エンターテインメント・ウェブマガジン
高井有一の小説『この国の空』を荒井晴彦監督が映画化した。太平洋戦争末期、度重なる米軍の空襲に耐えながら過ごす19歳の里子(二階堂ふみ)が、妻子を疎開させて一人で暮らす隣家の市毛(長谷川博己)と交わす切ない思いのゆくえを描く。『私の男』など数々の話題作で感情を激しく揺さぶる演技を見せてきた二階堂が、里子の少女から女性へと成長していく過程と、戦争に翻弄(ほんろう)された一人の女性が抱く切迫感を語る。
沖縄で生まれ育っているので戦争についての教育は受けましたが、脚本を読んだ時に「戦争をわが身で実感する作品は初めてだ」と思いました。映画のナレーションで朗読される茨木のり子さんの「わたしが一番きれいだったとき」という詩そのもので、戦争が題材の作品を作る時に私が思い描いていたことが脚本に書かれていたので、ぜひやりたいと思いました。
(沖縄以外の)他の人も意識としては持っているはずです。それに私は戦争への思いが特に強いわけではなく、なぜ戦争に向かっていったのか、その時人々がどう感じていたのかが重要だと思っています。私は戦争を知りませんが、その時代に生きていた人たちが語ることを、私たちが語り継いでいかなければならないと思います。
せりふ回しとしぐさは全部作り込みました。脚本の中に美しい言葉がたくさんあったので、それを映像の中で生かしたいと思いました。そうすれば、せりふにその時代、空間に生きている女性の重みを持たせられるし、説得力も出ますから。昔の成瀬巳喜男監督や小津安二郎監督の作品に出てくる女優さんは、日本語が美しく聞こえるような話し方をされていると思っていたので、かなり意識しました。
里子は若くて情熱的なのにそれをどこにぶつけていいのか分からない。また、里子と市毛の関係は恋でも愛でもなく、もっと本能的なものだと思います。神社での市毛とのシーンで里子は一気に解き放たれます。それまでは全部頭の中で整理できていたのに、歯止めが利かなくなります。終戦が近付くに連れて里子の中の熱は大きくなりますが、戦争が終われば市毛の奥さんも子どもも帰ってくる。そう考えた時に、里子には“女として生きる”という強い思いと“女としての目覚め”が生じたのだと思います。
戦場や戦地をリアルに映像化するのも重要だと思いますが、私はそういうものを見てもあまり身近なことだとは思えないんです。でも、それはすごく怖いことですよね。里子には(戦争そのものよりも)女としての幸せがなくなることの方が重要で、自分の「一番きれいだった」時代を奪われたという悲壮感があります。そうした悲劇を描くことで、見ている人が戦争を身近に感じられる映画になるのではないかと思いました。
『この国の空』は8月8日(土)より、テアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー。
舞台・ミュージカル2026年8月27日
スペインの詩人・劇作家ロルカの傑作「イェルマ」を起点に、作:オノマリコ×演出:稲葉賀恵によって、1930年代のスペインから現代の東京へと舞台を移し、生きる価値を見出そうとする女と男たちの物語を描く舞台「Yerma イェルマ」が9月21日か … 続きを読む
映画2026年8月26日
ある探偵が殺された事件の調査を依頼された一匹狼の探偵・佐竹(西島秀俊)とその助手・聡子(満島ひかり)は、9年前に起きた新生児誘拐事件にたどり着く。殺された探偵が調査していたのは、9年前に誘拐され、今は父親の明野(宮藤官九郎)と二人で暮らす … 続きを読む
2026年8月25日
K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む
映画2026年8月25日
『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』で注目を集めた竹林亮監督が、透明人間の娘と一緒に東京へ旅に出る家族の奮闘を描いたSFロードムービー『見えない娘 THE INVISBLES』が、8月28日から全国公開され … 続きを読む
舞台・ミュージカル2026年8月22日
上田竜也と川島如恵留が出演する、EX THEATER ARIAKE OPENING LINEUP「ノッキンオン・ロックドドア THE STAGE」が10月6日から上演される。本作は、数々の文学賞の受賞歴を誇る作家・青崎有吾による人気小説シ … 続きを読む