいいかなと。挑戦できるきっかけは逃したくないし思い切りぶつかってみようと思いました。監督が(山口)雄大さんということも大きかったです。
―引っ張っていくタイプの、いわゆる“主人公”というタイプではない太郎を演じて新たに気付いたこと、開けたものはありましたか。
もちろんありました。裸って気持ちいいんだ、みたいな(笑)。こういう、引っかき回していく役はけっこう多いのですが、すごく好きなので楽しんでやれました。逆に何かを背負っている役や引っ張っていかなければならない役はまたやり方が違う。そっちも楽しいけど、自由に引っかき回していく感じの役の方が面白くて好きですね。
―太郎の役づくりについて、監督からのアドバイスや自らのアイデアはあったのでしょうか。
僕の見た目と漫画の太郎の見た目は全然違うんですよ。子どもになっちゃっていますから、それを30の大人がどう演じるかが悩みどころでした。監督は『七人の侍』で三船敏郎さんが演じた菊千代のような、サルっぽいイメージとおっしゃっていて、野性的、動物的な感じの表現になるのかなと。それをきっかけに自分の中でうまくつながりました。
―劇中では全裸や布をまとっただけの姿でも登場していますが、体づくりはしたのでしょうか。全身の肌がとてもきれいでした。
太郎は子どもで、腹がぽよっと出ている感じだったので、絶対に男らしい体にはしないでくれと言われました。だらしない体形にしてとのことだったので、そうなるように撮影期間中は食べたり飲んだりして腹が出るように意識して。毛がない感じにしてほしいとも言われたので、この時は確か全身の毛をそっていました。人前で裸になるのって恥ずかしいことじゃないですか。最初は恥ずかしいなと思っていたけど、すぐ慣れるんですよ。数分後にはそれが普通になってしまって、環境って怖いなと思いました(笑)。
―イメージを持って太郎を演じたとおっしゃっていましたが、演じ終わってキャラクターの印象やイメージは変わりましたか。
もう1回やっても(今回演じた)ああいうことになるんじゃないかと思います。自分の中ではふに落ちてしまっていて。それは、子どもが僕を見て『わあ!』と言ったり笑ったりしているのを目の当たりにしたからかも。一緒にこの映画を見たんですよ。そうしたら子どもが夢中になって見ていて、その時にこれでいいんだなと思ったんです。全部見ていられるかと言われたらそんな集中力はないのですが、新しい感じはあったみたいです。
―最後に、映画を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
原作を好きな人には若干物足りないかもしれないですね。原作には激しさがありますから。映画はストーリーに沿ってちゃんと終わるので、一応整理整頓されています。その分見やすくはなっていますけど。でも原作のファンの方にもこういうふうになったのかと確認しに来てほしい。あと、この映画の世界は死=すっぽんぽんなんですよ。死の概念が変わっていてものすごく面白いし、危険な場面がないので子どもにも見てもらいたいです。ただ、あまりまねしては駄目だよと。そんな感じです。
映画は2月27日から新宿バルト9他で全国ロードショー。